GEについて(その1)
1.はじめに
GEが3Q決算で大幅な赤字と減配を発表し、株価が9%下がりました。その後もJPモルガンが目標株価を$6と発表して株価が5.7%下がり、11月9日終値で株価は$8.58となっています。私も決算後、$9.99でエントリーしましたので、現在−14%の含み損です。
これから年末に向けて、税金対策で損切りが増えてくる時期になりますので、サプライズニュースが出てこない限り、なかなか上がることが無いかもしれません。
この間に、更に買い増しをするかどうか判断するためにGEに関する情報をチェックして、ブログにまとめて行きたいと思います。
2.これまでの業績の推移
とりあえずGEキャピタルは除いて、メインの工業部門について2017年のアニュアルレポートから数字を拾ってグラフを作りました。
(1)工業部門の売上
↑工業部門のセグメントごとの売上の推移。2017年までは売上に関して問題は無かったです。
↑問題の今年の状況です。3Qまでの9ヶ月間の売上を昨年の同時期(左)と並べてみました。
一番下の青のPOWER部門は売上が下がってますが、真ん中の黄色のOIL&GAS部門の売上が伸びていて、売上は前年比で少し増えてますね。
↑分かりやすいように売上増減率をグラフ化してみました。POWERを始めとして、4部門で売上が下がってますね。
(2)工業部門の利益
↑昨年はPOWER部門(青)とOIL&GAS部門(黄)の利益が大きく下がってました。
↑今年のこれまで9ヶ月間の状況です。下の青(POWER部門)が見事につぶれてますね。
※この数字は3Q決算の10Qから拾ってきましたが、2017年のLIGHTING部門の数字が何故かはいってませんでしたので、抜けています。
↑10QではSegment profitと表現されていて、多分営業利益のことを指していると思いますが、その前年同期比の増減率をグラフにしました。
(3)各部門の利益率の推移
※ここの利益率の数字は、2017年アニュアルレポートp6〜7に載っている各部門のRevenuesとProfitの数字から計算したものになります。
↑2015年から2017年までの、各部門における利益率の推移。
点線のPOWER部門(青)とOIL&GAS部門(黄色)の下落傾向が目を引きます。
↑今年の9ヶ月間の状況です。3Q決算で発表された10Qに出ているセグメントごとのREVENUESとPROFITから計算した数字になり、10Qに載っているSegment profit marginと異なります(若干の違いしかありませんので、問題ないと思います)。
右肩下がりはPOWER(青)、RENEWABLE ENERGY(緑)OIL&GAS(黄)の3部門です。
(4)キャッシュ・フロー(CF)
↑2015年からの営業CFの推移です。2015〜2017年は2017年の10Kに載っているNonGAAPの数字を、2018年の数字は今回の10QにNonGAAPの数字が見当たりませんでしたので、GAAPの数字を参考までに入れました。
青の「工業部門」からのCFに加えて、主にGEキャピタルからの配当が含まれる「その他」からの寄与も大きかったですね。GEキャピタルは業務縮小中で、2017年から配当が少なくなり、今年は今のところ赤字ですので、配当無しになってます。また、将来的にも配当は期待できないと10Qに書いてありました。
↑参考までにGEキャピタルからの配当の推移
↑フリーCFの推移です。こちらは2018年の数字(今年9ヶ月間)もNonGAAPになります。
↑配当支払額の推移です。
2017年で見れば、GEキャピタルからの配当$4Bを差し引くと、GEは正味$4.4Bの配当を出していたことになります。
配当銘柄の中には、業績が苦境に陥ったら借金してまで配当を維持するところがありますが、GEは早々とギブアップしましたね。
↑バランスシートの長期負債額の推移(GEキャピタル分は除く)
今年の3Q時点では減ってました。
(なぜ、2015年に負債が$70Bも増えているのかは、2015年の10kを見てもよく分かりませんでした)
でも今振り返ると、この年は2001年来からGEの利益に多大な貢献してきたGEキャピタルの事業縮小決定と、今、大きく足を引っ張っているPOWER部門の拡大を狙ったAlstom社の買収完了とで、今の醜い株価を招いた節目の年でしたね。
次から、問題の部門のPOWERとOIL&GAS部門、あとGEキャピタルについて調べて行きたいと思います。
https://www.ge.com/investor-relations/sites/default/files/GE_AR17.pdf
↑2017年アニュアルレポート(10k)
https://www.ge.com/investor-relations/sites/default/files/ge_webcast_10Q_10302018.pdf
↑2018年3Qの10Q
↑キャッシュ・フローの基本を知りたい方におすすめ。今回、GEを調べるためにハワードマークスの新刊を読むのを後回しにして、こちらを再読しましたが、新たな気付きがたくさんありました。
先週、JPMが目標株価を$6と発表した時に、GEは「ファンダメンタルズ的に強い」と声明を出しました。今回のブログを書くにあたって10kや10Qをいろいろ見ましたが、この本に書いてある倒産前の兆候をチェックしたら、確かにまだまだ問題ないと思いました。
↑キャッシュコンバージョンサイクルの延長はなく、逆に抑えて来てますね。(データはgurufocusより引用)
↑支払いを伸ばす兆候もまだ大丈夫な感じです。
Amazon 3Q2018決算の詳細 ガイダンスが厳しいですね〜
1.はじめに
Amazonの決算発表について、データをまとめました。結論から言うとガイダンスが厳しいですね。ホールフーズ買収の関係で、前年比成長率の鈍化が予想されていましたが、今まで順調に伸びてきた営業利益率が低下するのが痛いです。ここ1年位は非常に大きな成長率を叩き出してきたAmazonですが、しばらくは他の成長株と同じレベルの成長率に留まる感じがします。果たして投資家達はどれだけのバリュエーションが適正だと判断するのでしょうか?
私は手放したりはしませんが、Amazonの買い増しはしばらく控えます。
2.業績の推移
(1)全体
↑四半期ごとの売上(黄)、営業利益(青)、純利益(緑)の推移
↑四半期ごとの営業利益(青)と純利益(緑)の推移
Q4 2017より大きく伸びてきてますので、次の決算は成長率の点から見るとハードルが高いです。
(2)セグメント別
↑セグメントごとの売上の推移
↑セグメントごとの成長率の推移。本業のEC事業(青)とマーケットプレイスのThird-party seller services(黄色)の低下が気になります。
↑セグメントごとの売上の推移をそれぞれ棒グラフにすると、青のホールフーズ等の実店舗以外は右肩上がりで成長しています。
↑利幅の高いオンラインセールス以外の売上が全体に占める割合の推移。今回は横ばいでした。
(3)地域別(AWSの売上を除く)
↑北米地域の売上高と営業利益の推移
↑Internationalに区分される地域の売上高と営業利益の推移
現在、アメリカ、カナダをはじめ15の国で営業を展開しています。
(カンファレンスコールでは17と言っていましたが、HPを見ると15になっていました。今季からトルコで営業を開始したようです)
↑それぞれの売上成長率の推移
今回Internationalの売上が芳しくなかったのは、インドでDiwaliというお祭りが昨年は3Qに行われたのが、今年は4Qにずれたためということです。
ディーワーリーの期間中は買物をすると縁起が良いとされ、特に耐久消費財の需要が伸張する。自動車、家電業界などではこの時期をかき入れ時として販売に力を入れる(wikipediaより)
↑総売上高に占めるInternational地域の売上割合の推移です。北米地域で成長鈍化の兆しが見えてきてますので、今後Intarnationalに頑張ってもらいたいところです。
3.問題の4Qガイダンス
売上:$66,500〜72,500M
営業利益:$2,100〜3,600M
このガイダンスの各中央値をグラフに落とし込むとこんな感じになります。
↑売上高成長率が15%へダウン
↑営業利益成長率が34%へ大幅ダウン
↑今まで順調に伸びていた営業利益率と純利益率の推移
創業以来、利益度外視で頑張って投資してきた努力が実って、各利益率が上昇していたのがAmazonへ投資する魅力だったのですが、Q4のガイダンスによると、大きく下がってきてしまいますね。
(2018.10.28追記)
過去2年間を見ると、Q3からQ4へかけて大きく利益率が上昇する傾向が見られましたが、今回は逆に下がってしまいます。クリスマスシーズンでEC部門の売上が伸びて、この部門の利益率が向上するするからだと思われますが、今年は逆にダウンする見通しで、個人的には非常に残念です(あと2年位で営業利益率10%まで行くだろうと予想していました)。
↑売上に占める各費用の割合の推移
今までセールスコストを始め、一番大きな設備投資である配送施設(緑)を始め、テクノロジーやコンテンツ(赤)への支出割合を抑えてきてましたが、人件費の上昇の為か4Qは営業利益率が減ってしまうようです。
カンファレンスコールで4Qの最低賃金アップに関する質問が出てましたが、当然ガイダンスに盛り込んでいるとのことでした。
また、従業員の増員を抑えていることを強調して(2016年+38%、2017年+38%(ホールフーズ分を除く)、今年は今のところ+13%とのこと)、人件費の伸びをできるだけ抑えていることを強調していました。
配送費の上昇が噂されている件については、毎年このような噂が上がるのが常で、宅配業者との粘り強い交渉と配送効率アップで、吸収していくので大きな問題ではないと述べていました。
他の4Qの売上ガイダンスが低かった要因として、サブスクリプションの売上の計上方法が、今まで4Qに計上していた一部の分が、会計方法の変更で1Q〜3Qに振り分けられたことで、売上が約$300M押し下げられたのと、11月中旬から年末にかけて短期間に集中して注文が増える時期になり、予測が難しいとのことでした。
今、AWSと共にAmazonの利益を支えている広告事業については、まだ成長の余地が十分あるとのコメントが出ていました。
4.まとめ
今まで強烈な利益成長率を叩き出してきたAmazonも、さすがに他の成長株と同じレベルの成長率に戻るようです。そうなると、バリュエーションのレベルがどれくらいが適正なのか、しばらく投資家達の模索が続きそうですね。
北米でも成長率が落ちてきています。米国でプライム会員が広く広まって頭打ちの懸念があり、しかも米国の今後の景気動向を考慮すると、来年以降も北米事業の成長が鈍化するかもしれません。今後の課題としては、International地域の成長と売上が下がっているホールフーズのテコ入れですかね。
あとは、AWSと広告事業には今の成長率をキープしてもらって、あらたな利益の牽引役の登場を待ちたいです。
買い増しする場合は、ぐんぐん株価が上がった今までのイメージを一旦リセットして、4Q以降の成長率とバリュエーションを他の企業と比較しながら、慎重に検討した方が良さそうです。
中長期的に見たら、2桁台の利益成長は今後も続きそうですので、私は売らずにホールドし続けます。そして、もし割安な水準だと判断できる状況になったら、買い増しを始めます。
グラフを作成するに当たり、IR情報を見ながらポチポチ数字を打ち込みました。急いで作りましたので、数字に間違いがあったらごめんなさい。また、何の実績もない単なる投資が趣味の素人が書いたブログですので、投資判断は自己責任でお願いします。
ちなみに、私の投資スタイルは以下のブログにまとめてます。
株価に翻弄されない投資家になるために私が勉強してきたこと(後半)
前半では私が投資で必要だなと思う知識について、参考となる書籍を紹介しながら、その概要について説明してきました。
この後半部分は、肝となる企業分析を私がどのように行っているかの紹介と、金利と株価の関係を理解する上で避けては通れない、企業価値を算定する際に使用されるDCF法を通して、金利の上昇が株価に与える影響を説明したいと思います。
6.避けては通れない企業分析
株式投資に関するオフ会に参加すると、当然の流れとして銘柄談義になり、将来有望だなと思っている銘柄をお互い披露し合うわけですが、特に日本株の集まりに参加すると感じますが、皆さん非常によく調べています。
情報が取りやすい日本株と違って、アメリカ株はなかなかハードルが高いと思います。幸い私は10年前の転職活動中に英語を一生懸命勉強したために(当時は自分に付加価値を付けるために必死でした)、ある程度英語が読めますが、すべての情報を英語で得るのはしんどいです。よって以下のような感じで調べています。
①日本語で書かれた情報をまず調べて、その企業の概要を掴む。
②財務情報が豊富な投資情報サイトGurufocusで財務内容を調べる。
③財務内容から疑問に思うところを、企業のIR情報から調べる。
①については当然ながら、まずアメリカ部さんのサイトをチェックします。ほんと凄いサイトですよね。無料でここまでして頂いて、頭が上がりません。
アメリカ部 | 米国株投資情報を中心に資産運用やビジネスのアンテナを広げるブログ
その他、ネットで検索すれば、日本語でも十分その企業に関する情報が得られると思います。私も含めてブログで企業分析をされている方も多くいらっしゃるし、その企業のサービス内容だけなら、意外に様々な日本語のサイトで紹介されていたりします。
②については、Morning star よりもGurufocusの方が便利だと思います。そして、年間500ドル位しますが、有料会員になると過去の業績の数字がエクスポートできたり、自分の好きな財務項目で企業比較ができたりします。
Value Investing | Market Insight of Investment Gurus
↑この前VISAを買った時に、VとMAどちらを買うか悩んだのですが、Gurufocusの有料会員になると、こんな感じでデータを並べて比較ができます(これはブログ用にデータをエクスポートしてNumbersで加工したものです)。
MAの方がPERが高くて将来有望そうですが、中長期の保有を基本としている私にとっては、VはMAに比べて時価総額が1.5倍に対して、FCFが2倍あることに注目して、自社株買い余力の多いVを選びました。不景気になった時に、こちらの方が下落幅が少ないかも?と期待しています。
このように簡単に比較できるのが便利なので高い年会費を払いましたが、相場が低迷して銘柄を調べる頻度が少なくなったら、Yahoo financeを見て、自分で数字をポチポチ打ち込んでもいいかなと思っています(笑)。
③については、これらの数字をライバル企業と比較することで、なぜMAのFCFマージンはVよりも低いのに、PERが高いのか?から疑問が始まって、MAはVとの差を縮めるために何に力を入れているのか?とか、疑問に思ったことをその企業のIRのページの資料を見て調べています。
(調べましたけど、MAの戦略がよく分かりませんでした。Fintech企業とか買収しているようですが、Vも投資CFではMAの4倍使ってますので、Vも負けてないと思いますがね、と思ってVのCF計算書を見たら、多くが債券に投資されていました(笑))
ここまで調べるメリットは、オフ会で実力のある方とお話してもらいえるようになることでしょうか(笑)。やはり実力のある方とお話させて頂くと、とても勉強になりますね。
でも、①まででも十分成果が挙げられると思いますよ。前半の部で書いた基本が一番大事だと思います。
7.DCFとPERの関係を理解すれば、金利上昇の影響をイメージできる
私は2000年に株式投資を始めましたが、本格的な金利の上昇局面に遭遇するのは初めてかもしれません。金利の影響が株価にどのように影響するのか、昨年からコーポレートファイナンスで企業価値に関する本を読んできました。なかなか1冊読んだだけでは理解するのは難しく何冊か読みましたが、この分野を勉強すると以下のことを意識するようになります。
- 企業はキャッシュを生んで、株主に利益を与えてくれる存在である。
ついつい株価だけに注目してしましますが、企業は営利活動を行うことで、出資者たる株主に利益を与えてくれる存在です。
でも、牛乳を産出する乳牛と同じで個体差があります。スーパーカウと呼ばれる沢山の牛乳を出す牛をできるだけ安く買えればいいですが、それが難しかったら牛を見る目を肥やして、見た目は貧相だけど、実は乳をたくさん出しますとか、ちょっと病気がちだけど治ればOKみないな、将来できるだけ沢山の利益を与えてくれる会社をなるべく安く買うイメージが持てるようになります。
- 今から投資するなら、債券と株式のどちらに投資するか?
今、米国2年国債を買って2年後の償還まで保有すれば、無リスクで年2.75%のリターンがあります。ハイリスクの株に投資するなら、どれだけのリスクプレミアムを求めるか?
やはり年率10%以上のリターンは欲しいですよね。
- 高PER銘柄ほど金利上昇の影響を受けやすい
PERはその銘柄の将来的な期待度の表れですが、DCF(ディスカウント・キャッシュフロー)法の面から考えると、金利が少し上っただけで株価は大きな影響を受けます。
DCF法については賛否両論ありますが、MBAで習う基本中の基本らしいので、理論の概要は知っておい損はないと思います。
例えば、年間120万円の家賃収入が見込めるマンションが1000万で売っており、10年後の売却価格が300万くらいになるという物件の投資判断を行う時に、将来のリスクをどの様に見込めばよいのか?
という時に、1年経過するごとにリスクを見込んで家賃収入を10%ずつ割り引いていって計算します。10年目に手に入る売却価格300万円も10%の10年分をディスカウントします。そうすると以下の通りになり、853万円以下で買うならOKという感じになります。
1年目:120÷1.1 =109万円
2年目:120÷(1.1の2乗)=99万円
3年目:120÷(1.1の3乗)=90万円
・
・
10年目:420÷(1.1の10乗)=162万円 合計853万円
この割引率10%は投資家が期待するリターンと同じで、853万円に対して毎年10%のリターンを複利で得られるのと、同じ意味になります。
そして、投資家が株式投資において期待するリターンは以下のとおりになります。
無リスク金利+β×株式市場プレミアム
よって、債券の金利が上がるということは、無リスク金利が上がることであり、よって、投資家が求める期待リターンが上がる、つまりDCF法においては割引率が上がるということになります。
企業価値におけるDCF法の式は以下のとおりになります。
PV=C/(r-g)
C:その企業が生み出すキャッシュフロー
r:割引率
g:その企業の成長率
そしてCを純利益(E)、株式時価総額がその企業の現時点での企業価値(PV)を表しているとすると、PERとDCF法との関係は以下のとおりになります。
PV=E×PER =E/(r-g)
両方をEで割ると PER=1/(r-g)
これをひっくり返すと1/PER=(r-g)になります。
この前提をもとに、純利益が同じでPERが100倍と20倍の企業では、金利が0.2%上がった時に、DCF法で計算すると企業価値はどれだけ下がるかを計算してみます。
仮に割引率をr=8からr=8.2に変えて計算するとその差は以下のとおりになります。
PER100倍の企業だと、企業価値が−16.7%も下がります。
PER20倍の企業だと、企業価値は−4%しか下がりません。
↑前半の部で紹介した10月に入ってからのamazonとAppleの株価の下落幅の違いですが、先の計算と似たような感じになっていませんか?
DCF法で厳密な株価の計算はできませんが、なんとなく金利の影響がイメージできるかと思います。
金利が上昇した時に、DCF法の計算式であるPV=C/(r-g) の分母のr-gが増えないためには、成長率gがさらに上昇しないといけません。
本当は避けたいところですが、あえて金利上昇局面で高PER銘柄を買う時は、さらに成長率が上がる可能性がある銘柄を選ぶべきです。
その点を考えると、Amazonよりも現在のEPS成長率はかなり低いですが、この後伸びが期待できるMicrosoftの方が、まだ安全かもしれません。
ただ、Amazonも莫大な資金を設備投資と研究開発費に投じてますので、今後何かサプライズが出てくる可能性も十分あります。よって、Amazonの将来には期待をして、引き続き保有しています(ただし9月に1/3程売って一部利確しています)。
8.まとめ
長々と書いてきましたが、投資はほんとうに奥が深いです。
株価は人々の期待と理論の狭間で揺れ動いています。
その中で、投資判断をシンプルにするために、私は以下の点を考慮しています。
- キャッシュの割合
将来有望な銘柄をできるだけ安く買うのを基本としてますので、常にキャッシュは用意しておくようにしています。そして、相場が荒れてきたらキャッシュの割合を増やすような形でリスクを管理しています。
- ポートフォリオのバランス
ついついボラリティが高い小型成長株に魅力を感じてしまいますが、今はその割合が高くならないように気を付けて、石油株や安定のプラットフォーム企業であるVISA、CMEグループ(デリバティブ市場運営企業)、Copart(事故車オークション企業)も買って、リクスを管理しています。
- 日々節約して、投資資金を貯める
小型株は売り買いしますが、基本買い持ちのスタンスなので、投資資金を増やす事が重要だと思っています。
- 常に有望な銘柄を探し続け、他社と比較検討して銘柄選択の目を養う
これが一番大事だと思いますね。投資で成功している人は、間違いなくこの選択眼が優れていると思います。
というわけで、巷でよく聞くシンプルな方法が株価に翻弄されない投資法ではないでしょうか(笑)
おわり
↑企業価値に興味を持たれたら、森生さんの本がおすすめです。私は3冊とも読みました。
↑Gurufocusの創設者が書いた本です。「ピーター・リンチの株で勝つ」と同系列の投資本になります。
株価に翻弄されない投資家になるために私が勉強してきたこと(前半)
1.はじめに
株価のボラリティが激しくなってきました。上手く高値で売り抜けた人はいいですが、私も含めて逃げ遅れた人は、含み益が減ってくると心理的プレッシャーを強く感じますね。
米長期金利が3.2%を超えてきた時点で、今まで順調に伸びていたIT銘柄が崩れました。
もうIT銘柄はダメなのか、また復活するのか悩むところです。どう判断したら良いのでしょうか?
私は自慢するほどの実績を上げてきたわけではありませんが、今まで凄腕投資家さんが主催する投資勉強会に参加して学んできたなかで知った、この先の投資判断に参考となる本とその内容について紹介したいと思います。
2.株価が上昇する理由を理解する
株価の上昇要因は、画期的な技術やサービスを提供して売り上げが伸びたり、経営努力で業績が予想よりも良かったなど、いろいろあると思いますが、元を辿ると売る人よりも買う人の方が多かったら上がるし、売る人の方が多かったら下がります。
そして、買う人は今この株を買えば儲かると期待するから買うのであって、株価を上昇させる要因を一言でいうと「人々の期待」だという、言われてみれば当たり前のことになります。
まず、人々の心理要因が株価を動かすことを押さえた上で、次に投資理論を押さえておく必要があります。
↑田淵さんの本は、投資に関する抽象的な概念を分かりやすく説明してくれるのでとても役に立ちます。
3.押さえておきたい投資理論
(1)ランダムウォーク理論
まず、最初に初歩的な投資理論のランダムウォーク理論は押さえておきたいです。統計的には株価の動きはランダムで、この先上に動くか下に動くかは五分五分です。
多くの投資家の将来に対する期待が高まって、しばらく上昇トレンドを形成したり、多くの投資家が将来に悲観的になって、下降トレンドが続いたりしますが、長期的な統計を取ると株価の動きはランダムなようです。
よって、株式投資でコンスタントに利益を上げようと思ったら、このランダムウォーク理論に打ち勝つルールを自分の中に築く必要があると思います。
テクニカル分析の知識がある人は別として、投資の勉強をせずに株価の動きだけで主観的に売り買いの判断をしていると、買ったり負けたりで資金は思つたほど増えて行かず、最後には「インデックスファンドの積立が最強!」という結論になってしまうと思います。
(2)プロスペクト理論
とある有名な個人投資家さんが行動経済学は勉強した方がよいと言っていました。その行動経済学の基本事項として、プロスペクト理論があります。
この理論は、含み益と含み損が同じだけ減った時に、心理的負担は含み益が減った時の方が大きいというものです。よく、素人は少し儲けが出たらすぐ売って、含み損は放置して赤字幅を広げてしまうと言われますが、まさしくプロスペクト理論が証明していることです。
株で資金を大きく増やそうと思ったら、成長株を長期に保有するのが王道だと思います。そうすると、何度も含み益が減少する目にあうと思いますが、その時にプロスペクト理論を思い出して、ぐっと堪える必要があります。
↑こちらも田淵さんの本。田淵さんの本はあまり知られていませんが、地味におすすめです。
4.投資の王道「ピーターリンチの株で勝つ」
この本では、地味ながらも特定の分野で独占的な地位を占め、低成長ながらも安定的に成長している銘柄への投資を推奨しています。これが、投資の王道だと思います。
急成長している企業は、売り上げ成長率が凄いですがその分PERも高く、今回のように相場が急落した時に、バリュエーションの調整に巻き込まれて株価が大きく下がってしまいます。10月に入ってからのPER150倍のAmazonとPER20倍のAppleとで、下落幅を比較すると、その違いが理解できると思います。
↑ローソクチャートがAmazonで赤線がAppleになります。真ん中の10月までは両者おなじ動きをしていましたが、下落相場になったら、下落幅が大きく違いますね。
将来の期待感が高い銘柄は人気が出てPERが高くなり、その分株価の変動幅(ボラリティ)が高くなりますので、その分リスクが上がります。
(コーポレートファイナンスの分野では、ボラリティの変動幅のことをリスク、将来が見通せない事を不確実性というようです)
よって、リスクを抑えるためには、将来への期待感がそれなりにあって、かつPERがそこそこの株を、相場が下がった時に買って、放置しておくのが投資の王道だと思います。
それをわきまえた上で、私は小型グロース株に手を出しています。
↑凄腕投資家さんの多くの人が推奨する有名な本ですね。
5.バフェット流にいくら儲かるか試算する
Amazonみたいにバリュエーションが高い株を買う時に、気をつけないといけないことは、この水準で買って将来幾ら儲かるか?のあたりを付けてから買わないと、リスクの割にリターンが少なくて、割に合わない投資をしてしまいます。
当たるか当たらないかは別として、ひと手間かけて試算することは大事だと思います。
その時に参考となったのが「億万長者を目指すバフェットの銘柄選択術」に載っている、過去のEPS成長率を参考として、今後5年間のEPS成長率を想定して、想定どおりEPSが成長したら株価がいくらになるかを計算する方法です(この本に載っているやり方では、この方法が一番簡単です。当然、バフェットはこんな簡単なやり方で計算はしてないと思いますがね...)。
自分なりに今後5年間のEPS成長率をいくつか設定して、同様に5年後のPERもいくつか設定して掛け合わせれば5年後の株価が簡単に試算できます。
↑最近計算したCopart(事故車のオークションをやっている会社)の5年後の株価予想。今後5年間のEPS成長率が18%の場合(上)と15%の場合(下)で、5年後のPERが30倍、25倍、20倍の時に株価がいくらになるか試算したものです。
年率換算したリターンの計算は、以下の式をエクセルに入れれば得られます。
=(5年後の予想株価/現在の株価)^(1/5)-1
そして、自分の納得できるリターンが得られることを確認してから、実際に株を買います。
このときのポイントは、この先金利の上昇とその後の景気後退が予想されますので、PERが下がることを想定して、下がった場合のPERでも計算することがポイントだと思います。
このCopartの場合、自分の中ではPERが20倍まで下がるのが許容範囲だと思います。
そして決算ごとに試算どおりのEPS成長率をキープしているか確認して、成長率が落ちたら売却を検討するなど、この試算が一つの判断基準になります。
また、今後入ってくる色々な情報をもとにこの試算を自分なりに修正して、常にリターンが幾らになるのかイメージしておくことが大事だと思います。
↑この本では、リターンを利回りとして捉えることが学べます。この利回りの考え方が身につけば、金利が上昇したらどうなるか判断できるようになるでしょう。
(後半につづく)
BlackBerry Q2FY2019の決算について
1.はじめに
私がターンアラウンド銘柄として、注目しているBalckBerry(以下BB社)のQ2FY2019の決算発表が、9月28日(金)寄付き前にありました。その後のザラ場で株価は+12%ほど上がりましたので、内容的には良かったのですが、カンファレンスコールの内容などをチェックした感じでは、今まで下降トレンドであった売上はボトムを付けたけど、これから反転してバンバン業績が伸びるという感じではなさそうです。じわじわの伸びてくるという感じですので、同じSaaS企業でも、売上が30%以上伸びていて株価が新高値を更新しているSaaS企業のイメージはまだありません。ただ、業界でトップレベルの実力を持ちながら株価はまだ$11.38で、PSRも6.69と10倍〜20倍を付けている他のSaaS企業に比べたら割安感がありますので、長期的には面白い銘柄だと思っています。
2.決算内容
(1)売上、EPS、ガイダンス
売上 $214M(+6.29M)Non-GAAP EPS $0.04(+0.03)
ガイダンス(FY2019年通年)→Q1と変わらず
ソフトウェアとサービスのbillings : 2桁成長
ソフトウェアとサービス売上 :+8~10%(YoY)
Non-GAAP EPS :黒字
フリーCF(特別項目を除く) :黒字
売上とEPSは予想を大きく上回りましたが、ガイダンスの上方修正がなかったので、決算発表後のプレマーケットでの株価の動きは鈍かったですね。
(2)業績の推移
↑売上(GAAP)の内訳ごとの推移です。全体ではQ1に比べて$3Mほど下がりましたが、緑のレガシービジネスであるフマホ事業の売上が下がったためで、メインのソフトウェア関連(青)の売上は$4Mほど伸びてました。前回のQ1決算では、ソフトウェアの売上が下がったので株価が売られましたが、会社側が説明したとおりソフトウェアの永久ライセンスの計上方法の変更が原因で、実際のソフトウェアの売上が低下したわけではないことが、証明された形だと思います。
↑ソフトウェアの売上の内訳
前回、会計方法の変更で急落したEnterprise software関連(青)の売上は、今回しっかり伸びてました。
期待されているコネクテッドカー関連を含むBlackBerry Technology Solutions(以下BTS)の売上成長率はYoYで+29%で、Q1の+31%よりやや鈍化していました。ガイダンスによると、後期は20%前半まで成長率が鈍化するとのことでした。一番成長しているBTSの売上が鈍化するようだと、V字回復とは行かなさそうですね。
オレンジのLicenceIPは特許の使用料等で、BB社は44000以上の特許を持っていて、そのパテント料の収入の割合も大きいです。よって、よく特許侵害で他社を訴えています。最近では半導体メーカーのクラルコムを訴えて、和解代金としてQ1FY2018に$815Mほどの臨時収入を得ています。
↑Non-GAAPの売上(青)、粗利益(緑)、EBITDA(黄)、純利益(赤)の四半期ごとの推移になります。粗利益以下がQ1で底打ち打ちした感じがしますが、どうでしょうかね?
↑粗利益率の四半期ごとの推移です。1ポイント上がって過去最高だそうです。
↑最大のコストである販管費(青)と研究開発費(緑)の四半期ごとの推移。売上の低下に合わせて、絞って来ています。
↑売上に占める販管費(青)と研究開発費の割合における四半期ごとの推移です。販管費の割合が下がってくれば利益が伸びてくると思いますが、主なマーケットとしているIoTなどのセキュリティ分野は競争が激しいですので、なかなか下げるのは難しいかもしれませんね。また、同様の理由で研究開発費が伸びてくる可能性もあります。
(3)その他
カンファレンスコールでFacebookとの訴訟合戦に関してアナリストから質問が出てましたが、ノーコメントでした。私の主観的な意見ですが、BBは知財ビジネスも重要なセグメントで、過去にも特許侵害で多くの訴訟を起こしてきており、大きく負ける試合はしないと思います。
9月12日に発表したIoT向けのセキュリティプラットフォーム「Spark」については、質問が出なかったですね。カンファレンスコールの冒頭で自らアピールしてましたので、自信があるのだと思います。これが成功しなかったら、株価のテンバガーは厳しいかもしれないですね(笑)
Morgan Stanleyが引け後にBBの2020年の売上予想は楽観的過ぎで、price targetを$10としていました。週明けの株価がどうなるかちょっと心配です。
https://seekingalpha.com/news/3393853-morgan-stanley-rains-blackberry-parade-cautious-note
BBは$2.4Bのキャッシュを持っているおり、その使い道について質問が出ていました。自社株買いなどの株主還元は行わず、買収に使うとのことでしたが、今は米株式市場が好調で買収価格が割に合わないとのことでしたので、当面は企業買収はなさそうです。
3.まとめ
良い決算で株価が12%も上がったので、ホッとしました。ただ、内容をよく見てみるとV字回復ではなく、U字回復になりそうな感じを受けました。Enterprise softwareは政府機関や銀行で採用されているとのことでしたので、セキュリティ技術の評判は良いのは間違いないと思います。将来期待のBTSセグメントは、最近5Gの商業使用を開始する話が出てきて、広く普及するのに数年はかかるでしょうし、多くの企業がこの分野を狙って来てますので、引き続きそれなりの販管費がかかると思います。よって、BBが利益をどんどん伸ばしてくるステージに至るまで、まだ時間がかかりそうですね。今、ぐんぐん株価が伸びているVEEVなどのSaaS企業のイメージとは違いますので、慌てずに数年間保有する気持ちで行きたいです。
4.番外編
↑2018年9月30日時点のデータです。
こうやって比較してみると、今いちばん気になるのは、やはりNTNXですかね。直近1年間の売上成長率が1桁台なのは、業態変更でレガシービジネスのハード部門の売上を意図的に減らしたからです。SaaSで提供するソフトウェアの売上成長率は40%以上あるのに、このPSRの低さは、いくら同じ分野にマイクロソフトが参入してからと言っても、おかしいと思いますね。米国防総省に採用されるくらい信頼性はありますし、トップのVMWを追う立場であるが故、顧客本位に徹して高成長を続けており、そう簡単に売上成長率が鈍化するとは思えません。
あと、私はどうしても今の株価でSQを買う気にはなれません。グロスマージンが4割切っているのに、7割前後を誇るソフトウェア企業を上回るPSRの高さで、自分が買ったら翌日株価が下がりそうで、私は怖くて買えません(笑)。
ターンアラウンド中のBlackBerry Q2の決算前に注目しておくべきポイント
(1)はじめに
元祖スマホ製造会社から、得意のセキュリティ分野を活かしたソフトウェアに特化し、SaaS企業になりつつあるBlackBerry(以下BB)の業務転換が終盤を迎えつつあります。
そのQ2決算が9月28日寄付き前に発表されますので、決算前に注目すべきポイントをまとめておきます。
↑月足チャート
6年に渡る長期低迷から株価は上昇トレンドになるのでしょうか?
(2)これまでの流れ
↑このような感じでいままで順調に売上が下がってきていました。それはレガシービジネスのスマホ関連(緑の部分)の売上を減らしてきたからです。そしてSoftware and Services(青の部分)に特化して、順調に売上を伸ばしていました。(ちなみに、BBのSoftware and Servicesの技術力は評価が高いです)
↑Softwareの販売比率が高まるのに伴い、粗利益率が凄く上昇しています。
↑しかし前回のQ1FY19決算で、その期待されていたSoftware and Servicesの中で主力のEnterprise software の売上(青の棒グラフ)が激減しました。これはFY19年になってから会計方法をASC605から606に変更した関係で、Softwareの永久ライセンス契約に関する売上の計上方法が変わったためとの説明でした。
↑週足チャートです。BBの復活の兆しを受けて株価が上がってきた矢先に、Q1決算で冷水を浴びせられ(青の矢印部分)、再び株価は$10前後で低迷しています。
(3)Q2決算での注目点
①コンセンサス予想
https://seekingalpha.com/article/4206672-blackberry-now-never より引用
アナリスト予想(黄色部分)ではQ2が売上のボトムとなっています。
ちなみにyahoo financeのアナリスト予想は以下のとおりです。
売上予想の平均 $209.38M($178.7M〜$219M)
EPS予想の平均 $0.01($-0.02〜$0.03)
↑yahoo financeより引用
4連続で予想を上回るEPSを出してきているので、今回の決算も期待したいところです。
②Software の売上
↑ソフトウェアのセグメントごとの売上の推移(再掲)
まず、前回の決算発表で株価下落の原因となったEnterprise softwareはQ1に比べてどれだけ伸びているか注目です。
またその他のセグメントがきちんと伸びてきていることが重要になってきます。特に黒のセグメントは話題のコネクテッドカーのセキュリティ分野が含まれていますので、ここにも注目です。
③新製品の評判
9月12日にIoTデバイス向けセキュリティプラットフォーム「Spark」をリリースしました。
ブラックベリー、IoTデバイス向けセキュリティプラットフォーム「Spark」をリリース【mobilesyrup】
ブラックベリーはあらゆるものがネット接続された仕事場の管理やIoTデバイスの安全性確保のための法人向け製品「Spark」をリリース。同社が「EoT(Enterprise of things)プラットフォーム」と呼ぶSparkは、自動運転車から産業機器、スマートスピーカーまで様々なIoT製品向けにミリタリーグレードのセキュリティを提供するという。ブラックベリーCEO「自動運転車はハッキングされれば最悪の武器になり得る」 ほか(WirelessWire News) - goo ニュースより引用
↑それを先取りする形で前日に株価が大きく伸びていました(矢印部分)
かなり期待できそうな新製品ですね。その引き合い状況についてカンファレンスコールで質問が出ると思われますので、その回答内容に注目です。
④FBとの訴訟争いについて
今年3月にBBはFBを特許侵害で訴えました。そしてその3ヶ月後にFBから逆に特許侵害で訴えられて、訴訟合戦になっています。
BBは今までクアルコムやノキアを訴えて来ています。セキュリティが評判のスマホを、iPhoneが出る前から作っていた企業だけあって、知財はいろいろ持っており、何かと特許侵害で訴えを起こしている企業のようです。
クアルコム、BlackBerryに8億ドルのロイヤリティ返金へ - CNET Japan
BlackBerryがノキアを提訴--11件の特許侵害を主張 - CNET Japan
FBに負けることはないと思いますが、万が一負けるとなると株価が大きく下がることは避けられないと思います。ただ、キャッシュリッチな会社なので倒産することはないでしょう。カンファレンスコールで質問が出ると思いますので、その回答に注目したいと思います。
↑BB社の現金及び現金同等物(棒グラフ)の推移。$2.25Bほど持っています。
(4)まとめ
BBはGartnerでもセキュリティ分野で4つの部門で高く評価されており、技術力は問題ありません。ライバルが多いですが、BBの売上の準主力であるIoTやコネクテッドカー分野はこれから伸びる分野ですので、この先の売上成長率に期待が持てます。
SaaS企業として見た場合、PSRが6.6倍(2018年9月24日時点)で10倍以上が当たり前(私がウォッチしているSaaS企業だと中央値は14倍位)のSaaS企業にしては、かなり割安ですので、株価の上振れ余力は十分あります。
9月28日のQ2決算発表でターンアラウンドが確認できれば、株価的には非常に面白い注目すべき銘柄だと思います。
今回も素人である私個人が調べた内容になりますので、間違いがないように気をつけてはいますが、内容は絶対ではありません。投資は自己責任でお願いします。
※BB社はカナダ企業ですが、業績の数字はすべて米ドルで表記しています。
↑アメリカ部さんのBBに関するHPです。
↑私はQ1決算後に書いたブログになります。
↑私はこの本で英語の決算書を読むスキルを勉強しました。オススメです。
金融セクターで面白そうな企業 デリバティブ市場最大手のCMEグループ
(1)はじめに
米長期金利が上がってきましたので、ここでちょっと金融セクターに目を向けて見たいと思います。先週は銀行株が大きく上がりましたが、今後想定されるいろいろな展開に対応できるのは、デリバティブ市場の最大手CMEグループ(以下CME)ではないかと思い調べてみました。
↑CMEがどんな企業か分からない方はアメリカ部さんのサイトを参照して下さい。
(2)最近の状況(Q2'18の決算資料より)
Q2 2018の決算内容
売上 $1,060M(YoY+15%)
営業利益 $667M(YoY+10%)
Adjusted EPS $1.74(YoY+41%)
※SeekingALPHAだと売上、EPSともにコンセンサス予想を上回っていましたが、決算後は売られました。調べて見ましたが、理由は分かりません。取扱高がQoQで下がったからかもしれません。
↑今年はオプションや先物取引の取引数が大きく伸びています。
↑最新の売上比率。
右上から
・原油や天然ガスなどのエネルギーの先物やオプション(18%)
・大豆などの農作物の先物やオプション(13%)
・金属の先物やオプション(6%)
・マーケットデータ等の情報の売上(11%)
・その他(5%)
・FX(5%)
・ユーロドル金利先物など金利商品の先物やオプション(27%)
↑1取引ごとの平均レートは下の方の金属や農産物、エネルギーが高いですので、これらの分野でボラリティ−が高まって取引が盛況になると、売上に大きく貢献します。
↑ADVはaverage daily volumeの略で一日あたりの取扱高の前年比の成長率ですが、真ん中のエネルギー以外はすべての分野で2桁成長しています。右はオプションの成長率です。電子取引での取扱高の内、オプションが67%を占めているようです。
↑見にくくて申し訳ありませんが、電子取引は右からU.S.時間、アジア時間、ヨーロッパ時間でほぼ24時間開いているのですが、一番取引高が多いのは断トツでU.S.時間帯になります。各時間帯で今年は大きく伸びてますが、特にヨーロッパ(+34%)とアジア(+45%)時間帯で大きく伸びています。
カンファレンスコールによると、顧客別の前年比成長率は以下のとおりです。
asset managers +42%
commercials +35%
banks +23%
retail +23%
ボルガールールの影響からか、銀行 の取引が弱いです。
↑左上からS&P500、ユーロドル、FX、債券のボラリティ−の推移。今年に入ってから動きが出てきてますね。
↑左上のエネルギー分野で赤線の天然ガスと、下の農産物の大豆とコーンのボラリティが高いです。これは米中貿易戦争の影響ですね。
(金融先物取引業協会 会報(平成30年4月 No.116)より引用)
↑金融先物取引業協会が出している会報(平成30年4月号)に世界の先物・オプション出来高の推移が出ていました。これを見ると15年からほぼ出来高が横ばいです。
それに比べると、今年はCMEのADV(1日あたりの平均出来高)が急増していますので、2月のVIX指数の急上昇絡みの株式市場暴落から始まり、ドランプさんが仕掛ける中国たたき、そして米景気好調による米金利上昇と、なにかとデリバティブが活況となる局面が多いということですね。
今後、もし米長期金利の上昇が続けば、債券、為替、米株が更に動き、米中貿易戦争が小康状態になれば、今まで下がっていた銅などの金属がまた上がりだすかもしれません。CMEの取引ボリュームも引き続き増えそうです。
http://www.ffaj.or.jp/userfiles/file/pdf/kaihou/h30/ffaj-kaihou116-i.pdf
↑今回引用した金融先物取引業協会の会報です。とても参考になりました。これを見て参考になったことは、デリバティブの市場は世界に沢山あるなということです。その中でCMEグループが出来高で世界No1です(グループ全体を総合した場合)。
市場というプラットフォームビジネスとしては規模が大きいことが大きなメリットですので、今後も新しい金融商品の開発などで有利に展開することができると思います。
p13からCMEグループについての解説が詳しく載っていますので、興味のある方はぜひ見て下さい。
↑今回引用したCMEの2Q18決算のプレゼン資料です。
↑CMEのIRのページ
(3)業績の推移
CMEの業績は一言でいうと文句がないです。
↑年ごとの売上高(青)、営業利益(緑)、純利益(黄色)の推移です。市場を運営するというプラットフォーム企業の特徴を体現しており、めちゃくちゃ各利益率が高いですね。2017年は税制改革の恩恵で12月に繰り延べていた税金を戻したために純利益が大きく伸びて、売上高を超えているという凄まじい状況になってます。その流れでTTMでも純利益が売上高を超えています。
↑2014年3月期からの四半期ごとの売上高の推移です。今年に入ってから2期連続で大きく伸びてますね。しかし、昨年までの推移を見ると、基本的に大きく売上が伸びる分野ではないということが言えると思います。よって、成長するには他社を買収するか、地道に新たな金融商品を発売してコツコツと売上を伸ばすとか、そんな感じになると思います。よって、一般的にこの銘柄は配当銘柄と認識されています。
↑配当額は、ほぼ右肩上がりで推移しています。yahoo financeとかで見ると配当利回りが低いですが、この企業の特徴は年末に特別配当を出すことです(緑部分)。これが大きいです。2017年は一株あたり$3.5も出してました。今年も同水準で出れば、最低でも約3.5%位の配当利回りになる計算です(今の調子が続けば、今年はもっと増額になりそうですね)。
↑営業CF(青)とフリーCF(緑)。単位は$Millionsになります。
営業CFのほとんどがフリーCFですので、配当支払い能力は十分あります。
今年3月に通貨や米国債を取引する市場を運営する英NEX社を買収することを発表しました。NEXの株主からの承認は得られ、現在はU.S.、EU、英国当局の承認待ちの状態のようです。
(4)まとめ
今まで売上成長率が40%とかある小型グロース株を調べてきましたが、久々に大型株を調べてみました。過去3年間の売上成長率が5%、EBITDA成長率が9.9%と1桁成長の企業でFoward PERが約25倍(2018年9月22日現在)とそれなりの株価が付いています。
ただ、プラットフォーム企業としてみると、営業利益率が64%、フリーCFマージンが59%で利益率は文句がありませんし、デリバティブ市場でNo.1と優位な地位を築いています。リーマンショックなどの破壊的な金融危機が起きない限り、今後も安定した成長が見込めると思います。
私の師匠もオプション取引も取り入れてリスク管理をしていますし、グロービスの森生明氏が書いた「バリュエーションの教科書」でも、経営者に対してオプションを用いたリスク管理について説いています。
CMEグループのHPを見るとリスク管理としてデリバティブの活用も謳っており、今後その面での需要の増加も期待できそうです。
何よりも今後、もし米長期金利の上昇が続けば、米国債やドルが更に動きます。米中貿易戦争の行方も、最近は影響が少ないのでは?という味方が出てきて、ダウが新高値を更新しました。ダウだけでなくコモディティ価格も盛り返してきてますので、CMEは短期的にも期待できるのではと思っています(実際に8月の取扱高はYoYで+18%と良かったです)。
↑銅価格の推移(NY市場 日足チャート)
↑CMEの日足チャート
一つ上のレンジ抜けて来ています。
でも、ここまで書いてきてなんですが、今年の出来事を思い浮かべながらチャートを眺めてみると、もし長期金利が上がらずに相場が平和になったら$160位まで落ちてきそうな気がしてきました(笑)最近の値動きを見てると、銀行株に比べて動きが弱いですので、みんなCMEに対して割高感を感じているように思います。
↑CMEの週足チャート
↑日経新聞を読んでると、ディスカウントキャッシュフロー(DCF)の観点から、金利が上昇すると株価の評価が割高になって売られるとの解説が目立つようになってきました。DCFは企業価値を測る手法の一つですが、勉強したい方は森生さんの本がオススメです。
この10年間の自分の投資に対する取り組み方の変化について
(1)はじめに
9月15日でリーマンショックから10年経つようです。10年前は33歳で転職活動をしており、一旦仕事を辞めて1日中、英語を勉強しながら海外と繋がりのある企業を目指して転職活動をしていました。でも、リーマンショックのおかげで最終的には地方のドメスティックな会社に就職することになりました。
せっかく勉強した英語はまったく使うことはなく、地方のヌルい雰囲気の中楽しく仕事をしてきましたが、将来への不安が常に心の底にあります。
なので、ただでさえ安月給なのにこの先、更に収入が減らされるというリスクを補うために、今は米株投資に懸命に取り組んでる次第です。
(2)この10年での変化
株好きだった祖父の勧めで、社会人になった24歳から株はやってましたが、自分で決算資料とか読んで企業分析とかすることなく、雑誌が勧める銘柄なんかを思いつきで買って、損を出しながらもトータルでお小遣い程度の儲けを得ていた様な状態でした。
リーマンショック前には当時持て囃されていた炭素繊維関連で東レの株をそれなりに持ってました。それがリーマンショックであれよあれよと言う間に株価が下がって、一番の大底で投げるという典型的な失態をやらかして、約100万円の損失を出してしまいました。
その後は株をやる気が起きず、しばらく投資から離れてましたが、日本の将来に不安は感じていましたので、ドル円が80円台の時に、ちょこちょこ米国株口座でドルを買い始めていました。
ある程度ドルが溜まったところで、海外ETFを買ったりしてましたが、積み立てるとか大した戦略を持たずに思いつきで売買していたので、大した成果は上がりませんでした。
(3)米国株有料サロンへの入会
転機が訪れたのは、広瀬さんの有料サロンの会員になってからです。ここでオニールの存在とか知って、パンローリングの3000円以上する本を買うようになり、本格的に投資方法を勉強するようになりました。広瀬さんの勧めでGEとかMCDを買って、年間成績で初めて100万円を超えたのもこの時です。
儲かると投資が面白くなって、ますます投資の勉強するようになりました。こまめに記録を付けるようにもなり、投資につぎ込む金額も大きくなってきました。
(4)サロンを卒業し、新たな出会い
1年ちょっと広瀬さんのサロンに在籍することで、米国株投資の取り組み方が分かってきたので、卒業して自分なりに企業を調べて買うようになりました。このブログを始めたのもそのころです。
次に素人投資家が集まる勉強会に参加するようになりました。初めて参加する時はとても緊張しましたね。その初めての勉強会の1週間前に、私がSQについて書いたブログを偶然にもその勉強会で講師を務める大物投資家さんが読んでくれて、いいね!を押してくれました。それがきっかけで勉強会後の懇親会でお話させて頂き、今でもお付き合いさせて頂くようになって、その後の投資方法が大きく変わることとなりました。
(5)参考とする投資情報が変わった
それまでは日本語で読めるサイトやブログを参考に米国株を買ってました。それがSeekingアルファやGurufocusなど英語のサイトを参考にするようになり、なりよりも企業が発表する1次情報をよくチェックするようになりました。
勉強会で大物素人投資家さん達の話を聞いていると、最終的には企業分析が大事だという考えにたどり着きました。今の投資スタイルは師匠が教えてくれてた銘柄を主に調べてブログにまとめています。
ブログにまとめていると、いろいろ疑問点が出てきますので、最終的にはカンファレンスコールを書き起こした10ページ以上の英語を読む羽目になり、学生の時では考えられないくらい英語を読んでいる毎日です。
企業分析をする習慣ができると小型グロース株にもある程度自信を持って投資することができ、広瀬さんのサロンにいた頃よりもリターンが大きくなってきました。
米国株に関する日本語のブログは、主観や憶測で書かれたものや、中には古い情報に基づいて書かれていたりして間違っている事に気付くことがあります(当然英語のサイトでも間違っていることはあると思います)。
やはり自分が投資判断をする上で重要な情報は、自分で調べて裏を取ることが大事だと思います。
↑Amazonのセグメントごとの売上成長率の推移です。本業のOnline store(青線)の売上成長率は10%台で大したことはありません。それ以外の利幅が高いAWSなどのセグメントの成長率が高いから、Amazonの純利益成長率が高くて、PER150倍という高倍率にもかかわらず株価は伸びている訳です。
↑各セグメントの売上比率
↑AmazonのEPS成長率(YoY) Jun18は2Q 2018のこと
また純利益の増加には減税の効果もあります。来年以降は減税効果が純利益成長率に影響を与えなくなくなります。
クラウドの時代はこれからだと思いますので、AWSもまだまだ伸びると思いますが、この各セグメントの高成長率をいつまで維持できるのか?という不安もあります。
成長株投資ではPERの高さを無視するのがセオリーですが、成長期待で買われている銘柄は成長率が落ちると売られます。
私はAmazonに期待しており、ポートフォリオの15%をAmazonが占めていますが、今から買い増してもそんなに追加のリターンは得られないと思っています。
こうやって、いろいろ調べたりグラフを作ったりして、その企業の将来や株価の行方をあれこれ考えるのは楽しいですね!
↑この本を用いて簡単な英文を作るトレーニンをしたおかげで、英語の回路が頭の中にでき、その後の英語の集中学習が続けることができました。そう思うと、今ある自分はすべてはここから始まったのかもしれませんね。
↑今この本読んでいます。なかなか骨太の硬派な内容ですが、今まで企業価値の本を読んできたなかで、よく理解できなかった部分がこの本を読んで繋がったりして、大変参考になってます。
成毛さんのAmazonに関する本でCCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の話が出てきますが、この本ではCCCに関することがメインで書かれています。
ニッチな分野に集中戦略を取る医療器具メーカーLeMaitre VASCULAR社(LMAT) (その2)
その1からの続きになります。
(3)業績の推移
↑2013年より右肩上がりの成長が続いています。
↑2013年から売上成長率(YoY)は二桁台をキープしていましたが、今年に入ってから急落しています(TTMの部分)。
↑四半期ごとの売上成長率(YoY)ですが、だんだん右肩下がりになっています。
↑売上成長率が下がるに連れて、営業利益成長率(YoY)も下がってきています。
↑営業利益成長率とは逆にEPS成長率はJun2018で凄く上がっていました。アメリカで血管外科とは関係ないプロダクトラインの一部を売却したことで純利益が嵩上げされたためです。
↑年ごとの希薄化後EPSの推移です。順調に伸びてますが、最近の伸びは減税と売却の影響によるところが大きいと思います。
↑年ごとのグロスマージンの推移です。2016年から70%台をキープしています。
↑年ごとの営業キャッシュフロー(青)とフリーキャッシュフロー(緑)の推移です。営業キャッシュフローは売上成長率低下に伴い、TTMでは伸び悩みが見られますが、フリーキャッシュフローは順調に伸びてます。
最近伸び悩みをみせているLMAT社ですが、今何が起きているのでしょうか?
(4)2期連続で失望決算をマーク中
2018年4月26日に発表された1Qでは売上☓、EPS☓、ガイダンス☓の3調子揃った決算(?)を出して株価が20%下がりました。
↑日足チャート
血管外科とは関係ない2〜3の手術用プロダクトラインの売却中で、それに関連するコストが発生したり売上が減ったりしたため、業績を予想するのが難しく、かつガイダンスが引き下げられたりする不安定な時期にいるためです。
また、2Qではドル高を理由に2018通年のガイダンスを1Qよりも、若干ながら更に引き下げたため失望を買ってました。
それでもチャートを見ると株価の下値が徐々に切り上がってきてますので、この銘柄の期待の大きさが伺えますね。
(5)まとめ
Johnson&JohnsonやMedtronicなどの大手との競合を避けて、血管外科におけるニッチな分野(主に年間売上$150M以下)の製品に絞る成長戦略を描くLMAT社。
そのニッチな分野でのドミナント戦略は販売単価の上昇というメリットを生んでいます。
そしてこの会社はキャッシュを順調に伸ばしており、チャンスが有ればいつでも他社を買収する用意があります。
LMAT社が狙う市場規模は$1Bと言われる中で、年間売上はまだ$100M程度。値上げと買収余力、セールスの増員、各国での承認取得状況を考えると、まだまだ十分な成長が期待できます。
気になるのは売上成長率が1桁台なのにPERが35倍もあること。これが10倍台なら間違いなくバフェットが買う銘柄だと思うのですが、残念ながらそこまで下がらないでしょうね。この先、もし相場が大きく調整し始めたら、タイミングを見計らって買いたい長期保有銘柄候補です。
↓今回用いたLMAT社のプレゼン資料です
http://lemaitre.gcs-web.com/static-files/b1465d56-42a2-4f04-b796-5abfdfe9de16
数字は間違いがないように気をつけてはいますが、絶対ではありません。本ブログは投資を単なる趣味とする素人が書いたもので、内容は保証できません。投資は自己責任でお願いします。
↓大型株から小型グロース投資へステップアップしたい人は、まずこの本を読むべし。ルールを決めて損切りをしっかりすれば、ボラリティが高い小型株でも大やけどをすることはありません。
↓こちらの方が成長株投資のエッセンスが詰まってて、しかも読みやすいかも。今までレンジ相場を形成していた成長株が好決算を出すとしばらく上昇トレンドになるので、この本に従って売買すれば上手くはず。
ニッチな分野に集中戦略を取る医療器具メーカーLeMaitre VASCULAR社(LMAT) (その1)
1.はじめに
またまた私の師匠より面白そうな銘柄を教えてもらいましたので、調べてみました。ニッチな分野に特化してドミナント戦略をとっていて、業績を見ると売上はもとより順調に営業マージンも伸ばしており、長期投資向けの銘柄です。
先に結論を言いますと、それだけに期待が高く2018年8月27日時点でPERが33倍あり、成長率の割には割高かなという気がしますので、直ちに買う必要はないかなと思っています。
ただ、不況に強い医療器具系銘柄になりますので、来年以降の米国株相場を考えるとWatch銘柄に登録しておいて、何かのきっかけで下がったらすかさず買いたい銘柄だと思います。特にここ2連続で決算をしくじっていますので、株価はやや軟調な推移です。
↑日足チャート
↑週足チャート
今回は長くなりますので、2回に分けて紹介したいと思います。
2.LeMaitre VASCULAR社とは
LeMaitre VASCULAR社(以下LMAT)は血管外科分野の製品に特化しつつある医療器具メーカーです。
↑現在、78%が血管外科関連の製品になります。そして、血管外科以外の製品は売却していって、血管外科関連の製造メーカーを買収する経営改革を行っています。
↑汚いメモで申し訳ありませんが、血管外科分野の製品で緑色のものはマーケットシェアで1〜2位の位置を占めています(世界市場なのかアメリカ市場だけなのかは不明です)。
↑これらの製品の売上が8割近くを占めているようです。左がDisposable(使い捨て)商品、右が血管に移植するパッチなどのBiologics(生物的)製品になります(こちらの方が利幅が高いと思われます)。
↑そして、利幅の高い生物的製品(青色部分)の比率を高める方針をとっています。
↑もう一つの特徴は、セールス要員を増やして直販体制を拡大していることです。
↑セールス要員の配置状況です。アメリカと西ヨーロッパが中心で、アジアでは日本と中国に配置しています。中国も代理店販売から直販体制に順次切り替えています。
↑商品の各国における当局の承認状況です。一番下にその割合が出ています。USで95%、日本では54%、中国では27%という状況です。日本と中国では順次承認手続きをとってますので、これから少しずつ拡大してくと思います。
↑ブラジルや南アフリカなど新興国での承認状況です。韓国で5つの製品が承認申請されていますね。世界各国で承認が取れてるのが凄いです。
↑アメリカ、カナダ、ブラジルでの売上が60%を占めています。ちなみに今一番伸びている地域はヨーロッパです。
以上をまとめるとLMAT社の魅力は以下の3点になり、これからも順調な成長が見込めると思います。
- ニッチ分野に特化した商品構成へシフトして、ドミナント戦略をとっている
- セールス要員を各国に順次増やしており、直販体制を築きつつある
- 取り扱う商品は世界各国で保健当局から承認が取れており、これからも承認商品が増えていく
(その2に続く)