Hang in the US MARKET

日本の将来を悲観して、あえて米国市場で頑張っています

AI時代に期待される革新的なストレージで急速に伸びているPure Storage社

(1)はじめに

成長株に投資する際に気をつけなければならないのは、高値掴みをしないことです。だれが見ても良い銘柄はバリエーションがすでに高くなっています。成長株で割安な銘柄を見つけるのは大変ですが、今回私の師匠よりPure Storage社(PSTG)が急成長している割にはとても割安だと教えていただきましたので、調べてみました。割安に放置されている成長株の場合、みんなに気づかれていないか、もしくは何か懸念事項があるかのどちらかだと思います。前者を見事に掴めば大成功、後者を掴めば大失敗とハイリスク・ハイリターンな投資になりますので、時間をかけて調べてみましたが、大した懸念事項もなさそうでしたので、今回ブログにまとめてみました。

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(週足チャート)

(2)Pure Storage社とは?

オールフラッシュのストレージを提供している会社で、データの出し入れのスピートはもとより圧縮や重複排除技術に定評があります。

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↑Gartner 2017 Magic Quadrant for Solid-State Arrays

Gartner社の2017年の評価では、Solid State Array部門(SSDを整列させた大規模記憶装置という意味)でPure社はもっともリーダー的な企業として評価されていました。4年連続だそうです。

https://www.purestorage.com/jp/microsites/gartner-mq-2017.html

 

オールフラッシュは速さが大きな特徴ですが値段が高価で、またエラーが発生しやすく、書き込み回数にも制限があるというデメリットがありました。Pure社はそこにブレークスルーを起こし、従来のHDDストレージと同程度の価格で、より早く、同じ容量でも圧倒的に設置スペースが少ない製品を売り出しました。

 

エラーが発生しやすい点については、ストレージOSでカバーする仕組みを他社に先駆けて開発し、書き込み回数にも制限がある点についても、業界トップレベルのデータの重複排除と圧縮技術により、SSDへの書き込みを徹底的に削減し、SSDの寿命を延ばしています。

 

Pure社の保守サポートも画期的で、保守費用が年々上がらず、ずっと一定料金で使えるサービスを提供しています。Pure社のストレージOSが異なるSSDを混在させても制御できるから、このような一定料金のサービスを提供できるようです。

低価格で10年使えるオールフラッシュストレージの秘密を徹底解説 

 

ビッグデータを扱って、ディープラーニングを行う分野では、Pure社のような高速なストレージが向いており、NVIDIAと提携してAIRI AI ソリューションという一体型のAI向けインフラストラクチャを提供していることです。

PURE STORAGE と NVIDIA による統合ソリューション ― AI の大規模運用を可能に

https://blog.purestorage.com/ja/pure-storage-nvidia-join-forces-to-bring-ai-at-scale-for-enterprises/

 

 

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(Pure Storage社HPより引用)

つまり、Pure Storage社はAIというゴールドラッシュが起きようとしている時に、NVIDIAと並んでスコップやツルハシを提供している会社になります。(NvidiaはPure社のライバルであるNetApp社と組んで同様な製品を出してますので、Pure社だけと組んでいるわけではありません)

 

あらゆるところにセンサーが張り巡らされ、IOT時代になると今以上に膨大なデータが蓄積、AI等で解析され活用されるようになります。メルセデスのF1チームでPure社のストレージを使っていますが、車体にとりつけられたセンサーから得られる、空気の流れやタイヤの温度といった様々なデータを、レースの限られた時間の中で分析しなければならないスピード感が要求される現場でPure社の高速ストレージが活躍しています。AIのディープラーニングの分野では高性能のGPUが登場したことにより、データを保管しているストレージのスピードがボトルネックとなっていましたが、ここでもPure社のストレージが優位に立っています。

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先のガートナー社の調査で上位に来ていた企業の売上成長率を比較してみました。この中でNetApp社がPure社と同じストレージ専門企業ですが、ここ3年間、売上があまり成長していませんね。Pure社の成長率が際立っています。如何に革新的な製品を出しているか、ここから伺えます。

 

(3)どれくらい割安なの?

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クラウド関連のインフラ的ソフトウェアを提供しているNutanixと、年間の売上高をはじめ、3年間の売上成長率やグロスマージン、FCFマージンが似ていましたので、比較してみました。両者とも3年間のトータル売上成長率が年率80%もありますが(最近は両社とも40%まで落ちてきています)、まだ赤字企業ですのでPSRで比較すると、Nutanixが9.93倍、Pure社が4.94倍でNutanixの半分のバリエーションでした。しかも、Net MarginはNutanixの方が赤字幅が大きいです。

 

Nutanixは今人気のSaaS企業(サブスクリプション型のソフト企業)、Pure Storageはハード企業になりまりますので、Nutanixの方がバリエーションが高くなるのは分かりますが、それにしても成長率とグロスマージンが高いわりにはPura Storageは評価されていないような気がします。

 

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ちなみに同業他社比較では、PSR5倍で断トツですが、売上成長率を加味すると、とても割高だとは言えなさそうですね。

 

(4)業績の推移

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↑2年前からの四半期ごとの売上の推移です。売上に季節性があり、Q1が低くてQ4が一番高くなっています。

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↑四半期ごとの売上成長率(前年同期比)です。一番右のApr2018をFY19 Q1と読み替えて遡って下さい。成長率も下げ止まって、前回の決算では31%→40%と成長率が伸びていました。昨年同様、この先も成長率が伸びていくかどうかが一つのポイントだと思います。

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↑ハード企業の割にはグロスマージン(黒の折れ線グラフ)が65%以上をキープしているのが凄いと思います。この企業の特徴の一つです。

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↑営業利益(NonGAAP)の推移です。昨年はQ3、Q4において黒字化し、今年のQ1は昨年に比べて赤字幅が縮小していました。この先Q2、Q3と続くに連れて右肩上り具合がどれほどになるか注目すべきポイントの一つです。

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↑FCF(NonGAAP)の推移ですが、下は特別項目(訴訟関連費用)を抜いた数字になります。特別項目を抜けば今年のQ1も黒字化していましたね。この数字も評価されるポイントの一つです。

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↑売上に占める各営業費用の割合の推移ですが、前年同期比で着実に下がっていっています。よい傾向ですね。

 

負債関係では、今年のQ1に$430Mの転換社債を発行し、はじめての大規模な長期負債が発生しましたが、DEレシオは0.68倍と大したことはありません。Current ratioも4倍以上あり、資金繰りも問題ありません。

https://s21.q4cdn.com/687136699/files/doc_presentations/2018/Earnings-Slides-(Q1-FY19)-PDF.pdf

(Q1 2018決算プレゼンテーション資料)

(5)まとめ

今回、革新的なオールフラッシュによるストレージを販売して、同業他社に比べて大きく売上を伸ばしているPure社についてまとめてみました。スピードが早く、データ圧縮性能も高くて従来よりも省スペースでしかも低価格。業界の常識を破る定額制の保守サービスも提供し、ストレージ分野で革命を起こしている企業です。Dell、IMB、HPEから追われる立場ですが、AI技術が発達するに連れ、データの重要性が増々高まり、データの蓄積量も今後大きく伸びることが期待されますので、今後も成長を続ける注目すべき企業だと思います。

 

そして成長率、粗利益率(グロスマージン)を考慮すると、他の分野の企業と比較したら割安感があると思います。ハードは儲からないというイメージがあるからでしょうか。

 

最後に余談ですが、SDDはフラッシュメモリがベースで構成されており、フラッシュメモリ東芝が発明したものです。ITのハード関連は日本の得意分野だと思いますが、AI時代にこれから増々必要とされるオールフラッシュストレージ分野で、ガートナー社の評価において日本の企業が上位に来ていないのがなんとも寂しい限りです。

 

2018.6.16追記

Q1 2018の決算で発表された次期のガイダンスです。

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