Hang in the US MARKET

日本の将来を悲観して、あえて米国市場で頑張っています

長期間低迷していたBlackBerryがIoTデバイス向けのセキュリティ会社に変貌 株価は底打ちか?

 (1)はじめに

今回も私の師匠からターンアラウンド銘柄としてBlackBerryが面白そうだと教えて頂きましたので、調べてみました。

 

BlackBerry(当時の会社名はRIM)といえばiPhoneが出る前に一斉を風靡していたスマートフォンで、政府機関も使用するほどセキュリティに定評があり、主に企業が社員に配布するビジネス向けで使われていました。

 

2007年1月にiPhoneが登場した時、タッチパネルの入力しづらさはもとより、バッテリー寿命とセキュリティ面でiPhoneBlackBerryよりも劣っていたため、あまりライバル視していなかったようです。そんな見方とは裏腹にiPhoneは大ヒットし、2008年にはGoogleがアンドロイドOSを発表しました。

 

その後のスマートフォン市場はセキュリティよりも対応アプリ数の数が決め手となり、Appleは当初、BlackBerryと同様、厳密な管理でセキュリティ重視の方針でしたが、その方針をすばやく変更して今の繁栄を築きましたが、BlackBerryはセキュリティ重視で閉鎖的なOSとアプリの厳密な管理というやり方から脱却できず、シェアをどんどん落としていきました。

 

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↑月足チャート 2007年にピークを付けた後は、株価は暴落し2012年以降は$10前後で長期低迷中

 

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↑週足チャート 最近の底値は2017年春の$7台。

そんなBlackBerryもいつのまにか社名をRIMからBlackBerry(以下BB社)に変更して、得意のセキュリティ技術とBlackBerryで稼いた資金で買収した産業用OSのQNXという技術をテコに、これからのIoT時代に向けて着々を変貌を遂げています。

 

(2)BB社はどう変貌したのか?

スマートフォン市場のシェアをあっという間にiPhoneとアンドロイドに奪われて、創業者でここまで会社を成長させてきたCEOは株主から辞任に追い込まれ、その後の後を継いだ生え抜きのCEOも抜本的な改革が出来ずに2013年に更迭されました。

 

その後をプライベートエクイティ企業、米シルバーレイクのシニアアドバイザーを務めていた企業再生で実績があるジェン・チェン氏が引き継ぎました。

 

最初は新機種のスマホを発売してスマホ市場での復活を図りましたが早々と諦め、BB社が持つ技術が活かせる新たな市場の開拓に乗り出しました。

 

当初は、BlackBerry用のOSとして使うために買収した産業用OSのQNXですが、もともとカーナビなどの車載インフォテインメントのOSとしても使われており、そこに自社の持つセキュリティ技術を盛り込んで、自動運転化に向けて増々ハイテク化が進んでいる自動車業界へ進出しました。

 

私にはその技術力の良し悪しはよく分かりませんが、提携先を見る限り、主要プレイヤーの多くと提携しているので、その技術力の高さは業界から評価されているのだと思います。

 

business.nikkeibp.co.jp

↑BB社について、分かりやすくまとめられています。p3に提携先が図示されていてます。

提携先

アメリカ勢

フォード、自動車部品大手のデルファイ、エヌビディア、インテルクアルコム

中国勢

百度、Byton(筆者が追加)

日本勢

デンソールネサンスエレクトロニクス、

  

www.americabu.com

↑自動車業界だけでなく、BB社全般については、いつも参考にさせて頂いているアメリカ部さんのサイトがとても参考になります。

 

↑こちらの本を読むと、百度は中国の国策事業「アポロ計画(AI×自動運転)」の中心を担っており、この計画もダイムラー、フォード、ヒュンダイ、ホンダ、ボッシュ、エヌビディア、インテル、NXP、ルネサンスマイクロソフトなど錚々たる西側企業も参加していて、自動運転の技術では、単純な都市部道路での自動運転が可能なレバルに達していると言われています。

 

また、本書では自動運転には高速・大容量のデータを低遅延でやり取りできる次世代通信規格の5Gもキーとなると書かれています。自動車のセンサーで得た情報をリアルタイムでクラウドに転送してビッグデータとして活用するとともに、自動運転に必要な情報を車へ提供するやり取りが、安全な自動運転を実現するためには不可欠とされています。当然、セキュリティが重要となるのは言うまでもありません。

 

来年、GMが自動運転の車を発売する予定です。5Gについても米国では今年中にAT&Tとベライゾンが商用展開を開始する計画のようで、自動運転の時代はすぐそこまで来ています。

 

(3)BB社の現在の状況

①業績的にはまだ駄目な状態

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↑2011年をピークに売上が凄い勢いで減少して、今は最低レベルの売上で、赤字の状態です。

 

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↑2015年2月からの四半期ごとの推移ですが、ほとんど赤字の時が多い状態です。しかし、nonGAAPではNov2016年から黒字化していて、前回の決算では営業利益が$12M、純利益が$17M、EPSは$0.03と黒字化していました。

 

②ハードからソフト企業へ変貌し、粗利益率が大幅に向上

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↑直近24ヶ月間の四半期のセグメントごとの売上の推移です。

青:セキュリティなどのソフト販売

緑:今はレガシーとなったスマホBlackBerry関連の売上

黄:スマホBlackBerryのサービス等の売上

 

青のセキュリティなどのソフト販売がの割合が大部分となり粗利益率が向上しています。

 

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③ソフトウェアは3つのセグメントに分かれている 

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青:企業向けのメールなどの独自ソフトなどの売上。

黒:注目の産業用OS「QNX」関連の売上。

  自動車向けだけではなく、鉄道や原発などでも使用されており、

  この事業は子会社化されている。

橙:モバイルディバイス等のエンドポイントへのセキュアな

  接続・管理を支援する技術のライセンス許与などの売上。

 

ここで注目なのが、先月発表されたQ1FT19の決算で青の企業向けソフトの売上が急落していたことです。これは会計上の計算方法が変更となったためで、企業向けソフトはサブスクリプションで提供しているものと永久ライセンスで提供している2種類があり、永久ライセンスの計上方法が変更となったためのようです。政府機関向けで永久ライセンスのものが多いらしく、カンファレンスコールでもこの点についての質問が集中していました。

 

その点以外の、QNX関連とLicence IPの売上高が更新されており、順調な成長を見せていました。ガイダンスではソフトウェア全体の売上成長はFY2019通年で8-10%成長。QNX関連は二桁台の成長を見込んでいるとのことでした。

 

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↑日足チャート

前回の決算を受けて6月に急落した後、どこか有名サイトで買いの奨励が出たようで、7月19日に出来高を伴って急騰しました(赤矢印)。SeekingALPHAでのコメントも賛否両論盛り上がってますね。

https://seekingalpha.com/news/3371647-blackberry-jumping-3_7-percent-gain

 

(4)まとめ

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↑エンドポイント管理でBB社を採用している企業。米の政府機関もとよりエクソンモービルを始め、有名企業が採用していますね。

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↑Gartnerでも4つの部門で高く評価され、技術力は確かなのだと思います。

 

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↑四半期ごとの営業CF(青)とフリーCF(緑)

まだ両方赤字ですが、前回の決算では特別項目を除くとフリーCFは$3Mの黒字だったようです。

 

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↑四半期ごとの現金と現金同等物とカレントレシオ(流動比率)の推移

心配される資金繰りは当面問題なさそうですね。

 

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↑長期負債の推移です。長期間低迷している割には意外と少ないですね。

 

これまで述べてきましたように、これからの自動車も含めて多くのディバイスが繋がるIoTの時代のセキュリティ技術を提供する企業としてBB社は今後の活躍が期待できるいいポジションにいると思います。

 

リスクとしては、当然ライバル会社も多いですし、ライバル競争に勝つために技術力のある会社を今までいくつか買収してきており、当然今後もその流れが続くと思います。

 

今まで紹介してきた急成長している企業と違って、今回はターンアラウンド銘柄で、当たれば利益は大きいですが、今後急成長するかどうかの不確実性が高い銘柄です。日本語のサイトでもBB社について書かれたものが沢山ありますので、テンバガー銘柄を当てたい人は、ぜひ調べてみて下さい(笑)。

 

今回も素人である私個人が調べた内容になりますので、間違いがないように気をつけてはいますが、内容は絶対ではありません。投資は自己責任でお願いします。

 

※BB社はカナダ企業ですが、業績の数字はすべて米ドルで表記しています。

 

BlackBerry Investors Information

↑BB社のIR情報

 

ツイッターで知りましたが、この本おすすめです。 自動運転化への動きがよく分かります。この本を読んでたので、BB社について教えてもらった時に、これは!と思って今回一気に調べました。