遺伝子解析時代の恩恵を受けるゲノム解読装置最大手イルミナ(Illumina ILMN)
(1)はじめに
雨の三連休にこの本を読んでいたら、面白そうな銘柄を見つけましたので、調べてみました。この本を読むと遺伝子解析の世界もこれからどんどん一般的になってきそうです。遺伝子解析のコストが昔に比べたらすごく下がってきています。
1990年に国家プロジェクトとして始められた「ヒトゲノム計画」は、日本、米国など6カ国が参加し、13年という年月と30億ドル(当時の為替で3500億円)の費用をかけてようやく人間の全遺伝子を解析することができました。
それが今では10万円程で解析できるようになったそうです。費用が安くなると遺伝子情報がどんどん集まります。また、インターネットやスマホ、ウェアブルなどの発達で、各個人の病気や体質、生活習慣などのデータも集めやすくなりました。この2つの情報が集まると病気や体質と遺伝子との関係解明がますます進みます。
イメージ的にはこんな感じです。そうなると遺伝子解析を行うことで自分の癌などの疾病の発症リクス度合いが、今よりもずっと正確に分かるようになりますので、自分の遺伝子解析を行うことがメジャーになってくると思います。
この本に載っていた遺伝子の違いによる例として面白かったのが、パクチーが好きな人と嫌いな人の遺伝子を比べると、嗅覚遺伝子の一部に違いがあるようで、OR6A2という遺伝子は石鹸の香りを感じることに関わっているらしいと言われている遺伝子のようですが、パクチーが好きな人と嫌いな人でこの遺伝子に違いが見られるようです。
この本の著者が経営している遺伝子解析サービス会社のHPを見ると、病気や体質など300項目を調べると、現在は5万円ほどかかります。この金額ではちょっと試しにやってみようかなとは思いませんが、ゲノム解読装置は一番高速でランニングコストが安いもので1億円ほどします(もちろんもっと安いタイプも沢山あります)。よって、解析サービスを受ける人が多くなるほど、費用が安くなりますので、もう何年もしたら随分と安くなるのではないでしょうか。
興味本位で自分の遺伝子を調べるだけでなく、もちろん診療分野での活用も研究されています。この記事を読むと国立がんセンターもイルミナの装置を使っているようです。このような形でゲノム解読装置は検査機器の一部として、大きな病院では当たり前のように配置される日もいずれ訪れるでしょうね。
(2)ゲノム解読装置製造メーカー「イルミナ」
現在、ゲノム解読装置メーカーの最大手はイルミナという米国企業です。
↑ゲノム解読装置は「シーケンサー」といいますが、一番安い装置で$49,500ほどします。下の記事では、右の一番高い装置($985,000)を用いると、いずれ$100で検査できると書かれていました。
また、イムミナはシーケンサー以外にもDNAチップも主力商品となっています。 売上に占めるDNAチップ関連の売上は約16%です(2Q2017時点)
(3)イルミナの業績の推移(過去5年間)
単位はミリオンです。売上は年率16%で伸びています。純利益は同25%の伸びです。
↑希薄後EPSの推移です。5年間で年率約22%で成長しています。
↑営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローの推移です。営業キャッシュフローも年率約19%のペースで順調に伸びてますね。
↑2008年からのPER(青線)とEV/EBITDA倍率(緑線)の推移です。データはモーニングスターから取りました。さすがに将来性が期待されるだけあって高PERが続いていますね。
(4)イルミナの今後の成長性
↑イルミナの売上構造ですが、装置販売よりも消耗品の売上比率が高いです。また装置の保守などのサービス収入も15%あります。これは装置を売って終わりではなく、販売先から継続的な消耗品の購入や保守サービスの依頼が期待できますので、ビジネスモデルとしては美味しいと思います。
↑現在では医療機関などの臨床分野よりも研究分野等での売上比率が高いです。「はじめに」で最後に触れたように、医療機関での活用が普及すれば、もっと成長する余力があります。
↑今後もEPSが+20%のペースで伸びた場合の5年後のEPSとPERを20倍から50倍まで掛けてみました。現在のPERは42倍です。9月19日の終値$204.95を基準として5年後の株価成長率を計算してみました。PER40倍のままでは、今から買っても割に合いませんね。
※2018年1月8日現在、TTMにおける希薄化後EPSは$5.26でかなり伸びてます。この数字をもとにしたPERで約43倍です(株価は$227)。
(5)まとめ
遺伝子解析の分野は解析コストが劇的に下がったこと、インターネットやスマホの普及により各個人の病気や生活習慣データが得られやすくなったことにより、遺伝子解析で分かる事や精度はますます高まると言われています。
よって、遺伝子解析はこれから一般的な普及が期待できます。どんどん普及が進んで装置が売れると、保守サービスや消耗品の売上が加速しますので、EPSの成長率はもっと伸びる可能性も十分あります。よって、こんな株価予想はあてにならないと思います。
リクスとしては中国が遺伝子解析に力を入れていることです。安価な装置の製造は中国のお得意芸ですので、ここが気になるところだと思います。
日本人も頑張っています。このように新しい技術革新もまだ起きる可能性は十分ありますので、そこら辺もリスクだと思います。
最後にイルミナの株価チャートです。
週足チャートになります。1年近く続いたボックス圏を抜けて来ていますが、このまま一つ上のボックス圏を形成するのでしょうか。万が一、再びもとのボックス圏に戻ってきたら、最悪$130まで下がる可能性もありそうです。どちらにしても、将来楽しみな銘柄だと思いますのでイルミナ(ILMN)はウオッチリストに入れておいて損はしないと思います。
イルミナHPファイナンシャルデータ
Financial Information | For Illumina (ILMN)
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