スクエア2017第3四半期決算 (Square Q3'2017)
まとめ
・YoY売上成長率は伸びている
22%(39%)→26%(41%)→33%(45%)
※( )内の数字は昨年スターバックスから撤退した影響を調整
した数字
・GPVは前年同期比+31%だが、成長率は四期連続ほぼ横ばい
・adjusted EBITDAマージン
前年同期比 7%→13%
前期比 15%→13%
・Net incomeは横ばい −16M
・トランザアクションベースの売上率と利益率は横ばい
・ガイダンスは前回に比べて引き上げられた。
調整後売上(YoY) 35%→41%
調整後EBITDAマージン 13%→14%
・売上に占める粗利率が高いサブスクリプションとサービ
スベースの売上は7%→11%に拡大(今年9ヶ月間の
前年同期比)→個人的にはもっと伸びて欲しい
※トランザアクションベースの売上の粗利率 36%
※サブスクリプションとサービスベースの売上の粗利率72%
(Instant Deposit, Caviar, Square Capitalなど)
・ Square Capitalの融資残高$303M(YoY+45%)
(前期は$318M)
・営業キャッシュフローは5.6倍に拡大
(今年9ヶ月間の前年同期比)
・翌日の株価はダウが$105安にもかかわらず、+3.46%
で引けた(最初下げたが、買い戻された)。
※Gurufocusのデータがまだ更新されてないので、グラフが作れませんでした。
https://s21.q4cdn.com/114365585/files/doc_financials/2017/3Q17/SQ_2017_Q3_Shareholder_Letter.pdf
↑スクエアのIRにあるShareholder Letter
https://s21.q4cdn.com/114365585/files/doc_financials/2017/3Q17/Square-2017-Q3-10Q.pdf
↑10Q
Mazor Robotics(MZOR)Q3’2017決算
内容(まとめ)
・EPS、売上は予想以上(PreMaket +2.283%)
・売上はY/Yで+125.4%
・四半期ごとの売上成長率
15.1%(7四半期連続)
13.6%(3四半期連続)
・Net Lossの減少は微減
・最大のコストである販売費の売上に占める割合は1年前に比べて
34%の減少
・Recurring Revenueの割合は41%で横ばい
・主力のMazorXの販売数、オーダー数は増加傾向
※ガイダンス等が発表されたら追記します。
↑Q3決算内容のデータソース
↑SeekingALPHAより
↑単位$1000
↑Mazor Coreテクノロジーを使うとフリーハンドでの低侵襲性脊椎固定手術に比べて合併症を5分の一、再手術を7分の一に減少させるとNorth American Spine Societyで発表された。
好決算でガイダンスが引き上げられても株価が下がったHubSpot その理由は?
1.はじめに
このブログで取り上げさせて頂いたマーケティング・オートメーションで有名なHubSpot(HUBS)が11月1日の引け後に決算発表を行いました。
SeekingALPHAによると売上、EPS(NonGAAP)ともに予想以上で、NonGAAPでは見事黒字化しました。
そして2017年通年のガイダンスが以下のとおり引き上げられ、株価は絶対上がるだろうという好決算でした。
引用元HubSpot Reports Q3 2017 Results | Seeking Alpha
今のTTM(Trailing Twelve Months)の売上が346Mですので、このガイダンスは素晴らしいと思いました。
しかし、翌日11月2日の株価は下落から始まり、その後盛り返しましたが、結局下げて終わり、翌11月3日も下げて終わりました。
好決算なのに株価が下がるケースがこのQ3では多いような気がしましたので、今回詳しく調べてみました。
余談ですが、いつもお世話になっている著名な医師兼個人投資家の方に触発されて年間$399払ってGuru Focusのプレミアム会員になってしまいました。四半期決算はもとより細かいデータが手に入るので今回詳細な分析をすることができました。便利なサイトですが、元が取れるか不安です(笑)(1年前だったら、年会費の何倍〜何十倍?もの利益が上げられたと思いますが、今から買ってもどうですかね?)
Value Investing | Market Insight of Investment Gurus
2.業績の推移
今回、四半期ごとの推移を細かく調べてみました。EPS以外の単位はMillionsになります。なお、今回HubSpot社はNonGAAPで黒字化しましたが、GAAPでは依然として赤字のままです。
↑売上(青)は6.7%のペースで伸びてますが、営業利益(緑)、純利益(黄)の赤字幅は少し広がっていました。
赤の折れ線は対前年同期比で比較した売上成長率です。
(%表示しているのですが、こちらにコピーするとなぜか元の数字に戻ってしまいます)
売上は伸びてますが、伸び率が加速しているわけではないことが分かります。
↑一般的に使用されるGAAPでの希薄後EPSの推移ですが、2期連続でマイナス幅がやや広がっている傾向が見られました。
↑営業マージン(青)と純利益マージン(緑)の推移ですが、改善傾向は見られませんね。
↑営業利益が黒字化しないのは、販売管理費が上がっているためで(特に販売費の影響が大きい)、Q3では伸び率が上昇していました。
※Gurufocusでは販売費と一般管理費の合計しか出てきませんので、販売管理費としてグラフ化しました。
↑売上に占める販売管理費の割合の推移ですが、今年3月の段階で約73%まで下がったのですが、ここ2期連続で微増しています。
↑新規顧客数(青)、1顧客当たりの売上(緑)、1新規顧客当たりのセールスマーケティング費の推移です。
新規顧客は2期連続でほぼ横ばいなのに対して、セールスマーケティング費が伸びているため、新規顧客一人当たりのセールスマーケティング費が伸びてしまってます。
また、顧客一人あたりの売上もほぼ横ばいです。もし新規顧客数が減少すれば頼みの売上高の上昇率が減少してしまうことになりますね。
↑一株当たりのフリーキャッシュフロー(青)と営業キャッシュ・フロー(緑)の推移ですが、1年前と比べてほとんど伸びてませんね。
3.まとめ
HubSpot社はSaaS(Software as a Service)のビジネスモデルで、一度顧客を掴んでしまえば毎月一定の売上が期待できるため、いかに新規顧客を掴むかが肝です。しかし、顧客獲得コストが上昇してきていますし、新規顧客数も拡大傾向ではありません。これはライバル競争が激しいことを表していると思います。
こうやって、決算内容を詳細に見てみると、ガイダンスとおりにEPSが伸びるのか不安になってしまいますね。それが、株価に影響を与えているのだと思います。
グロース株の場合、今は特にバリュエーションが高くなっている分、成長が鈍化したら売りの材料になりますので、ここらへんはシビアです。
↑Gurufocusではこのような比較が出来ますので、このブログで取り上げた赤字企業で比較してみました。
HubSpot社は赤字企業のバリュエーションの比較でよく用いられるEV/Revenue(赤線)も他社に比べて高くなく、Gross Margin(緑線)は一番良く、3year Total Revenue Growth Rate(3年間の売上成長率、水色線)も良いです。NonGAAPでも黒字化しましたし、この比較表を見ると思わず買ってしまいそうですが、ここは様子見ですね。
↑HubSpotの日足チャートです。今のレンジをキープできるかな?
アリババも決算良かったですが、その後売られてますし、最近グロース株に対して、見方がシビアになってきている?と感じています。
ここらが天井がどうか慎重に見極める時期に来ているのかな?と内心ビクビクしています(笑)。
空売りファンドに狙われ株価下落中のShopify株の行方は?
1.はじめに
私は決算が読めるようになるマガジンを購読しているのですが、先日Shopify(SHOP)が取り上げられており、収益モデルが素晴らしいと絶賛されていました。
そのShopifyの株価が、Citron Researchという空売りファンドに狙われ、10月に入った直後に株価が下落しています。これは絶好の買い場を迎えるかもしれないと思い、急遽ブログにまとめてみました。
↑Shopifyの日足チャート。50日移動平均線を割り込んでいますが、チャート的にはまだ本格的に空売りするタイミングではないと思います。
2.Shopify(SHOP)とは
北米版の楽天市場「Shopify」から学ぶEC版の月額課金+手数料モデル|決算が読めるようになるノート
↑こちらを読んで頂ければ、どういう会社でどういうビジネスモデルかよく分かります。無料で読める部分だけで、この会社の魅力を理解することができます。
3.Citron Researchが空売りした理由
以下のサイトによると、Citron Researchは10月4日にビデオメッセージでShopifyのビジネスを「Get Rich Quick Scheme(一攫千金を狙ったスキーム)」だと述べた上で、営業レバレッジが急速な売上成長のために小さく見えているので、株価のプライスターゲットが$60でも不思議ではないと指摘しました。
$60という数字は、Workday、セールスフォースドットコムなどのSaas企業と同じsale multiple(8.5倍)から導いたようです。それによって、株価は1日で$116から$104まで下落しました。
4.Shopifyの業績
↑単位はmillionsです。過去5年間の売上(青)、営業利益(緑)、純利益(黄)と粗利益率の推移です。売上は凄い勢いで伸びてますが、赤字幅は減っていません。TTMとはTrailing Twelve Monthsのことで連続した12ヶ月間の値です。この数字は本日、モーニングスターのHPから取り出したものですが、一昨日にQ3の決算発表の内容が含まれているかどうかは不明です。
↑希薄化後EPSの推移です。赤字幅が逆に増えてますね。
↑単位はmillionsです。営業キャッシュ・フローもまた赤字に転落してますね。
2017年9月30日時点でのバランスシート(単位は$1,000)ですが、上の赤マークが流動資産、下の赤マークが流動負債で、2ケタ違いますので、流動比率は問題ないです。今年は新株発行を行って株主資本も大きく増えています(緑の矢印)。バランスシートは強固ですので、赤字が続いていても問題なさそうです。
問題の営業レバレッジですが、手書きの数字は年初から9月30日時点での一般管理費(ピンク)、研究開発費(緑)、販売促進費(紺)の売上高に占める割合の推移ですが(Q2の数字を拡大したわけではありません)、合計で67%となり2016年の57%より上がってきています。売上の伸びは同じ9ヶ月間で+74%のペースで伸びており、過去5年間と同じペースで伸びていますが、2015年から2016年にかけての伸び率(+90%)は下回っています。Q3の決算発表後、株価は11%下落しました。
こうやって業績を見ていくと空売りしたくなる理由も分かります。
5.まとめ
営業利益の変化は以下の数式で表現できるようです。
営業利益の変化 = 売上の変化 × 営業レバレッジ
営業レバレッジが大きくなると営業利益の変化も大きくなりますので、まだ赤字企業である同社場合は特に気になるところです。
決算が読めるようになるマガジンでは、(有料会員しか読めない所で)営業レバレッジが下がってきているのも褒めていたのですが、今年は上昇傾向のようです。
スイッチングコストが高いので一度顧客を掴んだら、一定の売上+成功報酬(その顧客の売上が伸びたら取扱手数料も増える)でビジネスモデルとしては優秀だと思います。また売上の成長率は昨年よりも下がったとはいえ+70%台をキープしています。取扱高もQ3では前年同期比+69%でした。よって、SeekingALPHAのサイトに載っているレポートやそのコメントを見るとこの空売りは間違いだという意見が多いです。
成長株をトレードすると、このようなトラブルに見舞われることがあります。ここで売るか、所持したままにするか、判断に悩むところです。株価が何倍にもなる可能性も秘めてますので、そう簡単に売れません。今回のケースは経験値を高めるいい勉強になると思いますので、この株価の行方に注目したいと思います。ちなみに私は同社の株は持ってません。
Shopifyでネットショップを作ろう ー 世界シェアNo.1を無料トライアル
↑ShopifyのHP
https://investors.shopify.com/Home/default.aspx
↑ShopifyのIR
https://s2.q4cdn.com/024715446/files/doc_presentations/2017/09/Investor-Deck-Q2-2017-(1).pdf
↑Q2'2017の時のプレゼン資料
https://s2.q4cdn.com/024715446/files/doc_financials/2017/form-6k-Q3-2017.pdf
↑Q3’2017の決算
黒字化が視野に入ってきたMA(マーケティング・オートメーション)業界で注目されている米企業HubSpot(ハブスポット)社
1.はじめに
今回も著名な医師兼個人投資家の方から、マーケティングオートメーション(MA)で有名なハブスポット社がもうすぐ黒字化しそうで面白そうだよと教えて頂きましたので、調べてみました。売上は+35%のペースで伸びており、財務状況が今年に張ってから急激に改善してますので、11月1日引け後に発表予定の3Q決算が楽しみな会社です。時価総額が3.2Bしかありませんので、株価の動きは激しいと思います(笑)。
2.ハブスポット社(HUBS)とは
オンラインでマーケティングする際に、HPを始めとしてブログやSNSなど、さまざまなオンラインツールを使うと思いますが、見込み客を惹きつけてから顧客とするまでどうしたらいいのか、素人にはなかなか分からないですよね。それを以下のように一連のサービスをパッケージして提供している会社がハブスポット社です。
(出典:ハブスポット社のHP)
中小企業をターゲットに、どうしたら見込み客を集客でき、メールアドレスを得られるか、そしてどうアプローチして自社商品を勧めて、買ってもらうかを以下のようなパッケージにしてサブスクリプション形式で販売しています。
(出典:ハブスポット社のHP)
ハブスポット社は創業者であるブライアン・ハリガン(CEO)とダーメッシュ・シャア(CTO:最高技術責任者)の2人がマサチューセッツ工科大学(MIT)で2004年に知り合った後に、2006年6月に設立された会社で、2人が以下の本を出版して日本でも脚光を浴びることになりました。
以下のサイトに当時の状況が詳しく書かれています。
日本にも上陸。インバウンドマーケティングとHubSpotとは何か?
インバウンドマーケティングを調べてみると、これについて書かれたHPが沢山でてきて、今注目されていることが伺えます。
【図解】インバウンドマーケティングとアウトバウンドマーケティングの違い | プロモニスタ
インバウンドマーケティングとは? 5分でわかる総論と実践のポイント :: 株式会社イノーバ
池田ハヤト氏もブログで取り上げていました。
B2Bインバウンドマーケティング成功事例(Salesforce)—eブックのDL数は1万回以上 : まだ労働で消耗してるの?
大企業相手だとセールスフォースやオラクル、マイクロソフトなどとの競争が激しいので、ハブスポット社は中小企業をターゲットにしています。
日本だと大企業と呼ばれる会社が1万社程度に対して、中堅・中小企業は400万社もあると言われており、マーケットは大きいと思います。
↑ハブスポット社の売上は米国が70%を占めています。
顧客は90カ国で34,000あり、パートナー経由での販売もしており、そのパートナーは3,400社あります。日本では65%が直販、35%がパートナー経由での販売のようです。「インバウンドマーケティング 企業」で検索するといっぱい会社が出てきて、最初はライバル多いな〜と思っていましたが、これらの会社のHPをよく見るとハブスポット社のシステムを販売しているところが多くびっくりしました。
3.ハブスポット社の業績
↑単位はmillionsです。売上は年率+35%のペースで伸びていますが、まだ赤字が続いている状態です。粗利益率は右肩上がりで今は約80%あります。
↑単位はmillionsです。昨年より営業キャッシュフローがプラスになり、Q2’17までの連続4四半期(TTM)は営業キャッシュフローが大きく伸びてきています。フリーキャッシュフローもプラスに浮上してきています。
↑単位はmillionsです。支出では緑の販売管理費が大きく赤字の原因となっています。年率33%のペースで伸びています。
↑グロスマージンはQ1'17の段階で80%まで上昇しています。S&M(セールス&マーケティング)がコストの半分以上を占めていますが、徐々に低下してきています。営業マージンはQ1'17に+2%と始めてプラスになりました。
↑2017年6月30日時点でのバランスシートですが、流動比率も十分高くて負債は問題ないと思います。
↑半年前の2016年12月31日時点でのバランスシートです。比較すると今年になってバランスシートが非常に強固になっているのが分かります。
↑総顧客数の推移です。こちらは直近の4四半期の推移になります。+7.7%のペースで伸びています。
↑直近の4連続四半期の新規獲得顧客数(青の折れ線)、顧客一人当たりの売上高(緑の棒グラフ、無料会員も含む)、新規顧客一人あたりのセールスマーケティング費(オレンジの棒グラフ)をグラフにしました。
MAの世界もライバルが多いですので、今後も順調に顧客獲得を伸ばしていけるどうか、これを見るとちょっと不安になりました。
↑各四半期当たりの新規顧客一人あたりのセールスマーケティング費を顧客一人あたりの売上高で割った数字の推移です。新規顧客を一人獲得するのにかかった費用の回収期間を表しています。Q2'17で6.38ということは獲得コストを回収するのに6.38四半期かかりますということです。これも今後どのように推移していくでしょうか?
売上は順調に伸び、営業マージンもプラスになり、バランスシートもしっかりして、この企業は安定成長期に入ってきたと思いますが、この最後の2つのグラフからライバル競争が激しいことが伺えました。
4.株価の推移(11月1日訂正)
※当初アップしたチャートは間違ってshopifyのものでしたので、11月1日に訂正いたしました。申し訳ありませんでした。
↑週足チャートです。
↑日足チャートです。レンジを形成して推移してます。今度の決算が良ければ上振れしそうです。
11月1日引け後がQ3の決算発表です。Q2で発表されたガイダンスは右のオレンジになります。左右を比較すると前回の決算ではガイダンスが引き上げられていることが分かります。Q3はどうなるでしょうかね?
5.まとめ
創業者はインバウンドマーケティングという概念を提唱したMA業界ではリーディング企業の一つだと思います。今年になりバランスシートもしっかりし、営業マージンもプラスに浮上してきて、黒字化も視野に入ってきました。今年ベルリンに7つ目の拠点も開設しています。それに基づき株価も今年に入ってからブレイクし始めています。
しかし、ライバルも多いですので、成長をさらに加速させれるかどうか微妙な点も感じました。今後どうなるか静観したいと思います。
(Q2'17のEarning callで米国での顧客の伸びが低下しかことが質問されており、ヨーロッパやアジア市場がまだ始まったばかりで、海外拠点の設置(シンガポール、オーストラリア、日本、ドイツ、アイルランド)やソフトの多言語化(5ヶ国語)をすでに行っており、米国以外からの売上を伸ばすことに力を入れていく回答していました。)
HubSpot | Inbound Marketing & Sales Software
↑ハブスポット社のHP
HubSpot Inc. - Investors - Investor Overview
↑IRのページ
↑参考にしたプレゼン資料
手術ロボットのリーディング企業「インテュイティブサージカル」は安定成長期に入っている
1.はじめに
前回に続き、今回も手術ロボットの企業を取り上げます。Intuitive Surgical社(NASDAQ:ISRG)は手術ロボットの世界ではトップ企業で、その成長ぶりは素晴らしいですので、今回取り上げてみました。
2.Intuitive Surgical社と手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」
主力製品はダ・ヴィンチという手術支援ロボットです。内視鏡手術の発展型で腹壁に小さな穴をいくつか開けて、細いロボットの腕先を腹腔内に入れて処置を行うことができます。
da Vinci サージカルシステムの原型は、1980年代の後半に、米国陸軍と旧スタンフォード研究所において開発されました。当初は、戦場での手術を遠隔で行うシステムの開発を目的として資金提供を受けていましたが、民間での応用を目指したのです。技術開発によって、低侵襲手術の手法が加速度的により広範な手技へと応用されていきました。(インテュイティブサージカル社HPより引用)
このように開発の歴史は古く、今では意外に思うほど導入が進んでいます。
↑ダ・ヴィンチの導入状況。2017年6月30日時点ですでに4,149台が導入済み
↑導入数はU.S.がメインだが、今後ヨーロッパやアジアでの拡大が期待できそう。
↑患者数は右肩上がりで、この装置の信頼性を証明していると思います。もう一つの注目点は、現状の手術の適応部位は泌尿器(青色)と女性の生殖器(灰色)がメインとなっており、今後適用範囲が広がって一般的な手術(紺色)が伸びてくる可能性も期待できます。
↑利益面から見たこの装置の大きな特徴は、本体の販売よりもアクセサリーの売上がずっと大きく、サービスの売上も本体販売に肉薄してきています。これはジレットと同じビジネスモデルで本体が売れるほど、売上の伸びがそれ以上に加速することを意味しています。2016年においては売上の71%が本体以外からの売上です。
↑アクセサリーのカタログです。沢山の種類の手先(?)があってこれを色々取り替えて手術を行うようです。
3.業績の推移
↑売上ですが、アクセサリー(濃紺)の安定した伸びが特徴ですね。
↑単位はmillionsです。売上、営業利益、純利益の推移です。利益面では2014年の落ち込みが気になりますが、それ以降はこの2年間順調に伸びています。ちなみに2014年は前年のアクセサリーのリコールに伴う費用や当局からの罰金、日本に拠点を設けたことや第4世代のダ・ヴィンチXiを発売したことが関連していたようです。
↑売上高営業利益率(青線)と売上高純利益率(緑線)の推移です。2014年以降は利益率も順調に伸びています。
↑希薄後EPSの推移です。2014年以降は年率19%のペースで伸びてます。
↑今のPERは50倍近くあります。今後もEPSが年率19%のペースで伸びた場合の、PERが30倍、40倍、50倍の時の予想株価。
下は2017年通年のEPSを、この前発表された3Qの決算発表時のガイダンスから私が予想した数字($8.3)をもとに計算したものです。
一番右端の株価成長率は一昨日の株価$369.58をもとに計算した数字です。
4.まとめ
手術ロボットも技術革新が進み信頼できる製品が生まれてきて、昨年からこの分野も注目されて来ました。そしてロボットを販売して稼ぐという我々のイメージとは裏腹に、実際のビジネスモデルがRecurring Revenue Modelですので、安定的な成長が期待できます。PERが約50倍と高いのが難点ですが、これからもどんどん伸びていく分野ですし、安定感のあるビジネスモデルである点も考慮すると買ってもいいかなと思いました。
経常収益(Recurring Revenue)とは、企業の営業活動によって毎期に経常的・反復的に生じる収益のことです。特に経常収益はSaaSの会社によく見られることです。予測がつきやすく、一定の積み重ねが期待できることから、金融市場で評価されやすい指標です。
↑週足チャート
インテュイティブサージカル合同会社 - ダヴィンチ サージカル システム
↑会社のHP
Intuitive Surgical - Investors - Investor Relations Home
↑IRのページ
↑参考にした2017年のinvester dayのプレゼン資料
https://seekingalpha.com/news/3302357-intuitive-surgical-beats-0_78-beats-revenue
↑この前発表した3Q2017の決算(予想以上の結果であった)
これは凄い!と思った脊髄手術ロボットのメーカーMazor Robotics
1.はじめに
手術ロボットの分野も技術革新が進んで、今後実用化されるロボットが増えてくると言われています。インテュイティブサージカル社(ISRG)が長年マーケットリーダーでしたが、Stryker、スミス・アンド・ネフュー、ジョンソン・エンド・ジョンソン、メドトロニック、Zimmer Biometのような大企業がこの分野に参入してきています。
その中で脊髄という重要な神経が通っている背骨の手術を補助する装置を作っているMazor Roboticsが昨年改良版の新型機を発売し、株価が上昇しているとの情報を医師兼個人投資家の方から頂きましたので、調べてみました。
2.Mazor Roboticsと新型機Mazor X
(1)Mazor Robotics社
Mazor Robotics社はイスラエルの企業で、2001年に設立されました。デリケートな器官である背骨の手術における補助装置の開発を進め、2004年に最初の製品「SpineAssist」を発売しています。これは世界初の脊髄手術におけるガイダンスシステムでした。ガイダンスシステムとは例えば、背骨にピンを刺す時に刺す位置や角度をガイドするシステムのことです。2011年に後継機Renaissance® Guidance Systemを発売し、FDAに承認されました。そして、2016年10月に新型機Mazor Xを発売しました。それに先立つ2016年5月に
160カ国に拠点を持つ医療機器開発・製造・販売企業大手Medtronic社と販売委託契約を結び、さらに大口の出資も受けました。これがMazor株がブレイクするきっかけとなっています。
↑Mazorの週足チャート、2016年5月(赤矢印)から株価がブレイクしている。
(2)新型機Mazor X
↑背骨にインプラントした画像ですが、Mazor Xはこれをする際にスクリューを刺す位置と角度と決めてくれます。背骨の中には脊髄という太い神経が入っており(骨の中の空洞になっている部分)、しかも背骨の側面には一定間隔で穴が空いており、脊髄から分岐した神経がその穴から出て各臓器や筋肉などに繋がっています。よって、背骨にスクリューを刺す際にはこれらの神経を避けて刺さなければなりません。しかもこのような手術をする症例は、背骨が著しく湾曲した人や奇形など通常の状態ではない患者も含まれます。これは凄い器械だなと素人考えですが思いました。
↑このリンク先のHPにMazor Xの動画があります。4分半ありますが、これを見るとこのロボットの凄さがよく分かります。
↑この装置を使うと、左から入院日数が27%減、合併症の発生率が48%減、再手術が46%減、術後合併症が減ったとうデータがMazor社のHPで紹介されていました。
Mazor社は設立当初からこのロボットの研究をして技術とノウハウを積み重ねここまで来ました。
↑2010年からの販売実績(累積)です。これらの装置には手術ごとに使い捨てのキットを使用しますので、販売台数が増えるとそのキットの売上も上がることになります。これは大きなポイントだと思います。
↑稼働してる装置1台あたりの年間手術患者数ですが、順調に伸びてます。この装置の信頼性を裏付けていると思います。
3.Mazor社の業績
↑単位はmillionsです。過去5年間の売上、営業利益、純利益の推移です。売上は順調に伸びてますが、赤字が続いています。
↑過去5年間の希薄後EPSの推移ですが、順調に赤字幅が減っている訳ではありません。
↑こちらの単位はthousandsです。過去6四半期の業績の推移です。
2017年1Qの売上がやや落ち込んでいますが、これはMedtronic社へ卸すMazor Xの価格を下げたためのようです。
↑営業費用の内訳で単位はthousandsになります。販売費を半分に下げれば、黒字になるのですが、大型の医療装置ですので、営業はもとより情報提供などのサポートがどうしても必要で、そう簡単に減らせそうにありません。ちなみに販売ルートは直販とMedtronic社経由での販売の2つのルートがありますが、Medtronic社経由の方が多いです。
↑青の消耗品サービスは手術ごとに使い捨てるキットやメンテナンスなどの売上を表しています。調べてませんが利益率もこちらの方が高いはずです。
↑期待のMazor Xの販売数の推移です。
↑Mazor Xだけでなく他の装置も含めた全体の受注数の推移です。2017Q1は決算資料にその数字がなかったので空白です。
↑受注残の推移です。これらの販売状況をみると、これからバンバン売上が伸びますという感じではないですね。このような装置の宿命だと思います。
↑2017年6月30日現在の賃借対照表、赤囲みが負債で青囲みが自己資本
自己資本比率は77%、Total current aseetsと比較した流動比率は3.9倍で借金は問題ないと思います。
4.Mazor社の株価
↑こちらは日足チャートになりますが、最近気になることがありました。
赤の矢印のところで、この10月9日は2017Q3決算(11月7日)の事前発表があって売上が〜17.2M、22システムを受注、受注残は17システムと寄り付き前に発表されてプレマーケットで株価が+9%まで上がりましたが、ザラ場では値を下げて上髭が長くなっています。
青の矢印の所で+6%台の上昇を示した後、相場の地合いは良かったのに次の日は大きく売られました。昨晩もダウは160ドルも上昇したのにMazor社の株は売られてます。この最近の株価の動きは気になるところです。
5.まとめ
メドテック・カンパニー・オブ・ザ・イヤー 2016 | Medtec Japan
↑こちらの7番目にMazor Xについて紹介されており、以下その一部を抜粋したものです。
2016年、ロボットの分野は、多くの競合がマーケット・リーダーであるインテュイティブサージカルに対抗しようと盛んに参入し大流行となった。なかでもイスラエルを拠点とするMazor Roboticsの活躍が目立った。
Mazor Xは10月末に販売開始を予定しており、Wells FargoのアナリストのCraig Bijou氏は、同システムが今後、頚椎後方固定術や経皮的仙腸関節接合のような術式にも使えるようになると予測している。
この装置はいずれ脊髄周囲の外科手術で広く用いられるようになると思います。そして当然、同様の装置を作っているライバル企業もあります。
↑medtech社のHPより
medtech社も同様の装置を開発しており、ことし7月に大手医療機器メーカーのZimmer Biomet社に買収されました。Zimmer Biomet社も販売力がありそうな大きな企業ですので、この先少し心配ですね。ただ、今までの実績(患者数、導入された病院数、文献の数)はMazor社の装置の方が上回ってます。
Mazor社の売上は、今後も順調に伸びていくと思います。営業費用はなかなか削れそうにもなさそうですので、あと20M売上を伸ばして黒字化する感じでしょうか。本体以外のキットなどの売上の伸びが加速してくれば、黒字化は早まると思います。
投資家目線での最終ゴール(売り時)はどこかに買収されて株価が跳ね上がった時だと思います。ただ最近の株価の推移を見ていると、一波乱ありそうな感じも受けました。
最初、サラッとこの会社のプレゼン資料を見た時に、株価も上昇ステージもまだ若そうですし、思わず勝負に出ようかと思いましたが、いろいろ調べてみると、販売数の伸びが思ったほどでもなくて、今後の株価の大きな上昇を裏付ける数字がなかったです。これが、この手の装置の特徴だと思いますが、何回かに分けて慎重にエントリーしたいと思います。
その他参考にしたサイト
We believe in healing through innovation.
↑Mazor社のHP
↑Mazor社のIR
https://www.mazorrobotics.com/images/Corporate/Mazor Robotics_Corp_web_0817.pdf
↑2017年8月のMazor社プレゼン資料
↑2017Q2のearnings callのトランスクリプト
↑ライバルのmedtech社のHP。HP比較ではMazor社の方が断然よく出来ています。
軍用情報通信システム企業 ハリス・コーポレーション(HRS)
(1)はじめに
トランプ大統領誕生で軍需産業の株も盛り上がり始め、最近は北朝鮮情勢の緊迫も相まって、一段の盛り上がりを見せています。
私は社会情勢に左右される軍需産業株は手を出したことはないのですが、このたびママさん投資家様からリクエストを頂きましたので、調べてみました。
(2)Harris Corporation(HRS)とは
↑お時間のある方は、この約3分ほどの映像を見て頂ければハリス社のことがよくイメージできます
ハリス社は軍隊などが使用するトランシーバー等の無線情報通信システムから航空機の管制システム、また通信衛星も含めた幅広い通信システムなどの特殊な情報通信システムを構築する会社です。軍隊や情報機関での使用用途が多いですので、顧客のメインは国の国防省や各機関になります。
売上の構成はバランスよく3つのセグメントに分かれています。Communication systemは軍隊向けや消防や警察など向けの無線情報システムと暗視スコープなどもここに含まれるようです。このセグメントの売上は年間$1.8Bです。
↑暗視スコープ
Electronic Systemsは電波に関連した軍隊が使用する様々なシステムを構築しているようです。軍事作戦を遂行するにあたって必要な情報伝達システムの他、素人には分かりにくい特殊な用途のものを色々作っているようです。また、航空管制システムも作っています。このセグメントの年間売上は$2.3Bです。
Space&Intelligence Systemsは通信衛星のデータを受信して活用する一連のシステムを提供しています。気象衛星の観測データを受信したり、環境測定やGPSのデータを活用したり様々なシステムを開発しています。このセグメントの年間売上は$1.9Bです。
(3)ハリス社の業績の推移
↑単位はmillions
2016年に売上が一段と上がっているのはExelisという防衛エレクトロニクス企業を2015年に買収して、その売上がプラスされたためです。その後子会社の売却等を行ったので2017年は売上が下がってます。その子会社の売却等の影響を除いた2016年の売上は$5992Mなので、2016年→2017年の売上減は$92Mになります。
↑過去5年間の希薄後EPSの推移ですが、こちらの数字は2016年の売上が$5992Mの方で計算されています。右肩上がりではないですね。
↑キャッシュ・フローです(単位はmillions)
↑過去10年間のROAとROEの推移です。リストラクチャリングしてこの先安定するでしょうか?
(4)ハリス社の株価の推移
↑オレンジ線はS&P500になります。2016年5月くらいから市場平均をアウトパフォームし始め、トランプ政権誕生でブレイクし始めています。
↑過去10年間のPERの推移です。
(5)ハリス社の今後の見通し
以下、今年の8月1日のInvester dayのプレゼン資料よりハリス社の今後の見通しを並べます。
↑18年度の見通しは売上で前年比3〜5%アップを予想しています(Space Intelligence Systemセグメントは〜1%)。
↑緑の矢印が伸びる見込みの部門ですが、中期的には全体的に伸びて行く予想をしてますね。
このプレゼン資料は細かく今後の見通しが載っており、興味のある方は見ていただきたいのですが、北朝鮮だけでなくISのテロの問題もありますし、中東情勢も一部緊迫してますので、各国のこの分野への支出は今後増える見込みのようです。
https://www.harris.com/sites/default/files/4q17_marketing_book.pdf
(6)まとめ
特殊な分野のリーディング企業でワイドモートを持っていると思いますが、過去の業績は右肩上がりではありませんので、過去の実績から今後の業績を予想することはできません。業績は各国の防衛支出等の動向如何によると思います。
リーマンショックでアメリカの力が落ちたために、世界的は北朝鮮とかISによるテロとか何かと不安定化してますので、各国の防衛支出の伸びは期待でき、業績の伸びは続くと見込まれています。株価の動きがそれを表していると思います。
個人的な意見としては、ROEが安定して高い所をキープできるようになれば、長期保有の対象となるかもしれませんが、どの国も財政難に悩んでいますので、防衛支出が安定して伸びて行かない可能性もあります。中長期的には買いづらい銘柄ですね。
↑ハリス社のIR
画期的な医療機器を発売して株価7倍になった人工心臓の老舗アビオメッド社(ABMD)
(1)はじめに
医療機器の製造会社は利益率が高く、不況にも強い成長銘柄だと思っていますが、その中でも体内埋込み型の医療機器や医療器具の製造会社は成長安定度が高いと思います。配当が低いのが欠点ですが、何かと懸念事案が発生する製薬メーカーよりもこちらの方が長期保有に向いているような気がします。
有名な医師兼個人投資家の方から人工心臓の老舗アビオメッド社(ABMD)が画期的な新製品を出して面白そうだよ、と教えて頂きましたので、今回調べてみました。
(2)アビオメッド社とは
ABIOMED Inc. は、人工心臓の開発を目的とし、マサチューセッツ州ダンバースに1981年に設立され、1990年代から体外式補助人工心臓(VAD)や埋め込み式の人工心臓の開発、製造ならびに販売を行い、2004年よりヨーロッパ、2008年より米国において、IMPELLA(循環補助用心内留置型ポンプカテーテル)の販売を開始し、その普及に努めてまいりました。(日本アビオメッドHPより引用)
アビオメッド社は2006年に世界初の体内埋込み型人工心臓を発売した、人工心臓のリーディングカンパニーです。この人工心臓はグレープフルーツ大の大きさで、バッテリーだけ体外に出して体に括り付けておくだけの装置なので、今までどおりの生活をすることができる画期的な製品でした。
今回アビオメッド社はImpella(インペラ)という補助循環用ポンプカテーテルを発売し、株価が3年間で7倍になりました。このポンプカテーテルは、カテーテルの中にスクリューが入っていて血液を送り出すことができます。形はカテーテルなので開胸しなくても大腿動脈等から血管内を通して心臓内部へ挿入することができるのが画期的です。
↑アビオメッド社HPにインペラの機能を紹介した動画(30秒ほど)があります。これを見れば一目瞭然でどんな商品か分かります。
心筋梗塞は心臓の冠動脈がコレステロールなどの蓄積で狭窄して、血流障害が起きることで生じますが、この狭窄部分を広げる手術もいまはカテーテルで行います。この手術を行う時に心臓機能を補助するために使われたりします。また、一般的に心臓発作中またはその後に発生する命に危険を及ぼす心原性ショックの治療や心肺バイパス手術後の使用にも承認されているようです。
日本では2017年9月に発売開始されましたが、この記事を読むと外科医の先生達からは大きな期待が寄せられているようです。
日本アビオメッド、IMPELLA補助循環用ポンプカテーテルの保険収載と販売開始を発表|日本アビオメッド株式会社のプレスリリース
このアビオメッド社のインペラが日本で承認された2016年には補助人工心臓治療関連学会にインペラ部会が設立されています。それほどこの商品が画期的だということが言えると思います。
インペラ部会について : 補助人工心臓治療関連学会協議会 インペラ部会
(3)この装置の市場はどれくらいの規模なのか?
アビオメッド、インペラ心臓ポンプで治療を受けている患者が米国で5万人を突破 Nasdaq:ABMD
こちらの記事によると、以下のとおりあり、心臓病大国アメリカでは結構ニーズがありそうです。
心不全と冠動脈疾患は米国における死因の第一位として3分の1を占め、毎年90万人近くの死因になっている1。心不全の蔓延は現在570万人のアメリカ人に影響しているが、2030年までにはその数がさらに46%増加すると予想されている1,2。これまでに米国で5万人の患者がインペラで治療を受けたが、インペラはPCI症例のほんの1%のみで使用されているだけであり、心原性ショックで複雑化したAMI患者のうちの10%未満の使用にすぎない。したがって、何万人もの患者は未治療のままであり、インペラの使用によって医師が提供できる処置オプションについても知られていない可能性がある。
↑アビオメッド社のプレゼン資料によるとインペラ適応可能な患者が米国で22万1千人(2015年)おり、現在ではその7%に用いられているそうです。まだ用いられているのは一部だけのようですね。
↑インペラを使用している病院数です。下の2.5や5.0、CPは数種類あるインペラの商品名を表しています。合わせて1400の病院で使用されています。
↑日本では今年9月に発売され始めました。これを見ると新興国では中国のみ承認されているようです。新興国でも心筋梗塞の原因となる肥満が問題となっているので、マーケットのポテンシャルは大きそうです。
(4)アビオメッド社の業績
2016年度(日本だと2015年度に該当)にFDAで承認されてから、売上成長が加速しています。
営業利益も2016年度に大きく伸びてます。負債はゼロです。
単位はmillions
↑売上、営業利益、純利益の推移。インペラが承認されてから売上高営業利益率が20%に上昇しています。
↑希薄後EPSの推移です。2015年度は税金の引当金を戻しているため純利益が嵩上げされていましたので参考になりません。実質2016年度から大きく伸びはじめていると思います。
(5)アビオメッド社の株価とPER
↑週足チャートです。2014年10月27日からブレイクしはじめ、株価は$24.3から$173まで上昇してますので、グロース株の醍醐味を体現しているチャートです。エヌビディアも株価は今6倍になってますが、こういう株を当てたいものです。
↑過去5年間のPERの推移です。2015年は特別要因で純利益が嵩上げされてましたので、一時的に下がってますが、高いPERが続いてます。2014年にPERが高いからと購入を躊躇していると、この7倍銘柄を取り損ねることになりますので、成長株はその勢いに思い切って飛び乗ることが大事ですね。勉強になります。
(6)まとめ
画期的なこの手の製品には当然、他社も参入してくると思います。この銘柄を教えてくれた医師兼投資家の方の話だと、セント・ジュード・メディカル社やメドトロニック社が参入してくる可能性があるとのことでした。当面は大丈夫だと思いますが、今から買うのは勇気がいりますね。ただ、この銘柄を調べたことで、何倍にもなる成長株はどのようなものなのかということが勉強できたので、次に繋げたいと思います。
それにしても特殊な医療器具メーカーの株価も凄く伸びてますね。いずれの株も保有していませんが、悔しい限りです。
↑人工関節で有名なストライカー(SYK)
↑歯科矯正器具のアラインテクノロジー(ALGN)
ABIOMED | Events and Presentations
↑アビオメッド社のHP(IR資料)
↑参考にしたアビオメッド社の2017年1月のプレゼン資料
↑アビオメッド社の1Q2018の決算資料
バークシャーも少し株を所有している損保向けデータサービス会社べリスク・アナリティックス(VRSK)
(1)Verisk Analytics(VRSK)はどんな企業
データ分析によるリスク管理の分野で最先端を行く企業で、米国の損害保険会社を主な顧客としています。アクチュアリー(保険数理)分析に利用できる様々なデータを多数保有し、全米TOP100に入るすべての損害保険会社と取引関係があると言われています。
損害保険会社が必要なデータは多岐に渡ります。ハリケーンで住宅が多数損害受けた場合、保険金額を算出するにあたって、これくらいの修理だといくらかかるのか知っている必要がありますし、また自然災害の発生動向から将来必要な保険金額を算出して保険料を決めたり、保険会社は多くのデータやリスク予測などの情報が必要で、べリスク社はこれら必要な情報を提供しています。
15年にエネルギー資源開発会社に様々なデータを提供している英ウッドマッケンジー社を買収しています。そして、5年前にArgus社を買収して最近は金融分野のデータサービスに力を入れています。
↑この会社の特徴は様々な会社を買収して、自社の提供できるデーターを増やしています。最近では航空機で地形のデータを採取して3D化する技術をもった会社を買収していました。この円グラフから、最近は金融分野の買収に力を入れていることが伺えます。
↑左の円グラフは2Q2017の売上の内訳ですが、濃紺部分が損害保険向けサービスの売上で73%を占めています。エネルギー資源向けサービスが21%、金融向けサービスはまだ6%となっています。金融向けサービスの売上が今後どれだけ伸びてくるかがポイントになります。
右の円グラフによるとサブスクリプションが82%を占めていて、安定した売上が期待できます。
ちなみにこの会社はKBW Nasdaq Financial Technology Index(通称Fintech指数、テッカーシンボルKFTX)の49社の一つに、マスターカード、VISA、ペイパル、スクエア等と並んで選ばれています。
こちらのサイトによると2017年6月現在でバークシャーが保有する株に占めるべリスク社株の割合は0.1%だそうです。
(2)過去5年間の業績の推移
単位はmillions(データはモーニングスターより取得)
↑2016年は売上が落ちましたが、純利益は順調に伸びています。
↑しかし、べリスク社のスライドだと売上右肩上がりです。どちらが正しいのでしょうか?また、この会社は企業買収を毎年多数してますので、借金もあります。2017年6月30日現在でトータルデットは2.4Bあります。格付けはムーディーズでBaa3、S&PでBBB-です。
↑2017年3月31日現在のトータルデットは2.3Bで、Debt/EBITDAは2.2倍でした。トータルデットは3ヶ月で100M増えてますね。
↑過去5年間のキャッシュ・フローの状況ですが、黄色のフリーキャッシュフローもプラスで、緑の投資キャッシュ・フローも節度ある問題ないレベルであり、Debtについては問題ないと思います(10月13日に追記)。
↑希薄後EPSは順調に右肩上がりで、年率12.44%のペースで増えてます。
↑情報サービス会社ですので、売上高EBITDA比率が約50%あります。
(3)株価の推移
↑週足チャートです。2016年5月ごろからボックス圏を形成しています。
↑利益率がいいので高いPERが続いています。
PERの高さを考慮すると、新たな材料がでないと、一つ上のレンジに上がれなさそうですね。
↑過去5年間のEPS成長率約12%をもとに、今後5年間も同様の成長率をキープした場合のEPSと各PER(20倍、25倍、30倍)の株価。一番右の5年間成長率は、10月11日の終値$83.36で計算した場合 の株価の成長率。PER25倍をキープしてくれたら、今からでも買う価値が十分ありそうです。でも個人的には、今回はチャート重視で行きたいと思いますので、もし買うならレンジを抜けて$86のラインがサポートラインになったのを確認してから買いたいと思います。
(4)まとめ
堅調な相場とは裏腹に、株価は長い間ボックス圏を形成しています。このボックス圏を抜けるためには、業績の伸びを加速させる必要があります。キーは金融サービス分野だと思います。2017年2Qのアーニングコールによると、5年前にArgus社を買収してから平均17%の割合でこの分野は成長してきましたが、今期は一部の企業との契約切れが生じたため昨年に比べて売上が9.3%下がったそうです。売上に比べて多額の買収をしてレベルアップを図っている金融サービス分野を今後どれだけ伸ばしてこれるか、注目していきたいと思います。べリスクサイドではFintellixとG2というサービスに期待しているそうです。
↑2017年9月14日のべリスク社によるプレゼン資料
Verisk Analytics | Better Decisions About Risk
↑べリスク社のサイト
Financial Services | Verisk Analytics
↑べリスク社の金融サービスのサイト
この銘柄は、ツイッターでブログに書くネタがないと嘆いたら、有名な個人投資家の方が、わざわざ参考資料まで添付してこの銘柄ワイドモードがありそうだよと教えてくれました。ありがとうございました!