Hang in the US MARKET

日本の将来を悲観して、あえて米国市場で頑張っています

これは凄い!と思った脊髄手術ロボットのメーカーMazor Robotics

1.はじめに

手術ロボットの分野も技術革新が進んで、今後実用化されるロボットが増えてくると言われています。インテュイティブサージカル社(ISRG)が長年マーケットリーダーでしたが、Stryker、スミス・アンド・ネフュー、ジョンソン・エンド・ジョンソン、メドトロニック、Zimmer Biometのような大企業がこの分野に参入してきています。

 

その中で脊髄という重要な神経が通っている背骨の手術を補助する装置を作っているMazor Roboticsが昨年改良版の新型機を発売し、株価が上昇しているとの情報を医師兼個人投資家の方から頂きましたので、調べてみました。

 

2.Mazor Roboticsと新型機Mazor X

(1)Mazor Robotics社

Mazor Robotics社はイスラエルの企業で、2001年に設立されました。デリケートな器官である背骨の手術における補助装置の開発を進め、2004年に最初の製品「SpineAssist」を発売しています。これは世界初の脊髄手術におけるガイダンスシステムでした。ガイダンスシステムとは例えば、背骨にピンを刺す時に刺す位置や角度をガイドするシステムのことです。2011年に後継機Renaissance® Guidance Systemを発売し、FDAに承認されました。そして、2016年10月に新型機Mazor Xを発売しました。それに先立つ2016年5月に

160カ国に拠点を持つ医療機器開発・製造・販売企業大手Medtronic社と販売委託契約を結び、さらに大口の出資も受けました。これがMazor株がブレイクするきっかけとなっています。

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↑Mazorの週足チャート、2016年5月(赤矢印)から株価がブレイクしている。

(2)新型機Mazor X

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↑背骨にインプラントした画像ですが、Mazor Xはこれをする際にスクリューを刺す位置と角度と決めてくれます。背骨の中には脊髄という太い神経が入っており(骨の中の空洞になっている部分)、しかも背骨の側面には一定間隔で穴が空いており、脊髄から分岐した神経がその穴から出て各臓器や筋肉などに繋がっています。よって、背骨にスクリューを刺す際にはこれらの神経を避けて刺さなければなりません。しかもこのような手術をする症例は、背骨が著しく湾曲した人や奇形など通常の状態ではない患者も含まれます。これは凄い器械だなと素人考えですが思いました。

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How It Works

↑このリンク先のHPにMazor Xの動画があります。4分半ありますが、これを見るとこのロボットの凄さがよく分かります。

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↑この装置を使うと、左から入院日数が27%減、合併症の発生率が48%減、再手術が46%減、術後合併症が減ったとうデータがMazor社のHPで紹介されていました。

Mazor社は設立当初からこのロボットの研究をして技術とノウハウを積み重ねここまで来ました。

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↑2010年からの販売実績(累積)です。これらの装置には手術ごとに使い捨てのキットを使用しますので、販売台数が増えるとそのキットの売上も上がることになります。これは大きなポイントだと思います。

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↑稼働してる装置1台あたりの年間手術患者数ですが、順調に伸びてます。この装置の信頼性を裏付けていると思います。

3.Mazor社の業績

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↑単位はmillionsです。過去5年間の売上、営業利益、純利益の推移です。売上は順調に伸びてますが、赤字が続いています。

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↑過去5年間の希薄後EPSの推移ですが、順調に赤字幅が減っている訳ではありません。

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↑こちらの単位はthousandsです。過去6四半期の業績の推移です。

2017年1Qの売上がやや落ち込んでいますが、これはMedtronic社へ卸すMazor Xの価格を下げたためのようです。

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↑営業費用の内訳で単位はthousandsになります。販売費を半分に下げれば、黒字になるのですが、大型の医療装置ですので、営業はもとより情報提供などのサポートがどうしても必要で、そう簡単に減らせそうにありません。ちなみに販売ルートは直販とMedtronic社経由での販売の2つのルートがありますが、Medtronic社経由の方が多いです。

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↑青の消耗品サービスは手術ごとに使い捨てるキットやメンテナンスなどの売上を表しています。調べてませんが利益率もこちらの方が高いはずです。

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↑期待のMazor Xの販売数の推移です。f:id:gyutaro75:20171021194745p:plain

↑Mazor Xだけでなく他の装置も含めた全体の受注数の推移です。2017Q1は決算資料にその数字がなかったので空白です。

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↑受注残の推移です。これらの販売状況をみると、これからバンバン売上が伸びますという感じではないですね。このような装置の宿命だと思います。

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↑2017年6月30日現在の賃借対照表、赤囲みが負債で青囲みが自己資本

自己資本比率は77%、Total current aseetsと比較した流動比率は3.9倍で借金は問題ないと思います。

4.Mazor社の株価

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↑こちらは日足チャートになりますが、最近気になることがありました。

赤の矢印のところで、この10月9日は2017Q3決算(11月7日)の事前発表があって売上が〜17.2M、22システムを受注、受注残は17システムと寄り付き前に発表されてプレマーケットで株価が+9%まで上がりましたが、ザラ場では値を下げて上髭が長くなっています。

 

青の矢印の所で+6%台の上昇を示した後、相場の地合いは良かったのに次の日は大きく売られました。昨晩もダウは160ドルも上昇したのにMazor社の株は売られてます。この最近の株価の動きは気になるところです。

5.まとめ

メドテック・カンパニー・オブ・ザ・イヤー 2016 | Medtec Japan

↑こちらの7番目にMazor Xについて紹介されており、以下その一部を抜粋したものです。

2016年、ロボットの分野は、多くの競合がマーケット・リーダーであるインテュイティブサージカルに対抗しようと盛んに参入し大流行となった。なかでもイスラエルを拠点とするMazor Roboticsの活躍が目立った。

Mazor Xは10月末に販売開始を予定しており、Wells FargoのアナリストのCraig Bijou氏は、同システムが今後、頚椎後方固定術や経皮的仙腸関節接合のような術式にも使えるようになると予測している。

 

 この装置はいずれ脊髄周囲の外科手術で広く用いられるようになると思います。そして当然、同様の装置を作っているライバル企業もあります。

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↑medtech社のHPより

medtech社も同様の装置を開発しており、ことし7月に大手医療機器メーカーのZimmer Biomet社に買収されました。Zimmer Biomet社も販売力がありそうな大きな企業ですので、この先少し心配ですね。ただ、今までの実績(患者数、導入された病院数、文献の数)はMazor社の装置の方が上回ってます。

 

Mazor社の売上は、今後も順調に伸びていくと思います。営業費用はなかなか削れそうにもなさそうですので、あと20M売上を伸ばして黒字化する感じでしょうか。本体以外のキットなどの売上の伸びが加速してくれば、黒字化は早まると思います。

 

投資家目線での最終ゴール(売り時)はどこかに買収されて株価が跳ね上がった時だと思います。ただ最近の株価の推移を見ていると、一波乱ありそうな感じも受けました。

 

最初、サラッとこの会社のプレゼン資料を見た時に、株価も上昇ステージもまだ若そうですし、思わず勝負に出ようかと思いましたが、いろいろ調べてみると、販売数の伸びが思ったほどでもなくて、今後の株価の大きな上昇を裏付ける数字がなかったです。これが、この手の装置の特徴だと思いますが、何回かに分けて慎重にエントリーしたいと思います。

 

その他参考にしたサイト

We believe in healing through innovation.

↑Mazor社のHP

Financial Reports

↑Mazor社のIR

https://www.mazorrobotics.com/images/Corporate/Mazor Robotics_Corp_web_0817.pdf

↑2017年8月のMazor社プレゼン資料

https://seekingalpha.com/article/4093239-mazor-robotics-mzor-ceo-ori-hadomi-q2-2017-results-earnings-call-transcript

 ↑2017Q2のearnings callのトランスクリプト

Home | medtech

↑ライバルのmedtech社のHP。HP比較ではMazor社の方が断然よく出来ています。