Hang in the US MARKET

日本の将来を悲観して、あえて米国市場で頑張っています

【相場史】1929年の大恐慌の引き金となった大暴落

 

1.はじめに

newspicks.com

newspicksでこの記事を読むと、市場が繁栄する仕組みは今も昔もあんまり変わってないことに驚きました。物の売り買いの仕組みは市場という場がネットに移行しつつある現代でも、所詮人の営みですので、原理は時代が変わってもそう変わらないなと思いました。

 

それなら人の営みの最たる株式相場の歴史を勉強すれば、その知識はこの先も十分役に立つだろうと思い、昔買ったこの本を読み直してみました。

 

2.1929年大暴落の時代背景

(1)1920年代の米国経済

第一次大戦(1914〜1918)によるヨーロッパの需要に支えられて、米国では重工業を中心とした製造業が発展し、庶民の所得も大きく増えました。大戦後は豊かになった庶民の需要に支えられて自動車や住宅建築等の耐久消費財が主導となって高い経済発展を続けました。そして、経済NO.1の座がイギリスから米国へ移ったのもこの時です。

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↑赤線の間部分が1990年〜1929年までの米国の製造業生産指数の推移

※1929年の8月にピークを迎えていたことに注目

「1929〜33年政界大恐慌について」より引用

(S63年4月日本銀行金融研究所「金融研究第7巻第1号」)

https://www.imes.boj.or.jp/research/papers/japanese/kk7-1-5.pdf

 

(2)1920年代の米国株式相場

「大暴落1929」によると、それまで経済成長に合わせて株価は上昇していたが1926年に一旦調整局面を迎えたものの、1927年からの上昇相場が凄くてバブルへと向かっていったようです。イギリスが1925年に金本位制に復帰したためにポンド危機に見舞われ不況となり、ヨーロッパから米国へ金が流入する流れとなったため、イングランド銀行、ドイツ中央銀行、フランス銀行の3者からFRBは金融緩和を求められ、1927年にFRB公定歩合の引き下げを行い(4.0%→3.5%)、市場から大量の国債を買い入れました。そしてFRB国債を売ったお金は米国株市場へ流れたようです。

 

1928年になると米国株は力強く上昇するようになり、過熱する市場の話題が新聞を賑わすようになりました。またブローカーズ・ローン(株を担保に借りることができるローン)の金利が上昇していたため、ここにも貸し手としての資金が流れ込み、そのため信用取引も凄く盛んになって、ますます株価上昇に拍車がかかりました。このブローカーズ・ローンは安全で金利もいいということで、銀行だけでなく大手企業もお金を出資していたようです。まるでサブプライムローンのようですね。

 

更にヨーロッパで発明された投資信託が米国市場にも登場し、新しい金融商品として人気を博したそうです。レバレッジがかかったものや、債権と組み合わせてリクスを押さえたものなど沢山の投資信託が設定されました。

 

このように経済成長にともない株式市場も上昇を続けていたところに、金融緩和が拍車をかけて信用取引が活発になり、新しい金融商品である投資信託の登場も株式市場への資金流入を促進し、1929年の夏の相場は6月から8月のたった3ヶ月間で当時のタイムズ平均は$339から$449へ25%も上昇、GEは$268から$591まで上がりました。まさしくこの時バブルのピークを迎えました。

そして9月に入ってから相場はぎくしゃくし始めました。

 

3.暴落の引き金は何だったのか?

後から振り返ると、住宅建設は数年前から低迷を始めており、鉱工業生産指数と工場生産指数は1929年6月にピーク打って下降に転じていて、米国経済の景気後退がすでに起きていたのが原因とされています(金融研究だと8月となっていたが、本書だと6月と記載されていました)。

 

当時の経済指標がどれくらい後に発表されていたかは本書に記載されていませんでいしたが、当時の株式市場ではまだそのような話題はなく、1929年9月に入ってから、相場は不安定になり、同年10月24日(木曜日)に大暴落が起きました。経済のファンダメンタルズが低下しているのでは?という話題が出始めたのは11月に入ってからです。

 

9月頭が相場のピークで、その後フラフラと相場が下がり始め、投資家の間で不安が募り、10月24日から不安が爆発して、パニック売りになったようです。ただ、24日から一直線に下がったわけではなく、銀行による相場支えの大口の買いが入って持ち直したり、経済のファンダメンタルズは好調だという著名人の口先介入があったりして、相場が持ち直し、本格的なパニック売りになったのは翌週からです。

 

4.まとめ

この本を一冊読むだけでバブルの本質が分かります。経済のファンダメンタルズが上昇し続け社会全体が楽観的になり、更に上昇する相場に油を注ぐ要因が加わって相場が過度に上昇し、上昇が止まった?という不安が売りに繋がり、最後は怒涛の売りに見舞われる。

 

そして、バブルはそう簡単には起きないということも分かります。自分の国が世界No1になって高い経済発展が続くとか、住宅価格が永遠に上昇するとか、ITなど新技術の登場で経済が高成長を続けるとか、誰もが有頂天となる根拠がないとバブルは起きません。そしてそのような時代になるとストリッパーが投資目的で家を数軒所有しているとか、異常と思える話が聞こえてきます。こんな事は簡単には生まれませんので、過度に心配する必要はないと思います。

 

しかし、個別株で見るとバブルと同じように期待が過度に先行して株価が急上昇することはよくあると思います。1929年の大暴落も経済のファンダメンタルズがピークを打ったことが原因とされています。株価が急上昇している成長株も、成長のスピートが鈍化すると思われたら利確する人が増えますので株価は下がり、株価が下がると売る人が増えて増々株価は下がるというバブル崩壊と同じ動きをしますので、注意が必要です。そして、そういうニュースが出る前に株価が先に下げ始めることもあるので、多少のテクニカル分析の知識も役に立つと思います。大きな出来高を伴った下落は要注意ですね。

usmarket.hatenablog.com

 

投資小僧の金相場日記 史上最大の金融危機迫る

↑このブログに載っているブラック・サーズデーと世界恐慌1929〜1932年のチャートが当時の株価の推移を知るのに分かりやすいです。デットキャットバウンスが起きているので、自分なら大暴落後に買いに突入して、大損こいただろうなと、このチャート見て不安になりました。

 

jp.wsj.com

↑2014年のWSJの記事ですが、1929年の時代背景と相場状況を知っていると、チャートパターンが同じだから大暴落が起きるという論理に少し無理があるということに、気づくことができると思います。

↑重版を重ねている名著ですので、一度読んでみることをおすすめします。中古で買うととても安いです。

リーマンショック空売りして大儲けした人の話ですが、住宅バブルに気付いて空売りしてから、実際に下がり始めるまで時間がかかって苦悩するシーンが印象的でした。自分の判断が正しくても、自分の思うように相場は動かないですよね。