Hang in the US MARKET

日本の将来を悲観して、あえて米国市場で頑張っています

画期的な医療機器を発売して株価7倍になった人工心臓の老舗アビオメッド社(ABMD)

(1)はじめに

医療機器の製造会社は利益率が高く、不況にも強い成長銘柄だと思っていますが、その中でも体内埋込み型の医療機器や医療器具の製造会社は成長安定度が高いと思います。配当が低いのが欠点ですが、何かと懸念事案が発生する製薬メーカーよりもこちらの方が長期保有に向いているような気がします。

 

有名な医師兼個人投資家の方から人工心臓の老舗アビオメッド社(ABMD)が画期的な新製品を出して面白そうだよ、と教えて頂きましたので、今回調べてみました。

 

(2)アビオメッド社とは

ABIOMED Inc. は、人工心臓の開発を目的とし、マサチューセッツ州ダンバースに1981年に設立され、1990年代から体外式補助人工心臓(VAD)や埋め込み式の人工心臓の開発、製造ならびに販売を行い、2004年よりヨーロッパ、2008年より米国において、IMPELLA(循環補助用心内留置型ポンプカテーテル)の販売を開始し、その普及に努めてまいりました。(日本アビオメッドHPより引用)

アビオメッド社は2006年に世界初の体内埋込み型人工心臓を発売した、人工心臓のリーディングカンパニーです。この人工心臓はグレープフルーツ大の大きさで、バッテリーだけ体外に出して体に括り付けておくだけの装置なので、今までどおりの生活をすることができる画期的な製品でした。

 

今回アビオメッド社はImpella(インペラ)という補助循環用ポンプカテーテルを発売し、株価が3年間で7倍になりました。このポンプカテーテルは、カテーテルの中にスクリューが入っていて血液を送り出すことができます。形はカテーテルなので開胸しなくても大腿動脈等から血管内を通して心臓内部へ挿入することができるのが画期的です。

www.abiomed.com

↑アビオメッド社HPにインペラの機能を紹介した動画(30秒ほど)があります。これを見れば一目瞭然でどんな商品か分かります。

 

心筋梗塞は心臓の冠動脈がコレステロールなどの蓄積で狭窄して、血流障害が起きることで生じますが、この狭窄部分を広げる手術もいまはカテーテルで行います。この手術を行う時に心臓機能を補助するために使われたりします。また、一般的に心臓発作中またはその後に発生する命に危険を及ぼす心原性ショックの治療や心肺バイパス手術後の使用にも承認されているようです。

 

日本では2017年9月に発売開始されましたが、この記事を読むと外科医の先生達からは大きな期待が寄せられているようです。

日本アビオメッド、IMPELLA補助循環用ポンプカテーテルの保険収載と販売開始を発表|日本アビオメッド株式会社のプレスリリース

このアビオメッド社のインペラが日本で承認された2016年には補助人工心臓治療関連学会にインペラ部会が設立されています。それほどこの商品が画期的だということが言えると思います。

インペラ部会について : 補助人工心臓治療関連学会協議会 インペラ部会

(3)この装置の市場はどれくらいの規模なのか?

アビオメッド、インペラ心臓ポンプで治療を受けている患者が米国で5万人を突破 Nasdaq:ABMD

こちらの記事によると、以下のとおりあり、心臓病大国アメリカでは結構ニーズがありそうです。

心不全と冠動脈疾患は米国における死因の第一位として3分の1を占め、毎年90万人近くの死因になっている1心不全の蔓延は現在570万人のアメリカ人に影響しているが、2030年までにはその数がさらに46%増加すると予想されている1,2。これまでに米国で5万人の患者がインペラで治療を受けたが、インペラはPCI症例のほんの1%のみで使用されているだけであり、心原性ショックで複雑化したAMI患者のうちの10%未満の使用にすぎない。したがって、何万人もの患者は未治療のままであり、インペラの使用によって医師が提供できる処置オプションについても知られていない可能性がある。

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↑アビオメッド社のプレゼン資料によるとインペラ適応可能な患者が米国で22万1千人(2015年)おり、現在ではその7%に用いられているそうです。まだ用いられているのは一部だけのようですね。

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↑インペラを使用している病院数です。下の2.5や5.0、CPは数種類あるインペラの商品名を表しています。合わせて1400の病院で使用されています。

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↑日本では今年9月に発売され始めました。これを見ると新興国では中国のみ承認されているようです。新興国でも心筋梗塞の原因となる肥満が問題となっているので、マーケットのポテンシャルは大きそうです。

(4)アビオメッド社の業績

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2016年度(日本だと2015年度に該当)にFDAで承認されてから、売上成長が加速しています。

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営業利益も2016年度に大きく伸びてます。負債はゼロです。

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単位はmillions

↑売上、営業利益、純利益の推移。インペラが承認されてから売上高営業利益率が20%に上昇しています。

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↑希薄後EPSの推移です。2015年度は税金の引当金を戻しているため純利益が嵩上げされていましたので参考になりません。実質2016年度から大きく伸びはじめていると思います。

(5)アビオメッド社の株価とPER

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↑週足チャートです。2014年10月27日からブレイクしはじめ、株価は$24.3から$173まで上昇してますので、グロース株の醍醐味を体現しているチャートです。エヌビディアも株価は今6倍になってますが、こういう株を当てたいものです。

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↑過去5年間のPERの推移です。2015年は特別要因で純利益が嵩上げされてましたので、一時的に下がってますが、高いPERが続いてます。2014年にPERが高いからと購入を躊躇していると、この7倍銘柄を取り損ねることになりますので、成長株はその勢いに思い切って飛び乗ることが大事ですね。勉強になります。

(6)まとめ

画期的なこの手の製品には当然、他社も参入してくると思います。この銘柄を教えてくれた医師兼投資家の方の話だと、セント・ジュード・メディカル社やメドトロニック社が参入してくる可能性があるとのことでした。当面は大丈夫だと思いますが、今から買うのは勇気がいりますね。ただ、この銘柄を調べたことで、何倍にもなる成長株はどのようなものなのかということが勉強できたので、次に繋げたいと思います。

それにしても特殊な医療器具メーカーの株価も凄く伸びてますね。いずれの株も保有していませんが、悔しい限りです。

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↑人工関節で有名なストライカー(SYK)

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↑歯科矯正器具のアラインテクノロジー(ALGN)

 

ABIOMED | Events and Presentations

↑アビオメッド社のHP(IR資料)

http://files.shareholder.com/downloads/ABMD/5381706153x0x923961/0ABD8080-F2F1-43A1-91C9-968F1E13F819/Abiomed_Corporate_Presentation_v_JPM_v_FINAL.pdf

↑参考にしたアビオメッド社の2017年1月のプレゼン資料

http://files.shareholder.com/downloads/ABMD/5381706153x0x951023/7AF18E46-FAE0-4704-B580-FC1D46EA53EF/Q1_FY18_Slides_v2.pdf

↑アビオメッド社の1Q2018の決算資料