Hang in the US MARKET

日本の将来を悲観して、あえて米国市場で頑張っています

株価に翻弄されない投資家になるために私が勉強してきたこと(後半)

 

前半では私が投資で必要だなと思う知識について、参考となる書籍を紹介しながら、その概要について説明してきました。

usmarket.hatenablog.com

 

この後半部分は、肝となる企業分析を私がどのように行っているかの紹介と、金利と株価の関係を理解する上で避けては通れない、企業価値を算定する際に使用されるDCF法を通して、金利の上昇が株価に与える影響を説明したいと思います。

 

6.避けては通れない企業分析

株式投資に関するオフ会に参加すると、当然の流れとして銘柄談義になり、将来有望だなと思っている銘柄をお互い披露し合うわけですが、特に日本株の集まりに参加すると感じますが、皆さん非常によく調べています。

 

情報が取りやすい日本株と違って、アメリカ株はなかなかハードルが高いと思います。幸い私は10年前の転職活動中に英語を一生懸命勉強したために(当時は自分に付加価値を付けるために必死でした)、ある程度英語が読めますが、すべての情報を英語で得るのはしんどいです。よって以下のような感じで調べています。

 

①日本語で書かれた情報をまず調べて、その企業の概要を掴む。

②財務情報が豊富な投資情報サイトGurufocusで財務内容を調べる。

③財務内容から疑問に思うところを、企業のIR情報から調べる。

 

①については当然ながら、まずアメリカ部さんのサイトをチェックします。ほんと凄いサイトですよね。無料でここまでして頂いて、頭が上がりません。

アメリカ部 | 米国株投資情報を中心に資産運用やビジネスのアンテナを広げるブログ

その他、ネットで検索すれば、日本語でも十分その企業に関する情報が得られると思います。私も含めてブログで企業分析をされている方も多くいらっしゃるし、その企業のサービス内容だけなら、意外に様々な日本語のサイトで紹介されていたりします。

 

②については、Morning star よりもGurufocusの方が便利だと思います。そして、年間500ドル位しますが、有料会員になると過去の業績の数字がエクスポートできたり、自分の好きな財務項目で企業比較ができたりします。

Value Investing | Market Insight of Investment Gurus

 

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↑この前VISAを買った時に、VとMAどちらを買うか悩んだのですが、Gurufocusの有料会員になると、こんな感じでデータを並べて比較ができます(これはブログ用にデータをエクスポートしてNumbersで加工したものです)。

 

MAの方がPERが高くて将来有望そうですが、中長期の保有を基本としている私にとっては、VはMAに比べて時価総額が1.5倍に対して、FCFが2倍あることに注目して、自社株買い余力の多いVを選びました。不景気になった時に、こちらの方が下落幅が少ないかも?と期待しています。

 

このように簡単に比較できるのが便利なので高い年会費を払いましたが、相場が低迷して銘柄を調べる頻度が少なくなったら、Yahoo financeを見て、自分で数字をポチポチ打ち込んでもいいかなと思っています(笑)。

 

③については、これらの数字をライバル企業と比較することで、なぜMAのFCFマージンはVよりも低いのに、PERが高いのか?から疑問が始まって、MAはVとの差を縮めるために何に力を入れているのか?とか、疑問に思ったことをその企業のIRのページの資料を見て調べています。

(調べましたけど、MAの戦略がよく分かりませんでした。Fintech企業とか買収しているようですが、Vも投資CFではMAの4倍使ってますので、Vも負けてないと思いますがね、と思ってVのCF計算書を見たら、多くが債券に投資されていました(笑))

 

ここまで調べるメリットは、オフ会で実力のある方とお話してもらいえるようになることでしょうか(笑)。やはり実力のある方とお話させて頂くと、とても勉強になりますね。

 

でも、①まででも十分成果が挙げられると思いますよ。前半の部で書いた基本が一番大事だと思います。

 

7.DCFとPERの関係を理解すれば、金利上昇の影響をイメージできる

 

私は2000年に株式投資を始めましたが、本格的な金利の上昇局面に遭遇するのは初めてかもしれません。金利の影響が株価にどのように影響するのか、昨年からコーポレートファイナンス企業価値に関する本を読んできました。なかなか1冊読んだだけでは理解するのは難しく何冊か読みましたが、この分野を勉強すると以下のことを意識するようになります。

 

  • 企業はキャッシュを生んで、株主に利益を与えてくれる存在である。

 

ついつい株価だけに注目してしましますが、企業は営利活動を行うことで、出資者たる株主に利益を与えてくれる存在です。

 

でも、牛乳を産出する乳牛と同じで個体差があります。スーパーカウと呼ばれる沢山の牛乳を出す牛をできるだけ安く買えればいいですが、それが難しかったら牛を見る目を肥やして、見た目は貧相だけど、実は乳をたくさん出しますとか、ちょっと病気がちだけど治ればOKみないな、将来できるだけ沢山の利益を与えてくれる会社をなるべく安く買うイメージが持てるようになります。

 

  • 今から投資するなら、債券と株式のどちらに投資するか?

  

今、米国2国債を買って2年後の償還まで保有すれば、無リスクで年2.75%のリターンがあります。ハイリスクの株に投資するなら、どれだけのリスクプレミアムを求めるか?

やはり年率10%以上のリターンは欲しいですよね。

 

  • PER銘柄ほど金利上昇の影響を受けやすい

  

PERはその銘柄の将来的な期待度の表れですが、DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法の面から考えると、金利が少し上っただけで株価は大きな影響を受けます。

 

DCF法については賛否両論ありますが、MBAで習う基本中の基本らしいので、理論の概要は知っておい損はないと思います。

 

例えば、年間120万円の家賃収入が見込めるマンションが1000万で売っており、10年後の売却価格が300万くらいになるという物件の投資判断を行う時に、将来のリスクをどの様に見込めばよいのか?

 

という時に、1年経過するごとにリスクを見込んで家賃収入を10%ずつ割り引いていって計算します。10年目に手に入る売却価格300万円も10%の10年分をディスカウントします。そうすると以下の通りになり、853万円以下で買うならOKという感じになります。

 

1年目:120÷1.1    =109万円

2年目:120÷(1.1の2乗)=99万円

3年目:120÷(1.1の3乗)=90万円

 ・

 ・

10年目:420÷(1.1の10乗)=162万円    合計853万円

 

この割引率10%は投資家が期待するリターンと同じで、853万円に対して毎年10%のリターンを複利で得られるのと、同じ意味になります。

 

そして、投資家が株式投資において期待するリターンは以下のとおりになります。  

 

    無リスク金利+β×株式市場プレミアム

 

よって、債券の金利が上がるということは、無リスク金利が上がることであり、よって、投資家が求める期待リターンが上がる、つまりDCF法においては割引率が上がるということになります。

 

企業価値におけるDCF法の式は以下のとおりになります。

PV=C/(r-g) 

  C:その企業が生み出すキャッシュフロー

  r:割引率

 g:その企業の成長率

 

そしてCを純利益(E)、株式時価総額がその企業の現時点での企業価値(PV)を表しているとすると、PERとDCF法との関係は以下のとおりになります。

 

E×PER=株式時価総額すなわち企業価値PVとすると

PV=E×PER =E/(r-g) 

両方をEで割ると PER=1/(r-g)

これをひっくり返すと1/PER=(r-g)になります。

 

 

この前提をもとに、純利益が同じでPERが100倍と20倍の企業では、金利が0.2%上がった時に、DCF法で計算すると企業価値はどれだけ下がるかを計算してみます。

 

仮に割引率をr=8からr=8.2に変えて計算するとその差は以下のとおりになります。

 

PER100倍の企業だと、企業価値が−16.7%も下がります。

PER20倍の企業だと、企業価値は−4%しか下がりません。

 

↑前半の部で紹介した10月に入ってからのamazonAppleの株価の下落幅の違いですが、先の計算と似たような感じになっていませんか?

 

DCF法で厳密な株価の計算はできませんが、なんとなく金利の影響がイメージできるかと思います。

 

金利が上昇した時に、DCF法の計算式であるPV=C/(r-g) の分母のr-gが増えないためには、成長率gがさらに上昇しないといけません。

 

本当は避けたいところですが、あえて金利上昇局面で高PER銘柄を買う時は、さらに成長率が上がる可能性がある銘柄を選ぶべきです。

 

その点を考えると、Amazonよりも現在のEPS成長率はかなり低いですが、この後伸びが期待できるMicrosoftの方が、まだ安全かもしれません。

 

ただ、Amazonも莫大な資金を設備投資と研究開発費に投じてますので、今後何かサプライズが出てくる可能性も十分あります。よって、Amazonの将来には期待をして、引き続き保有しています(ただし9月に1/3程売って一部利確しています)。

 

8.まとめ

 

長々と書いてきましたが、投資はほんとうに奥が深いです。

 

株価は人々の期待と理論の狭間で揺れ動いています。

 

その中で、投資判断をシンプルにするために、私は以下の点を考慮しています。

 

  • キャッシュの割合

将来有望な銘柄をできるだけ安く買うのを基本としてますので、常にキャッシュは用意しておくようにしています。そして、相場が荒れてきたらキャッシュの割合を増やすような形でリスクを管理しています。

 

ついついボラリティが高い小型成長株に魅力を感じてしまいますが、今はその割合が高くならないように気を付けて、石油株や安定のプラットフォーム企業であるVISACMEグループ(デリバティブ市場運営企業)、Copart(事故車オークション企業)も買って、リクスを管理しています。

 

  • 日々節約して、投資資金を貯める

小型株は売り買いしますが、基本買い持ちのスタンスなので、投資資金を増やす事が重要だと思っています。

 

  • 常に有望な銘柄を探し続け、他社と比較検討して銘柄選択の目を養う

これが一番大事だと思いますね。投資で成功している人は、間違いなくこの選択眼が優れていると思います。

 

というわけで、巷でよく聞くシンプルな方法が株価に翻弄されない投資法ではないでしょうか(笑)

 

おわり

 

企業価値に興味を持たれたら、森生さんの本がおすすめです。私は3冊とも読みました。

 

 ↑Gurufocusの創設者が書いた本です。「ピーター・リンチの株で勝つ」と同系列の投資本になります。