Hang in the US MARKET

日本の将来を悲観して、あえて米国市場で頑張っています

Fintechの人気銘柄Square(スクエア SQ) PERがメチャクチャ高いけどいくらなら買ってもいいのか?

 

1.なぜ、スクエアに注目しているのか?

スクエアは、今まで導入費用と手数料の高さからクレジットカードでの支払いを受付られなかった小規模店舗をターゲットにして、安価なカード読取り機と決済手数料がたった2.75%(米国)でアップルペイにも対応、しかも翌日入金というスモールビジネスをしている人にとっては大変ありがたいサービスを展開しています。また、無料でPOSシステムアプリも提供しています。

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↑2015年の10kに出ていたスクエアのエコシステムの図です。

ビジネスモデルは、まず決済(赤の四角囲み)を抑えることで、そのお店の売上状態を把握し、様々な付加価値のあるサービスを提供して稼ぐことを目標としています。サービスの目玉はスクエア・キャピタル(赤丸)と呼ばれる小口の融資事業です。加盟店の売上状態を手に取るように把握していますので、AIで素早く判断して、申込みの翌営業日に融資できるのが強みです。

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↑スクエアのHPより切り取りましたが、このようにいくら借りたらいくら払えばいいのか分かりやすい上に、返済は自動的に日々の売上から差し引かれますので、煩わしさがないです。申込みもアプリからでき、個人営業主には願ったりかなったりのサービスだと思います。ちなみに、平均の返済期間は9ヶ月だそうです。

 

新興決済IT企業の雄といえば、なんといってもPaypalですが、こちらはEコマースをターゲットにしてます。スクエアは個人がやっているような小さなリアル店舗をターゲットにしており、既存の大手カード会社とも市場がずれてます。

 

直近の決算状況は以下のHPにまとめてあります。まだ赤字状態ですが、決済の取扱高は前年比約+30%台のペースで伸びてます。

usmarket.hatenablog.com

 このような素晴らしい成長ストーリーを知ってしまうと、すぐに株を買いたくなりますが、果たして今買って上手くいくのでしょうか?

2.今の株価

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↑yahoo finance米国版より引用。

8月11日現在の株価でPERを計算すると、2017年末の予想EPS(0.24)だと103倍、2018年末の予想EPS(0.43)だと57.7倍でPERはかなり高いです。ちなみに、この12ヶ月で株価は2.4倍位になってます。株価が$15くらいだったら、PERは62.5倍と34.8倍でグロース株だと妥当なPERだと思いますが、今の水準だと高すぎです。

3.EPS$0.43を達成するには

2018年末の予想EPSである$0.43を達成するには、発行株式数が376M株なので、$161Mの純利益を上げなければなりません。

 

 

4.2年後の利益をシュミレーションしてみる

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過去EPSの成長率は上のとおり、一定の伸びをしていませんので、単純にEPSから成長率を計算することができませんでした。よって、売上や売上コスト、営業費用の成長率を計算して、営業利益がいくらになるか計算しました。

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↑過去5年間の営業利益と純利益が$1〜3M位の差しかありませんので、営業利益≒純利益としてEPSなどは計算しました。

 

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スターバックスからの売上(上の赤線)からコスト(下の赤線)を引くと、なんと2015年まで赤字でした。スターバックスで利用されることはスクエアに貢献するどころか足を引っ張ってましたので、スターバックスに関する売上と売上コストの数字は除外して計算しました。なお、2017年からはスターバックスでスクエアは利用されておりません。

(1)過去5年間の成長率で計算すると(数字はin thousands)

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過去5年間の売上成長率は53.1%、売上コスト成長率も53.1%、営業費用の成長率は40.9%でしたので、それを元に計算したところ営業利益(黒の棒グラフ)は2018年も赤字のままでした。まあ、創業後しばらくは何かと費用が嵩みますので、このシュミレーションは参考になりませんね。

(2)直近6ヶ月の成長率で計算すると(数字はin thousands)

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2Q決算発表の10Qに載っていた各成長率を使用してシュミレーションしました。この成長率は2017上半期と2016上半期を比較して算出されています。2016年の数字にスターバックスは入っています。抜いて計算したところ、売上の成長率に比べて売上コストの成長率がかなり大きくなってしまったので、入れたまま計算しました。

 

直近6ヶ月の売上成長率は24%、売上コスト成長率は13%、営業費用成長率は6%でした。売上の成長率に比べて、売上コストと営業費用の成長率がかなり低い数字で、それだと2018年は$310Mの営業利益が出ます。今までの傾向から見ると純利益も営業利益に近い数字になると思われますので、予想の$161Mは優に達成できると思います。

 

$310Mを今の発行株式数376M株で割るとEPSは$0.82になり、8月10日の株価で計算するとPERは30.3倍になります。妥当なところでしょうか。

(3)直近3ヶ月の成長率で計算すると(数字はin thousands)

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これも直近6ヶ月と同様、成長率にスターバックスの数字が入ってますが、直近3ヶ月の売上成長率が26%、売上コスト成長率が19%、営業費用成長率が25%で、その数字で計算すると、なんと2018年も赤字のままでした。

  

5.結局、いくらなら買ってもいいのか?

2年後の米国株式市場を想像してみると、米経済は緩やかながら成長していますし、FRBも資産の圧縮を続けていると思いますので、金利は今よりも高くなっていると思います。そうなると今まで以上の成長力を発揮していないと、今のPER57.7倍は通用してそうにもありませんね。

 

決済情報というビッグデータを元に小口融資など様々な付加価値があるサービスをAIを利用して迅速に提供するサービスは、これからどんどん伸びる分野ですので、仮にPERが30倍を維持できていたとして、先の4(2)で計算した直近6ヶ月の成長率で計算した営業利益$310Mに、今の発行株式数で割って計算したEPS$0.82✕30倍で株価は$24.6となり、今の株価の水準と同じです。

 

直近6ヶ月の成長率は営業費用の成長率が6%と低かったです。今回のシュミレーションをするためにスクエアの決算資料を色々見ましたが、成長企業で開発費用とかマーケティング費用の伸びを6%に抑えるのは難しいと思います。よって、営業利益$310Mを達成するためには売上の伸びを加速させないといけないと思います。

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仮に売上成長率を40%、売上コスト成長率を30%、営業費用成長率を25%として計算すると2018年の営業利益は約$232Mで、今までどおり純利益も営業利益に近い数字になると仮定すると、EPSは$0.61でした。$0.61✕PER30倍=株価$18.3になります。直近の売上成長率が24%位ですので、再び頑張って40%まで加速させて、この株価が妥当ということです。

 

融資事業のスクエア・キャピタルはこれからどんどん伸びると思いますので、売上増加に大きな貢献をしてくれれば良いですが、スクエアが直接融資するわけではなく、他の銀行と提携してやってますので、マージンは思ったよりも高くないかもしれません。

 

こうやって色々考えてみると、期待先行でPERがべらぼうに高くなっている成長株をトレードする基本は「オニールの成長株発掘法」に書かれているとおり、株価の上昇が止まったと思ったら、直ちに売払った方がよさそうですね。

今は長期投資家が買うにはかなり危険だと思います。

 

「雄牛(強気の人)は利益を得ることがあり、熊(弱気の人)も利益を得ることがあるが、豚(戦い方を知らない欲深い人)は殺される運命にある」「オニールの成長株発掘法」p382

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オニール的にはこのような感じで買えれば十分儲かったのでしょうが、残念ながらスクエアという会社の存在を知るのが遅かったです。

↓成長株投資ならオニールよりもこちらの本の方が分かりやすいです。

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