Hang in the US MARKET

日本の将来を悲観して、あえて米国市場で頑張っています

なぜバフェットはFAANGの中でAppleを選んだのか?

 

1.はじめに

5月1日の決算発表で増配と1,000億ドルにのぼる自社株買いを発表したところに、バフェットがApple株を買い増していたと発表されて株価が急騰して新値を付けているAppleです。なぜ、バフェットは成長が明らかに鈍化しているAppleを選んだのか、今まで不思議に思っていたのですが、今朝のモーサテでバフェットがAppleの自社株買いをとても喜んでいるシーンがあって、自社株買いがキーかもと色々調べてみたところ、改めて自社株買いの威力に気付きましたので、ブログにまとめておきたいと思います。

 

2.バフェットは高ROE企業が好き

「バフェットの銘柄選択術」の第13章にバフェットが高ROE企業を好む理由が書かれています。ROEは純利益を株主資本で割った指標で株主資本からどれだけの利益を生み出しているかを表しています。

 

そしてバフェットが高ROE企業を好むのは、高ROE企業は以下の好循環を生むからだと本書では紹介されています。

 

まず、株主資本は以下のとおり定義されます。

    

  株主資本=資本金+資本剰余金     

        +利益剰余金-自己株式

 

 

純利益から配当を出して、残りが利益余剰金となります。その利益余剰金は株主資本に組み込まれて、翌年ROEに応じたリターンを生みます。

 

それを毎年繰り返すことで、株主資本は大きく膨らんでいき、ROEが一定であれば、増えた株主資本に応じて、純利益も増えていきます。

 

当たり前ですが、ここでキーとなるのが、高いROEをキープし続けることができる企業を選ぶということです。つまりワイドモート(広い堀)を持った企業を選択することが重要になります。

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Appleの1996年からのROEの推移ですが、2008年以降30%を下回っていませんね。安定感があります。

 

3.自社株買いと配当、どちらが投資家にとってメリットがあるか?

純利益は主に配当に回されるか、自社株買いの資金となるか、利益余剰金として内部留保されるかだと思いますが、配当と自社株買いだと、投資家にとってどちらがより有益なのでしょうか。

 

「バフェットの銘柄選択術」の第18章では、バフェットは株主となった企業に自社株買いを働きかけると書かれています。

 

アメリカでは受け取る配当額が大きいと、配当額に30%以上の税金がかかります。 

それよりも自社株買いで発行済み株式数を減らして一株当たりの利益(EPS)を上げてもらった方がいいという考えのようです。そして、バフェットはいい企業の株を割安に買うのを信条としてますので、買ったときよりもPERが高くなれば、EPS×PER=株価の公式より、株価がより高くなって、より良いリターンが得られる可能性があります。

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Appleが自社株買いを始めた2013年からの業績の推移ですが、これを見ると純利益は年率+6.9%の伸びに対して、自社株買いをすることでEPSは+12.8%となり、EPSの方が約1.9倍の成長率となっています。

 

EPSが純利益と同じ成長率だった場合、2017年9月のEPSは$7.47になります。この時のPERが16.75倍ですので、(9.27−7.47)×16.75=30.15と、一株当たり$30.15の違いが生じてます。5年間で$30の配当を貰おうと思ったら、仮に2017年9月の株価$155で計算したとしても、単純計算($155×4%×5年間)で4%以上配当利回りと同じ効果があるということです(それ以前は株価がもっと低かったため)。

 

4.FANG銘柄の中で比較したAppleの特徴

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Appleの売上成長率が低いので、今まで眼中になかったのですが、こうやって比較してみると、悪くはないですね。(Amazonは2014年が赤字だったので、成長率が計算されなかったですが、過去3年間のEBITDA成長率は83%あります)

 

まずROEの高さが際立っていて、自社株買いの余力が高いです。営業利益率や純利益率も2番めの高さです。成長率とPERの低さを考慮すると、買うならFBが一番かなと思いますが、何年間も今の成長を持続できる強固なワイドモートを持っているかと言われれば、やや不安を感じますね。成長率が下がればPERが下がりますので、思ったようなリターンが上げられない可能性があります。

 

バフェットはもっとAppleのPERが低い時に買っていますが、PERの下値が固かったら、EPSの成長率がそのままリターンになりますので、年率12.6%+配当分で成長するなら投資する価値があるということでしょうか。

 

 

5.Appleの直近の業績

 

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↑最近の四半期ごとの売上成長率(前年同期比)ですが、10%以上に伸びてきています。

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↑最近注目されているApple musicなどのデジタルコンテンツやApple Careなどを含むサービス部門の売上(青の棒グラフ)と全体の売上に占める割合(緑の折れ線グラフ)です。まだ15%位ですね。

 

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↑ 成長率で比較すると、サービス部門は全体の売上の倍のペースで伸びていますので、iPhoneの売上鈍化を補うことが期待できそうかな?

 

6.まとめ 

 

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Appleの売上成長率も鈍化して、私の中でまったく期待感がなかったのですが、こうやって調べてみると案外安定した成長が期待できる銘柄だったということに気付きました。単価が高いiPhoneXが思ったよりも売れていることと、サービス部門が成長していることで、売上成長がまた伸びてきています。バフェットが計算した期待収益率が達成できる可能性が一番高いということでFAANGの中でAppleを選んだのでしょうね。

 

最近のAmazonは利益成長率が高くて、この先もこの成長率が続きそうな期待感がありますが、如何せんPERが高すぎますので、利益が伸びてもPERが下がれば株価は思ったようにあがりません。上手く行ったらリターンは断然Appleよりも大きいでしょうが、期待収益率を達成する確立としては、Appleが一番かなと思います。

 

ただ、FANGが配当を出さず研究開発費につぎ込んで、次の成長に向けて頑張っているのに対して、Appleはのんびりしているように私は感じるのですが、そこら辺のリスクをバフェットさんはどのようにお考えなのでしょうかね?