急成長株のアリババと安定成長のマスターカード 今買って5年間保有した場合を比較してみました
1.はじめに
この夏は株価のバリュエーションの評価方法について、いくつか本を読んで勉強してました。ここまで株価が高くなると、後ろ盾となる数字がないとなかなか株が買えないなと思っていたところに、ちょうど名古屋で著名な個人投資家さんの講演を聞く機会があり、バリュエーションの話をされていたので、そこで紹介された参考図書を買いました。
森生さんの本(左のオレンジ色の本)では企業総価値(Enterprise Value)と時価総額(Market Cap)とネットデット(Net Debt)の関係などの基本的なことから、ディスカウントレートの考え方までとても勉強になりましたが、実際に株を購入する時に、ここまで本格的に調べることはできません(笑)。
一番右の新書は同じ森生さんの本で2005年に書かれたものです。ライブドアによるニッポン放送の買収劇などの実例をもとにM&Aや企業価値について説明されていて、とても読みやすかったです。Amazonのマーケットプレイスで76円の物を注文したら、新品同様の本が送られてきて、かなりお得な買い物でした。
真ん中の「バフェットの銘柄選択術」が素人でも使える一番実用的な計算方法が紹介されていましたので、この本を参考にアリババとマスターカードの5年後の株価を考えてみました。
そもそもなぜアリババとマスターカードを比較したかというと、私の主観的な意見で今後5年間を考えた時にグローバルな決済システムに特化しているマスターカードの成長が一番堅実だと考えており、それに対して成長株の中ではアリババの成長の持続性が一番確実性が高いかなと思っていますので、マスターカードに対してアリババのパフォーマンスはいかほどになるのか比較してみました。
2.5年後の相場環境について
リーマンショック後から右肩上がりの上昇が続いているNY市場ですが、このまま引き続き5年間も順調に成長するとは思えません。FRBの資産縮小や利上げによる逆風はもとより、トランプ大統領による政治的な混乱で経済の足が引っ張られて、不景気が訪れているかもしれません。よって、今後5年間のPERはかなり控えめに想定してみました。
3.アリババとマスターカードの過去5年間の推移
↑マスターカードの希薄化後EPSの推移ですが、綺麗な右肩上がりでこの5年間は年率11.0%で成長してます。
↑アリババの希薄化後EPSの推移です。単位は人民元になります。日本と同じ年度単位での決算になります。よって一番右の2017年は2016年度の数字ということになります。2016年は特別利益があったので突出してます。5年間で年率36.6%のペースで伸びてます。
↑これはアリババの売上、営業利益、純利益の推移です。2016年から2017年にかけて売上の伸びが加速しています。売上の5年間の平均成長率は34.9%ですが、2016年からは約50%に成長率が伸びてます。
Amazonと違い自前の配送システムに力を入れておらず、収入のメインはEコマースでのCRMによる広告収入等で利益率は高いです。そしてアリペイというスマホ決済がブレイクしており、そこで得られたビックデータを活用できる余地が十分あります。また、広告収入がメインだとスマホ対応が心配ですが、アリババはすでにスマホからの売上がメインになっており、ここらへんの心配もありませんので、この先も順調に成長できるのではと思ってます。心配なのは中国政府の経済政策で、過剰債務問題をどう抑えてくるかだけです。失敗して経済的な混乱が起きないことを祈るのみですね。
↑モバイルからの取扱高が全体の8割近くまで伸びており(真ん中のグラフ)、マネタイゼーションレートもすでにPCを超えてます(右のグラフ)。
↓アリババにつていは過去にまとめてあります。
4.5年後のEPSと株価の予想
(1)マスターカード
成長率11% |
2017-12 |
2018-12 |
2019-12 |
2020-12 |
2021-12 |
5年後株価成長率(年率) |
EPS($) |
4.10 |
4.55 |
5.05 |
5.60 |
6.22 |
|
PER15 |
61.44 |
68.20 |
75.70 |
84.03 |
93.27 |
-7.0% |
PER25 |
102.40 |
113.66 |
126.16 |
140.04 |
155.45 |
3.0% |
PER35 |
143.36 |
159.13 |
176.63 |
196.06 |
217.63 |
10.2% |
↑マスターカードが引き続き年率11%で希薄化後EPSが成長した場合のEPSと、PERが15倍、25倍、35倍の場合の株価です。ちなみに8月29日終値でのマスターカードの株価は$133.84でPERは34.95倍(Yahoo financeより)です。黄色の部分は今の株価よりも高い予想株価になります。
5年後の株価成長率は今の株価($133.84)をもとに計算しました。今のPERが5年間キープされれば、年率10%のペースで株価が伸びていきますが、キープされなければ厳しい数字になりますね。もしPERが25倍に落ちれば3年間は含み損です。ちなみに過去5年間の平均PERは27.8倍です(以下参照)
Price Ratios and Valuation for Mastercard Inc A (MA) from Morningstar.com
9月12日追記
マスターカードは最近ガイダンスを引き上げて2018年までのEPSの成長率を20%と引き上げました。その成長率で再計算したのが以下のとおりになります。基準株価は$136.53になります。
(2)アリババ
成長率36.6% |
2018-3 |
2019-3 |
2020-3 |
2021-3 |
2022-3 |
5年後株価成長率(年率) |
EPS($) |
3.37 |
4.61 |
6.30 |
8.60 |
11.75 |
|
PER15 |
50.61 |
69.13 |
94.44 |
129.00 |
176.21 |
1.0% |
PER25 |
84.35 |
115.22 |
157.39 |
215.00 |
293.69 |
11.9% |
PER35 |
118.09 |
161.31 |
220.35 |
301.00 |
411.17 |
19.7% |
↑アリババが株価5年間の希薄後EPSの成長率が過去5年間の数字である+36.6%のペースで伸びた場合の数字です。$に直してあります。
ちなみにこの前の決算の状況は以下のとおりです。
8月29日終値で株価$167.41、PERは66.96倍(Yahoo financeより)ですので、こちらの想定PERはかなり低めになります。また、希薄化後EPS成長率もこの前の2Q決算では+92%を記録していましたが、成長率が36.6%に鈍化してもこれだけの数字になります。PERが15倍まで落ちてもマイナスにならないのが驚きです。PERが35倍をキープできていたら株価は5年間で約2.5倍ですので、涎が出そうです。
5.まとめ
今回始めて株価のバリュエーションというものを意識して、いくつか本を読み、その中で一番自分でも使えそうなバフェットの予想株価にもとづく期待収益率を用いて計算してみました。
マスターカードとアリババも今後も成長が期待できる人気銘柄ですので、PERが平均よりも高いです。それを今から買っていく際に、どれだけリスク/リワードがあるのかを客観的に考える一助になるかと思います。
マスターカードは少ないですが配当がありますので(過去5年間平均で0.5%)、もう少し収益はよくなるかと思いますが、今のPER(約35倍)で買っても、EPSの成長率が加速しない限り、損する可能性が高いですね。
アリババが+36.6%のペースで成長できるかどうか見極めるのが肝だと思います。スマホ対応がしっかりできていること、クラウド事業が順調に成長していてもうすぐ黒字になりそうなこと、アリペイでスマホ決済をしっかり押さえているので、新たな相乗効果が期待できること、C2Cであるタオバオでは取引手数料が現在は無料ですので、今後手数料を取るようにすれば、更に利益を伸ばせる余地が十分あること、もう一つの運営しているEコマース市場Tモール(こちらはB2C)では今年5月に「全球溯源計画」(グローバル・トレーサビリティー計画)を発表し、提携メーカーでの製造から物流、通関、第三者機関での認証などの一連の流れをデータ改編が困難なブロックチェーン技術を利用して確認する計画を打ち出すなど、信頼できる市場を目指して常に技術革新をしていることから、中国という巨大市場で36.6%という成長率の維持は今後も可能だと思います。
自分の中で初めての試みですので、間違っている部分もあるかもしれませんし、もっとこうした方がいいとか、こういうやり方もあるよというのがありましたら、ご意見頂ければありがたいと思います。
↑アリババも3日連続下落したあと昨晩は盛り返して来ましたね。調整はここまでかな〜(本音はもっと調整してほしかったけど・・・)
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