急成長のconnected TV digital adsで恩恵を受けるROKU 株価のブレイクはこれから?
1.はじめに
5月10日に広告会社にDSPを販売しているThe Trade Desk社(TTD)の決算発表がありました。(DSPの意味については以下を参照して下さい)
いまさら聞けない「DSPとは?」~基礎知識編~ | Urumo!
この会社自体も急成長しているのですが、その中で目を引いたのは、以下の赤字の部分です。
Mobile Video grew nearly 160% from Q12017 to Q12018
Mobile In-App grew nearly 110% from Q12017 to Q12018Connected TV grew over 2,000% from Q12017 to Q12018
Audio grew over 650% from Q12017 to Q12018
Press Releases | Investor Relations | The Trade Desk
Connected TVの広告枠の売上が凄く伸びてます。今FBを始め、いろいろなサイトで動画広告が流れますが、一番効果的なのはストリーミングTVではないでしょうか。特にアカウントでその人の属性や好みが分かってますので、従来のTVのように時間帯に関係なく、常にベストな広告を流すことができます。それにしても、前年比で21倍の伸びという数字は凄いですね。
2.Media Streamerで人気を誇るROKU
日本ではGoogleのクロームキャストやAmazon Fire TV、Apple TVなどがありますが、米国で人気を誇っているのはROKUです。
多数のチャンネルを見られるのが、ROKUの魅力の一つです。
↑これは見られるチャンネルのごく一部で、ROKUのサイトを見るとインド映画はもちろんのこと、インドのNEWS専門チャンネルとかマニアックな分野までカバーしていました。
もちろんROKUでネットフリックスを見ようと思ったら別途料金を支払う必要はあるのですが、このように一つのディバイスで多数のチャンネルが見れるようにすることで、米国においてストリーミングTVのプラットフォームを築き上げて来ました。
↑アクティブアカウント数の推移ですが、ここ3四半期では前年同期比+約45%前後のペースで伸びています。
↑ストリーミング時間の推移ですが、同様に+55%位のペースで伸びています。
↑1ユーザー当たりの売上(ARPU)の推移ですが、前年同期比の伸びが右肩上がりで乗りに乗っている感じですね。
3.ROKUの収益源と業績の推移
昨年の秋には、無料で映画が見れる代わりに、従来のTV映画のように途中で広告が入るROKU独自のチャンネルを始めるなど、着々とプラットフォームからの広告収入を増やしてきています。
↑Q4はクリスマスの影響がありましたので装置の販売も伸びてましたが、18年のQ1では装置の売上を広告等の売上が上回りました(装置の売上に関しては競争が激しいため価格が低下していて、売上が前年同期比でマイナスになっている影響もあります)。
↑Gross profit(粗利)では断然、青の広告等の方が多いですね。広告等のグロスマージンは7割以上あります。
↑全体のグロスマージンは18年Q1で46.2%まで上昇していました。
↑各営業費用の売上に占める割合の推移です。ライバルとの競争度合いを計り知ることができるSales and Marketing費用(緑)の割合は、ほぼ横ばいですね(Q4はクリスマスの影響で一時的に売上が伸びていた関係で、各割合は減っています)。
↑もうすぐクリスマスシーズン以外の季節でも黒字化しそうな所まで来ています。
↑希薄化後EPSも同様です。
4.まとめ
急速な成長が始まったConnected TV分野における広告において、動画配信サイトで今一番注目されているネットフリックスは広告を入れてませんので、いい位置にいるのがROKUだと思います。前回の決算を見る限り、その傾向が見て取れます。
昨年の秋のIPO後、株価は一旦ブレイクした後、空売りで有名なシトロン・リサーチ の空売り宣言のせいで、一旦大きく下げました。そのシトロンが先週の金曜日に、空売りをやめてロングに入ったとツイートして、株価は7%あまり上昇して復活のきっかけを掴みつつあります。
www.nikkei.com(有料会員限定記事になります)
また、日経の記事には、シトロンがネットフリックスがロクを買収する可能性にも言及したと書かれています。AT&Tも動画配信を目論んでいるようですが、後参入組にとってみたらROKUは喉から手が出るほどほしい会社なのではないでしょうか。
ネットフリックスは「三日天下」か (写真=ロイター) :日本経済新聞(有料会員限定記事になります)
ただ、現状はAmazonやGoogle、Appleなどの巨大企業から追い上げられている立場にあるので、その後の株価の動きは微妙な感じです。
非常に沢山の動画プラットフォームが出来て、チャンネル争いは激しさを増しています。これを書いている現在(5月31日未明)も中国の動画配信サイトのiQiyi(IQ)が8%以上の上昇をしています。その中で、ROKUは多数の動画配信サイトを束ねて一つのプラットフォームで見れるという美味しい立ち位置の分野で、AmazonやGoogleを抑えてトップの位置におり、急速にアクティブアカウント数、ストリーミング時間数、ユーザー当たりの売上を伸ばしています。
しかも、直近の12ヶ月のEPSを合計して計算したPERは14倍、PSRは1.37倍と注目されている分野で急成長している割にはかなり割安なので、私は非常に期待しているのですが、その割には株価の動きがもっさいりしています。私の目論見は間違っているのでしょうか?
なにか落とし穴があるのかな(笑)
https://ir.roku.com/static-files/8b04826b-95a6-49c4-82a6-c3e6ffa30f25
(↑ROKUの18年Q1の決算資料)