Hang in the US MARKET

日本の将来を悲観して、あえて米国市場で頑張っています

株価が割安でテンセントや百度が後押ししている中国のEC企業JD.com(京東商城)

 

1.はじめに

 いつも銘柄を参考にさせて頂いているでらさんから中国のEC企業JD.com(JD)が割安ではないかとの情報を頂きましたので、さっそく調べてみました。

 

 アリババとJD.comの違いは、アリババが楽天のようにECプラットフォームだけ提供しているのに対して、JD.comは自社倉庫に在庫を持って自社配送にこだわっているため配達が早く、また冷蔵配送もできるため生鮮食品も取り扱うことができるのが特徴です。自社配送網は人口カバー率99%まで達しており、最終的には100%を目指しています。

 

中国ECのB2C市場はアリババのTモールがライバルになります。JD.comの方が先にNasdaqに上場しましたが、株価のバリュエーションではだいぶアリババに先を越されています。

 

しかし、自社配送による配送品質の良さ、また創業当初から偽物は売らないというポリシーのもと、商品の品質管理にも力を入れてきてます。それにより海外ブランドメーカーとの提携も続けており、今年に入ってからもアルマーニやゼニスなどとの提供を発表しています。

 

「独身の日」https://t.co/1giTkjmvh4の取扱高が3倍に増えた理由https://t.co/IjMOR8J8uzhttps://t.co/1giTkjmvh4は、中国全土にわる渡る物流ネットワークを自社で構築。大型物流倉庫335、配送拠点6905、ピックアップステーションを2691の町に設置

— でら@クソダサい米国成長株投資家 (@delawemon) November 17, 2017

 今年の11月11日の独身の日はTモールを上回る販売の伸びを見せ、だんだん豊かになってきて量から質へと転換しつつある中国において、何かと期待が持てる企業ではないでしょうか。

 

京东全球售 – 京东直邮美国,澳大利亚,加拿大,日本,香港,澳门,台湾等国家地区

↑JD.comのサイト

2.なぜ株価が割安なのか? 

f:id:gyutaro75:20171119202843p:plain

↑アリババ(BABA)、Amazon(AMZN)、JD.com(JD)で比較しました。JDが赤字なのでEV/Revenueで比較するとJDは1.23倍しかありません(オレンジ部分)。

 

しかし、こうやって比較するとECプラットフォームを無料で開放して広告などの販売促進サービスで稼いでいるBABAの収益率の高さが目立ちますね(グロスマージン62.4%、ネットマージン30.88%)。

 

在庫を自社倉庫で抱えて配送を他社に委託しているAmazonグロスマージンは36.46%(もちろんクラウドサービスの影響も大きいと思います)、在庫も自社倉庫で抱え、配送も自社で行っているJDのグロスマージンは15.77%となり、グロスマージンの低さが株価に影響しているのだと思います。

 

JDの売上成長率(Total Rvenue)は素晴らしいと思いますが(黄色部分)、目立つのは今年のアリババの売上成長率が加速していることでしょうか(水色部分)。

 

f:id:gyutaro75:20171119201218p:plain

↑JDのグロスマージンも年々増加しています。しかし、ここには出ていませんが、Amazonは1996年頃からグロスマージンは20%を超えていましたね。

 

3.JD.comの業績推移

f:id:gyutaro75:20171119204805p:plain

↑単位は$Millionsです。売上は年率47%のペースで伸びています。赤字幅も2015年の$1412Mをピークに減少傾向が続いています。

 

f:id:gyutaro75:20171119205117p:plain

↑単位は$です。希薄後EPSの赤字幅も減少を続けています。

 

f:id:gyutaro75:20171119205220p:plain

↑単位は$Millionsです。2016年は営業キャッシュ・フロー(青)が大幅に伸びて、フリーキャッシュフローも黒字になりました(ただし、今年はどうなるか分かりませんが・・・)。

 

f:id:gyutaro75:20171119205414p:plain

↑こちらは四半期ごとの売上と売上上昇率(前年同期比)の推移です。売上上昇率(緑)は2016年9月期に30%と最低を記録しましたが、その後は再び上昇傾向を見せています。

 

f:id:gyutaro75:20171119205723p:plain

(単位はMillions)

↑年間アクティブユーザー数の推移です。アリババが年率+10%、JDは+31%のペースで伸びていますが、2016年以降はアリババ+13%に対してJDは+18%と鈍化してますね。

 

f:id:gyutaro75:20171119211031p:plain

↑四半期ごとの取扱高(GMV)の推移(左軸、青の棒グラフ、単位はBillons元)と前年同期比で比較したGMVの上昇率(右軸、緑の折れ線)です。取扱高の伸びが下がってきているのが気になりました。

 

f:id:gyutaro75:20171119211413p:plain

↑売上に占めるコストの割合です。倉庫等の配送に関わる設備(緑線)、マーケティング費(オレンジ線)、テクノロジーやコンテンツへの投資(赤線)、管理費(紫線)です。無茶な投資はしていなさそうです。

 

f:id:gyutaro75:20171119211929p:plain

↑自社倉庫で在庫を抱えるビジネスだと気になる総資産回転率や棚卸資産回転率などをAmazonと比較しましたが、ほぼ同じでした。

 

f:id:gyutaro75:20171119212153p:plain

↑安全性指標をAmazonと比較しました。安全といえるレベルを若干下回っていますが、Amazonとそんなに変わりません。負債/株主資本のDEレシオはAmazonよりも健全でした。

 

4.まとめ

JD.comをネットで検索すると、結構面白い記事が出てきます。

京東商城、巨人アリババとの戦いに「共闘」で挑む - WSJ

JD.com(京東商城)のパートナーシップ戦略

↑JD.comにはテンセントが筆頭株主で約18%を占めています。そしてウォルマートも中国でのネット通販事業をJD.comに株と交換し、さらに今年追加出資していて現在は12.1%の株を持っています。更に今年百度と提携し、昨年はMAU1億人を誇る中国のニュースアプリ「今日頭条」とも提携しています。

 

テンセントのチャットアプリ「微信(ウィーチャット)」や検索エンジン大手の百度、そして「今日頭条」からJD.comへの誘導を行い、アリババに対抗しようとしています。

 

 ついにネット通販物流の無人化が始まった! ロボット駆使した倉庫を中国EC大手JDが実現 | ネットショップ担当者フォーラム

↑今年8月には昆山に無人物流センターを開設しました。2016年にはドローンによる小包配送も開始してますし(まだ使用しているドローンんは30機程度)、現在は1トン以上を輸送できるドローンの開発も行っているようです。

 

「爆買い」後も中国人の買い物熱は冷めていない JD.com京東日本 JD Worldwide(京東全球購) ビジネス開発ディレクター 郭季柔氏 WEDGE Infinity(ウェッジ)

↑京東全球購という越境ECのサイトを持っていて、越境ECに力を入れています。2016年4月に関税の税制改革があって、海外製品の関税が30〜50%かかるところ、越境ECで2,000元以下(年間一人2万元まで)の商品の場合、関税が11.9%まで下げられています。この優遇措置は当初2017年まででしたが、2018年まで延期されました。これも追い風だと思います。

 

f:id:gyutaro75:20171119215040p:plain

↑週足チャートです。このような状況で今年は一つ上のレンジに抜け出しました。

 

中国のECは凄い勢いで伸びてます。JD.comは自社配送網を整備して迅速な配送を行い、創業当初から偽物対策に力を入れて品質管理もしっかり行い、アリババとは違う特色を出しています。コールドチェーン網も整備してますので、新鮮な生鮮食品の販売も行えます。この前の決算発表ではカナダから生きたロブスターを輸入して販売したと言ってました。

 

しかし、アリババもそれに対抗してB2CのTモールを展開し、この2四半期の取扱点数は前年同期比+49%の成長をかましてました。今年のアリババの成長率は素晴らしいですね。

 

営業利益率がメチャクチャ高いアリババの資金力はかなり脅威ですので、JD.com潰しにかかられると厳しいものがあります。その点が一つの懸念材料かと思いました。

 

もしこの先、米国相場の伸びが鈍化するとなると、出遅れ株に注目が集まるかと思います。その波にこのJD株は乗るかもしれないと期待しつつ、注目して行きたいと思います。

 

JD.com, Inc.

↑JD.comのIR

http://media.corporate-ir.net/media_files/IROL/25/253315/2017/JD.com%203Q2017%20Financial%20and%20Operational%20Highlights.pdf

↑先日発表した決算のプレゼン資料