珍しくまだ株価が若い成長株が残っていた! ニュータニックス社(Nutanix)
1.はじめに
11月の勉強会でいつもお世話になっている医師兼個人投資家の方からニュータニックス(NTNX)という会社を紹介して頂きました。昨年9月にIPOした会社で急成長しているのですが、チャートを見るとまだまだ伸びる余力を持て余していそうなので、今回調べてみました。
↑週足チャート
2.ニュータニックス(Nutanix)社とは
Nutanixは2011年にこのハイパーコンバージドインフラストラクチャ製品の提供を開始し、市場を開拓してきました。
ハイパーコンバージド基盤のNutanixは、VMwareと競合しはじめたのか? 新製品の狙いと日本での普及について聞いた - Publickey
ハイパーコンバージドインフラストラクチャとは以下のようなものだそうです(私にはこの手のシステムはよく分かりません、汗)。
仮想化のシステム構成は一般に、複数のサーバが1つのSANストレージを共有する構造となっています。ハイパーコンバージドインフラストラクチャでは、各サーバの内蔵ストレージをソフトウェアで束ねて分散ストレージとして構成、これを複数のサーバで共有する構造になっています。これによって設定などに手間のかかるストレージエリアネットワークやSANストレージを不要にし、ストレージを内蔵した複数のサーバを、イーサネットで接続するだけのシンプルなハードウェア構成で仮想化基盤を実現するとともに、分散ストレージによって仮想化基盤をスケーラブルにできるなどの利点を備えています。
↑この会社のサービスの内容の良し悪しは私には理解できませんが、この顧客の伸びとリピート率の高さから、良いサービスを提供している会社だなと思いました(笑)。
ちなみにこの会社の決算は7月締めになります。
Nutanix Enterprise Cloud - Run any application at any scale
↑ニュータニックス社の日本支社のHPをみると、Yahoo Japan、パナソニック、NTTデータなど日本の大企業にも採用されており、既存のデータセンターの拡張やクラウドへ移行の際に、サーバーを止めずに移行できたり、グーグルクラウドや最近提携したAviatrixを介してマイクロソフトのAzureやAmazonのAWSなどへ移行することができる一連の機材やソフト等のサービスを提供しているようです。
3.なぜ株価がまだ若いのか?
今年3月2日に発表されたQ2’2017決算発表(2017年1月締め)のQ3のガイダンスがトーンダウン気味で失望を買い、株価が大きく下落しました。
↑週足チャート
Earnings Callのトランスクリプトを読むと、DRAMとメモリー価格の上昇を受けてグロスマージンがやや低下することと、Q3は季節的に成長率が低い時期のようで、控えめなガイダンスが嫌気されたようです。
株価は5月1日にIPO価格あたりまで下げた後、緩やかな右肩上がりを続けています。
↑日足チャート。4Q’2017の決算発表(赤矢印付近)もその翌日にかけて大きく株価は振れましたが、その後アナリストのアップグレードもありジワジワと上げてきています。このジワジワ感がこの先のブレイクを予感しているように感じるのは私だけでしょうか(笑)
4.業績の推移
(単位Millions)
↑過去5年間の業績とTTM(直近12ヶ月間)の業績の推移です。売上は年平均+91%のペースで伸びていますが、赤字幅も広がっています。
↑希薄後EPSの推移です。
(単位Millions)
↑直近5四半期の推移です。4月〜7月の4Qは赤字幅が減少しているのが、密かに好感されている要因だと思います。
↑四半期ごとの希薄後EPSもジワジワと赤字幅が減っています。
(単位Millions)
↑過去5年間の営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローですが、営業キャッシュフローの黒字幅は伸びてます。
↑過去5年間とTTM(直近12ヶ月間)におけるグロスマージンと一番のコストである販売管理費の売上高に占める割合の推移です。
↑こちらは過去5四半期の推移になります。7月に売上高に占める販管費の割合が最低を記録しているに注目です。次回の決算ではどうなるのでしょうか?
↑過去5四半期の顧客数と新規顧客数の推移です。顧客数は+13%のペースで伸びています。
↑S&M費を新規顧客数で割って、四半期ごとの顧客獲得コストと1顧客あたりの売上高を計算してみました。7月期で顧客獲得コストは$257,000と結構な金額がかかってますね。この数字を1顧客当たりの売上高で割ると以下のグラフの通りになります。
↑顧客獲得コストを回収するのに8四半期(2年間)かかってます。
↑こちらはSaaSをビジネスモデルとするマーケティングオートメーションのサービスを提供しているHubSpot社の顧客獲得コストの回収期間ですが、比較するとNutanix社もそんなに悪いわけではなさそうです。
ユニットエコノミクスに改善が見られるようになると、株価的には面白くなると思います。
↑もう一つキーとなるのが、毎月課金で提供しているソフトウェアの契約割合の推移です。ソフトウェアの契約に力を入れているのですが、利幅が大きいこの分野が伸びれば利益貢献度は高いです。
↑世界的な大企業を顧客にすることにも力を入れています。
5.まとめ
売上の成長率は文句なく、売上高だけ見ればスクエアやハブスポットと同じように株価が伸びていてもおかしくない銘柄ですが、IPO後に一度コケてますので、投資家から絶大な信頼を得られている訳ではありません。
このブログで同様の業績分析をしたメイザーロボテックス(MZOR)やハブスポット(HUBS)と比較しても、売上だけでなく利益面からみてもあまり変わらないと思いますが、株価は出遅れています。
Nutanix社はハイパーコンバージドインフラストラクチャ製品の老舗ですが、HP(ヒューレッドハッカード)が今年1月に、Ciscoが今年8月に同様の技術を持つ企業を買収して、この分野に参入してくる意向を示していますので、今後の競争激化も株価の上昇を押さえている要因だと思います。
まだ赤字の成長株でこのブログで取り上げたスクエア(SQ)、HUBS、MZOR、shopify(SHOP)と比較してみました。過去3年間の総売上成長率は2番めに高いのに(右の赤囲み)、EV/Revenueは5.56倍(左の赤囲み)と一番低いです。
売上が急成長しているグロース株で割安感がある銘柄は少ないです。その中でこのNutanix株は貴重だと思いますので、ウォッチ銘柄にいれておく価値は十分あります。11月30日が1Q’2018の決算発表になりますので、その決算内容次第で株価がブレイクするかどうか期待しながら見守りたいと思います。
↑4Q’2017決算資料
↑IRのHP