Hang in the US MARKET

日本の将来を悲観して、あえて米国市場で頑張っています

BlackBerry Q2FY2019の決算について

 1.はじめに

usmarket.hatenablog.com

私がターンアラウンド銘柄として、注目しているBalckBerry(以下BB社)のQ2FY2019の決算発表が、9月28日(金)寄付き前にありました。その後のザラ場で株価は+12%ほど上がりましたので、内容的には良かったのですが、カンファレンスコールの内容などをチェックした感じでは、今まで下降トレンドであった売上はボトムを付けたけど、これから反転してバンバン業績が伸びるという感じではなさそうです。じわじわの伸びてくるという感じですので、同じSaaS企業でも、売上が30%以上伸びていて株価が新高値を更新しているSaaS企業のイメージはまだありません。ただ、業界でトップレベルの実力を持ちながら株価はまだ$11.38で、PSRも6.69と10倍〜20倍を付けている他のSaaS企業に比べたら割安感がありますので、長期的には面白い銘柄だと思っています。

 

2.決算内容

(1)売上、EPS、ガイダンス

売上      $214M(+6.29M

Non-GAAP EPS $0.04(+0.03

 

ガイダンス(FY2019年通年)→Q1と変わらず

 ソフトウェアとサービスのbillings : 2桁成長

 ソフトウェアとサービス売上   :+8~10%(YoY)

 Non-GAAP EPS           :黒字

 フリーCF(特別項目を除く)     :黒字

 

 売上とEPSは予想を大きく上回りましたが、ガイダンスの上方修正がなかったので、決算発表後のプレマーケットでの株価の動きは鈍かったですね。

 

(2)業績の推移

 

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↑売上(GAAP)の内訳ごとの推移です。全体ではQ1に比べて$3Mほど下がりましたが、緑のレガシービジネスであるフマホ事業の売上が下がったためで、メインのソフトウェア関連(青)の売上は$4Mほど伸びてました。前回のQ1決算では、ソフトウェアの売上が下がったので株価が売られましたが、会社側が説明したとおりソフトウェアの永久ライセンスの計上方法の変更が原因で、実際のソフトウェアの売上が低下したわけではないことが、証明された形だと思います。

 

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↑ソフトウェアの売上の内訳

前回、会計方法の変更で急落したEnterprise software関連(青)の売上は、今回しっかり伸びてました。

 

期待されているコネクテッドカー関連を含むBlackBerry Technology Solutions(以下BTS)の売上成長率はYoYで+29%で、Q1の+31%よりやや鈍化していました。ガイダンスによると、後期は20%前半まで成長率が鈍化するとのことでした。一番成長しているBTSの売上が鈍化するようだと、V字回復とは行かなさそうですね。

 

オレンジのLicenceIPは特許の使用料等で、BB社は44000以上の特許を持っていて、そのパテント料の収入の割合も大きいです。よって、よく特許侵害で他社を訴えています。最近では半導体メーカーのクラルコムを訴えて、和解代金としてQ1FY2018に$815Mほどの臨時収入を得ています。

 

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↑Non-GAAPの売上(青)、粗利益(緑)、EBITDA(黄)、純利益(赤)の四半期ごとの推移になります。粗利益以下がQ1で底打ち打ちした感じがしますが、どうでしょうかね?

 

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↑粗利益率の四半期ごとの推移です。1ポイント上がって過去最高だそうです。

 

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↑最大のコストである販管費(青)と研究開発費(緑)の四半期ごとの推移。売上の低下に合わせて、絞って来ています。

 

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↑売上に占める販管費(青)と研究開発費の割合における四半期ごとの推移です。販管費の割合が下がってくれば利益が伸びてくると思いますが、主なマーケットとしているIoTなどのセキュリティ分野は競争が激しいですので、なかなか下げるのは難しいかもしれませんね。また、同様の理由で研究開発費が伸びてくる可能性もあります。

 

(3)その他

カンファレンスコールでFacebookとの訴訟合戦に関してアナリストから質問が出てましたが、ノーコメントでした。私の主観的な意見ですが、BBは知財ビジネスも重要なセグメントで、過去にも特許侵害で多くの訴訟を起こしてきており、大きく負ける試合はしないと思います。

 

9月12日に発表したIoT向けのセキュリティプラットフォーム「Spark」については、質問が出なかったですね。カンファレンスコールの冒頭で自らアピールしてましたので、自信があるのだと思います。これが成功しなかったら、株価のテンバガーは厳しいかもしれないですね(笑)

 

Morgan Stanleyが引け後にBBの2020年の売上予想は楽観的過ぎで、price targetを$10としていました。週明けの株価がどうなるかちょっと心配です。

https://seekingalpha.com/news/3393853-morgan-stanley-rains-blackberry-parade-cautious-note

 

BBは$2.4Bのキャッシュを持っているおり、その使い道について質問が出ていました。自社株買いなどの株主還元は行わず、買収に使うとのことでしたが、今は米株式市場が好調で買収価格が割に合わないとのことでしたので、当面は企業買収はなさそうです。

 

3.まとめ

良い決算で株価が12%も上がったので、ホッとしました。ただ、内容をよく見てみるとV字回復ではなく、U字回復になりそうな感じを受けました。Enterprise softwareは政府機関や銀行で採用されているとのことでしたので、セキュリティ技術の評判は良いのは間違いないと思います。将来期待のBTSセグメントは、最近5Gの商業使用を開始する話が出てきて、広く普及するのに数年はかかるでしょうし、多くの企業がこの分野を狙って来てますので、引き続きそれなりの販管費がかかると思います。よって、BBが利益をどんどん伸ばしてくるステージに至るまで、まだ時間がかかりそうですね。今、ぐんぐん株価が伸びているVEEVなどのSaaS企業のイメージとは違いますので、慌てずに数年間保有する気持ちで行きたいです。

 

4.番外編

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↑2018年9月30日時点のデータです。

こうやって比較してみると、今いちばん気になるのは、やはりNTNXですかね。直近1年間の売上成長率が1桁台なのは、業態変更でレガシービジネスのハード部門の売上を意図的に減らしたからです。SaaSで提供するソフトウェアの売上成長率は40%以上あるのに、このPSRの低さは、いくら同じ分野にマイクロソフトが参入してからと言っても、おかしいと思いますね。米国防総省に採用されるくらい信頼性はありますし、トップのVMWを追う立場であるが故、顧客本位に徹して高成長を続けており、そう簡単に売上成長率が鈍化するとは思えません。

 

あと、私はどうしても今の株価でSQを買う気にはなれません。グロスマージンが4割切っているのに、7割前後を誇るソフトウェア企業を上回るPSRの高さで、自分が買ったら翌日株価が下がりそうで、私は怖くて買えません(笑)。