気になった米国小型株の銘柄調査(賃貸不動産管理システムをSaaSで提供するAppFolio)
1.はじめに
AppFolio(APPF)は賃貸物件管理用のシステムをSaaSで提供している会社です。2012年には法律事務所向けのシステム会社を買収して、2つのサービスを提供しています。
メインは不動産の方で、不動産業者が必要とするあらゆるサービスをシステム内に盛り込んであり、物件紹介から近隣の賃料比較ツール、物件広告サイトへの投稿、そしてオンラインで賃貸契約できるシステムまで提供しています。
アメリカ部さんのサイトで業務内容が詳しく説明されています。
↓2006年創業で、2015年にIPOされて株価はこのような感じで伸びています。
(APPFの週足チャート)
2.業績の推移
(単位:$millions)
↑昨年にFCFが黒字化しました。
↑昨年からEPSも黒字化してます。
↑しかし、売上高の対前年比の成長率は落ちてきています。
↑顧客数の推移です。
↑顧客数の成長率です。過去3年間、過去2年間、過去1年間で計算すると成長率は落ちてきています。
↑四半期ごとの不動産部門の顧客数の成長率(前年同期比)の推移です。2018年3月期の成長率は1年前に比べて18.7%→14.9%へ下がってますね。
↑2015年12月期からの四半期ごとの売上成長率です。毎月課金のSaaSなので顧客が増えるに応じて売上も順調に伸びていきます。
↑こちらは四半期ごとのEPS(希薄化後)の推移です。
↑2018年3月期の四半期における売上の内訳ですが、Value+serviceと表現されているプラスαのサービスの売上の方が高く、売上の伸びも39%とコアサービスの24%よりも高くなっています。
↑売上に占めるセールスとマーケティング費用が22.1%→17.5%へ下がってきています。一番のコストであるこの分野の割合が下がってきているのは、注目すべきポイントですね。
↑同様に販売管理費の割合も15%→12.6%へ下がってきています。
↑研究開発費は11.3%→12.6%へやや増加しています。理由はValue+サービスの開発費が伸びているからです。
3.バリュエーション
(2018年5月20日時点でのデータ、Gurufocusより引用)
↑主なSaaS企業で比較してみましたが、利益は伸びてきていますが、顧客数の伸びが落ちてきている中で、同様の傾向がある給与人材管理システム企業のPaycom(PAYC)と比較した場合、PAYCの方がOperating Margin、Net Margin、FCF Margin、ROEが優れているのに、PERやEV-to-EBITDAのバリュエーションを表す指標はAPPFの方がずっと高いのは頂けませんね。
4.まとめ
マーケティング費や販管費のコスト割合が下がってきている中で、顧客数が右肩上がりに増えていけば、それに応じて利益も伸びていくSaaSというビジネスモデルなので、これからもEPSは順調に伸びていくと思います。プラスαのサービスの売上の方が大きいのも魅力的です。
しかし、顧客数の伸び率が下がってきている中でバリュエーションが高いのが気になりますので、しばらく様子見したいと思います。