Hang in the US MARKET

日本の将来を悲観して、あえて米国市場で頑張っています

「行動ファイナンス」の本を読んで思ったこと(その1)

 

1.はじめに

本書の目次

第1章 マーケットとは何か? 投資とは何か?
第2章 ランダムウォーク理論が示唆する投資の虚無的な世界
第3章 行動ファイナンス理論が示唆するマーケットの非効率の存在
第4章 マーケットにひそむ落とし穴
第5章 恐るべき“敗者のゲーム”のルールとは
第6章 マーケットにわずかに存在する期待リターンの源泉と投資手法
第7章 投資での成功に必要なもの

 

 

前回に続き、同じ田渕 直也さんが2005年に書いたこちらの本を読んで思ったことを書いていきたいと思います。ちなみに、前回取り上げた本は2017年12月に発売された田渕氏の最新の本になります。

投資の基本を再考するきっかけをくれた本「ファイナンス理論全史」 - Hang in the US MARKET

 

前回のブログでランダムウォーク理論について書きました。ちなみに、バンガードはランダムウォーク理論を前提に1975年に最初のインデックスファンドを誕生させています。

 

こちらの本でもまず最初にランダムウォーク理論が取り上げられていますが、投資を考える上でまずこの理論を理解することが重要です。

 

2.ランダムウォーク理論

ランダムウォーク理論とは、「情報コストゼロ」「取引コストゼロ」「投資家が合理的に行動する」という3つの条件が満たされると

 

  すべての情報はすぐに相場に織り込まれる

         ↓

相場を動かすのは予測できない新しい情報のみ

         ↓

この先、株価が上がるか下がるかはランダムな動きになる

         ↓

  相場変動の分布は正規分布になる

 

となり、つまり相場を予測できないということになります。

実際に過去の相場の動きの分布をとると、正規分布にほぼ近い形になりますので、この理論はあながち間違っていないと思います。

 

よって、個別株で勝負している投資家は、ランダムウォーク理論(この先株価が上がるか下がるかは五分五分)に打ち勝つ必要があります。

 

株価は人が株を買ったり売ったりすることで価格が形成されますので、人の動きが株価を形成することになります。そして人間は時に合理的な行動を取らないことは、みなさん実感していると思います。

そこにインデックスファンド以上のリターンを得るチャンスがあるわけです。

 

次にこの本に書かれている行動ファイナンスの理論として「ギャンブラーの誤謬」「プロスペクト理論」「リスクプレミアム」の3つについて取り上げたいと思います。

 

3.行動ファイナンス

(1)ギャンブラーの誤謬

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過去1年間のS&P500の日足チャートですが、見事な右肩上がりを形成しています。

 

私は昨年完全にこのギャンブラーの誤謬に囚われて、上手く流れに乗れなかったのですが、普通こんなに上昇が続くと思わないですよね。

コイントスで裏が10回連続で出たような感じがしますが、確立的にはありえないことはありません。

 

このチャートもところどころ軽い株価の調整局面を迎えていますが、これにギャンブラーの誤謬が絡んでいて、これだけ上昇が続いたのだからそろそろ下降トレンドになるだろうと、何か不安材料が出るなどのきっかけで「売り」に出る人が出てきます。でもこれがチャンスとばかりに買いそびれていた人が「買い」に入って、株価が上昇に転じると「売った」人も買い戻しをする羽目になり、更に株価が上昇するというトレンドが生まれます。このような形で思ったよりもトレンドが長く続くことがあるようです。

 

そして、人間の心理としは最初、トレンドが続く確立を過小評価する傾向があるが、そのドレンドが意外に長く続くと、逆にそのトレンドが更に続くのではないかと感じ始めるようです。そしてトレンドの過小評価→過大評価を循環的に繰り返して、波打つような相場の大きなトレンドを発生させていくようです。

 

このような形で株価が過大に形成されるリスクが生じます。昨晩で天井を付けたのでないかという意見が出ていましたが、どうなのでしょうかね?

 

(2)プロスペクト理論

よく話題となるプロスペクト理論とは「人間は同額の利益から得る満足よりも、損失から受ける苦痛の方が大きい。よって、人間は損失を回避することを優先する」という理論です。

 

この理論から学ぶことは、

①人間は損失の確定が遅れがちになり、逆に利益確定は早まる傾向がある。

②損する可能性のある株などのリスク資産を買うには、一定以上のリターンを求める。

 

基本的に相場はランダムウォークで上がるも下がるも五分五分なので、昨年のような大きな上昇トレンドが続く確立は低いです。投資で成功している人は、この数少ないチャンスで大きく儲けていますね。人間の本能に逆らって、如何にチャンスが来た時に売りをがまんして長く引っ張れるか、ここが一つの肝だと思います。自分が持っている株の価値を信じていないと、ある程度上がった所で早々と売ってしまいます。

 

②は次の理論「リスクプレミアム」につながります。

 

(3)リスクプレミアム

ここでいうプレミアムとは、リスクへの対価のうち、リスクの期待値を超える「割増料金」部分を指すようです。

例えば、社債の利回りは国債以上の利回りを求められますが、国債利回り+会社が倒産する確立を織り込んだ利回りに加えてプラスαがないと買う人が現れないということです。このプラスαがここでいうプレミアムということになります。

 

見方を変えると、このプラスαの分だけ価格が安くないと買わないとういことで、何らかのケチが付いた会社の株は必要以上に割安になることがあります。ここを狙うのがバリュー株投資になりますね。

当然、GEのように割安で底値だと思って買ったけど、更に悪材料が出てきたということがありますので、そのようなケースを見込んで買う必要があります。

 

機関投資家があまり資金を振り向けない小型株や新興株はリスクプレミアムが厚くなり傾向があるようです。そこが小型株の魅力ですが、その厚いリスクプレミアムが注目されて資金がどっと流入し、株価が上がりすぎてリクスプレミアムがマイナスになると資金が逃げ出だす傾向があるので注意が必要です。

 

リスクプレミアムはよく分からないとか、イメージが悪いとか人間が本能的に嫌だなと思う所に発生しますので、そこを上手く嗅ぎ分ける必要があります。典型例として不良債権超割安で買って再生するビジネスなんかがそうですね。

 

4.さいごに

今回、本書の前半部分について取り上げてみました。先のことは誰にも分かりませんので、最終的には自分のカンで判断することになるのですが、自分の考えにはいろんなバイアスがかかりますので、そのバイアスを客観的に捉えられるようになるためには行動ファイナンスの知識は重要ですね。

 

この本を読んで、個別株で勝負するならトレンドフォロー戦略(モメンタム投資)が有効な投資手法の一つだと思いました。昨年はギャンブラーの誤謬でやられましたので(別に大きな損をしたわけではなく、せっかくのチャンスを生かせなかった)、今後はこの悔しさを糧にいつか大きく取りたいですね。もう一年早くこの本に出会いたかったです(笑)。

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