Hang in the US MARKET

日本の将来を悲観して、あえて米国市場で頑張っています

投資の基本を再考するきっかけをくれた本「ファイナンス理論全史」

1.はじめに

久々の更新となります。

年末はこの本を読んで、投資というものの基本を改めて考えるきっかけとなりましたので、ここでご紹介させて頂きます。

 

昨年は毎月名古屋で開催されている個人投資家が集まるセミナーに何回か出席して、投資で成功している方々の話を聞いてきました。それぞれ人によって投資手法は異なりますが、話を聞いていて思ったことは、「なるほど!」と思う目の付け所が人と違うことはもちろんのこと、そして何よりも重要なのは各自共通しているのは株価が上昇している時に、がっつりポジションを張って、利益をしっかり確保していることでした。

 

この株価が上昇している時に、がっつりポジションを張ることは、自分の銘柄選択に自信がないとなかなかできません。投資で成功している人はそれぞれ独自の視点から銘柄選択を行っていて、ETFを定期購入する方法から、会社四季報を発売直後にくまなくめくって割安成長株を探す方法まで色々あるのは、皆さんご存知のとおりだと思います。でも、投資で上手く行く人と、行かない人では何が違うのでしょうか?この本を読んで、大事な基本を理解することができました。

 

本書では、まずランダムウォーク理論の紹介から始まります。

この本は、昔から有名な本ですが私は馬鹿にして今まで読んだことはありませんでした。しかし、統計を取るとよく分かるのですが、株価の動きは、大部分がランダムな動きをしていて、上がり、下がりが五分五分に近い動きをしています。この五分五分の動きに翻弄されて消耗せずに、まれに起こる株価が大きく上昇する時に、上手く利益を伸ばせるかが投資のポイントになります。また、まれに大きく株価が下落する時があります。その時に、如何に資金の損失を小さくするかもポイントになります。

 

本書を読むとまず1900年にランダムウォーク理論が発表されてから、現在に至るまでの投資理論の主流が説明されています。驚くことにランダムフォーク理論がベースとなっていることが分かります。そして、リーマンショックのようなまれに起こる大暴落、特に今は情報化が高度に発達して瞬時に情報が伝わるのと人工知能による自動売買が出てきたことで、相場がフラッシュ・クラッシュするリスクも高まっています。そのような相場環境の中で我々個人投資家はどのように泳いでいけばいいのか、本書を読んで考えさせられました。

 

2.本書の目次

第1章 ランダムウォーク理論の誕生と激しい反発
第2章 ポートフォリオ理論と銘柄選択、どちらが役に立つのか?
第3章 金融工学が生んだリスク管理の限界と新たな危機
第4章 現実に舞い降りたブラックスワンの爪痕
第5章 行動ファイナンスがもたらした光明
第6章 統計的手法と人工知能が別次元に導く未来 

 

3.本書の内容

 まず第1章では、ランダムウォーク理論の誕生から始まります。フランス人のルイ・バシュリエという人が1900年に「投機の理論」という博士論文を発表しました。のちにランダムウォーク理論と呼ばれ、現在では高度な数学を駆使した最初のファイナンス理論として認められていますが、当時は全然評価されないところか、間違っているとまで指摘されていました。

 

ランダムウォーク理論の論旨は「金融市場の価格はまったくデタラメな動きが連なって形成されている」ということですが、価格の動きがランダムということは、裏を返せば、価格の動きはほぼ正規分布によって表すことができるのです。その後、情報化が進んで効率的市場仮説がうたわれるようになり、すべての情報は価格に瞬時に織り込まれるようになると、この傾向は強まります。

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(↑本書より引用)

 このS&P500の67年に渡る月間の暴落率の頻度分布を見れば、色々考えさせられます。米国株の場合0%より右の割合の方が理論値よりも大きので、バイ&ホールド戦略だけでも利益が得られますが、

第4章ではリーマンショックなどのブラック・スワンについて記述され、確率論だけでは説明できない、大暴落について取り上げています。このグラフでは分かりづらいですが、③の部分を拡大すると理論上の正規分布よりも大きな上昇や下落する確立は若干高くなっているそうです。

 

そして、第5章では全体ではランダムウォークかもしれないけど、探せば割安成長株はあるよねと言うことに対して、行動ファイナンス理論をもとにそのことを説明しています。

名古屋でのセミナーでも主催者の方が行動ファイナンスは勉強した方がいいよと言っていましたが、市場の歪みは人々の心理から来てますので、行動ファイナンスの知識は重要だと改めて認識しました。

 

第6章では、独自の手法を編み出して大成功を納めたヘッジファンドの手法をいくつか取り上げ、最後に人工知能による市場のコンピューター化について考えています。フラッシュ・クラッシュのリスクを指摘しつつも、過去の事例をいくらでも学べる人工知能ですが、過去の事例からどれだけ人間の営みを予測できるかは未知数だと著者は指摘しています。

 

4.本書を読んで

株価形成の大部分が正規分布に収まっているので素人が相場で儲けようとしたら、左端で買って(不景気で株価が下がり続けている時)、右端(好景気で株価が上昇し続けている時)で売れば簡単に儲けることができます。何年かごとに不景気は必ず訪れますので、何年も待つことができれば、買いのチャンスは必ず来ます。でも、投資を趣味としているとなかなかこの買い場を待つことができませんね。どうしても正規分布の真ん中あたりで売買することになり、思うように利益が上げられません。

 

そんな場合まず一番重要なのは、損をできるだけ小さくすることです。上がるも下がるも五分五分なら損を小さくすれば、利益はでます。特にリーマンショックとまで行かなくても、株価が暴落するときは、ちょくちょくあります(昨年のように暴落がない年の方がめずらしいと思います)。株価の下落が続いた時に、暴落まで至るかどうかは予測できません。よって、予め損切りポイントを決めておいて、そのポイントで自動的に損切ることが大事だと再確認しました。

 

買った銘柄と買ったタイミングが悪いと損切りが増えてしまいますので、ここが重要なポイントになります。割安株は下落リスクが低いので安心感がありますが、永遠に浮かび上がってこないリスクもあります。昨年の私は大きく買った割安銘柄は鳴かず飛ばずで、小ロットの銘柄だけが上昇しただけで、思うように利益が上げれませんでした。要は銘柄分析に胡座をかきすぎて、上手く流れに乗れませんでした。その反省から5つ位に分散投資して、その中から株価が上昇してきた銘柄に、目が出ない株を売って、資金を集中していくのも一つの手だなと思いました。

 

今年は、どこで利益を確定するか、そして損切りポイントもしっかり管理して行こうと思います。米国株ではマネックス証券の評判が悪いですが、私は逆指値ができる点でマネックス証券を使い続けています。

 

ここ数年いろいろ投資について勉強してきて知識は増えました。色々な投資手法を使い分けているうちに、それに囚われて昨年の上昇相場は思うように利益が伸ばせませんでした。今年に入ってから含み益が伸びてきて一安心しているところですが、本書を読んで大事なポイントを再確認できましたので、今年はもっとシンプルに考えて行きたいと思います。

 

↑同じ著者が過去に行動ファイナンスの本を書いていたので、買ってみました。こちらも後日ブログで取り上げたいと思います。

 

↑この本もおすすめです。「期待」が株価を上げるとか、投資初心者が読むべき基本的だけど説明しづらいことが、噛み砕いて説明されています。あまり注目されていませんが田渕さんの本はお勧めだと思います。